講演情報
[III-P02-5-05]洞機能不全が急速に進行し、SCN5A遺伝子変異を認め、Brugada症候群の合併を疑われた6歳男児
○三井 さやか1, 福見 大地1, 吉田 修一朗2, 大野 聖子3 (1.日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第一病院, 2.中京こどもハートセンター, 3.滋賀医科大学 循環器内科)
キーワード:
洞不全症候群、SCN5A、Brugada症候群
【背景】小児の器質的心疾患を伴わない洞不全症候群(SSS)は、比較的稀で無症状であることが多いが遺伝子異常を伴う場合がある。原因遺伝子にはSCN5A、HCN4が知られており、SCN5A遺伝子変異ではSSSとBrugada症候群(BrS)との合併も報告されている。【症例】6歳男児。母方祖父の兄に失神歴がありICDを植え込まれている。小学校入学時の学校心臓検診で脈が跳ぶと指摘され当院初診。無症状で、初診時の12誘導心電図では安静時補充調律を伴う洞性徐脈、マスター負荷で洞調律を認めた。トレッドミル運動負荷でHR133bpmまで上昇し、ホルター心電図で最大166bpmの洞性頻脈を認め、maxR-R=2.42secであり、運動制限なしで経過観察とした。心エコーでLVDd=38mm(105%N)、CTR=0.437、BNP=39.7pg/mlであった。しかし3か月後、本人は無症状で易疲労性もなかったが、マスター負荷でも補充調律が混在し、ホルターでは最大170-188bpmの上室頻拍を認めた。maxR-R=4.74secと延長し、LVDd=39.7mm、CTR=0.467と拡大傾向で、BNP=53.8pg/mlと漸増した。ペースメーカー植込術(PMI)の適応も懸念され、現在は他施設で経過観察中である。本児及び母の遺伝子検査でSCN5A変異が同定された。T1304K(現時点で病原性は確定していないが、SSSの原因と考えられる変異)で現時点ではBrSとは診断されないが、精査により確定する可能性を指摘され、家族歴から今後BrSを発症する可能性も示唆されている。【考察】本症例では洞機能不全が急速に進行したため遺伝性洞不全症候群を疑い遺伝子検査を行った。今後BrSを発症する可能性もあり、PMIを考える際にはICD植込も検討する必要がある。今回遺伝子検査を行い治療方針に影響を与えるような変異を同定できた。進行性のSSSでは遺伝子検査を検討する必要がある。