講演情報

[III-P03-2-05]先天性心疾患周術期における中心静脈カテーテル関連血栓の形態と短期予後に関する前向き観察研究

小野 頼母1, 小泉 沢1, 荒川 貴弘1, 竹澤 芳樹1, 熊江 優2, 田邊 雄大1, 其田 健司1, 松尾 諭志2, 崔 禎浩2 (1.宮城県立こども病院 集中治療科, 2.宮城県立こども病院 心臓血管外科)
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キーワード:

中心静脈カテーテル関連血栓、短期予後、前向き観察研究

【背景と目的】先天性心疾患周術期の中心静脈カテーテル関連血栓(central venous catheter [CVC] related thrombosis, CRT)の経過は十分に解明されていない.我々は前向き観察研究によりCRTの短期経過を調査した.
【方法】単施設前向き観察研究.2023年1月~2024年12月に,先天性心疾患周術期に指摘され診断後フォローアップできた内頚静脈のCRTを対象とした.CRTの診断と追跡には超音波検査を用いた.CRT消失,退院,CVC抜去後1か月経過のいずれかで追跡を終了した.患者背景,手術内容,周術期管理,CVC留置長,留置時間,留置血管径と断面積,CRTの形態と大きさ,CRTの転帰,ヘパリン療法,頭部画像検査を調査した.
【結果】連続82件(64例)が対象.男41,月齢3.6か月(0.2-10) [中央値(四方分位)].体重3.8 kg(2.8-6.7).期間中の死亡3(5%).CRT追跡期間11日(6-25).形態:壁在36(44%),シース様31(38%),腹側13(16%),完全閉塞2(2%).CVC抜去後7日以内に30件(37%)でCRTが消失した.いっぽう28件(34%)でCRTが残存した.CRT残存例(R群)は,消失した例(D群)と比較して月齢が低く(R:1.9[0.2-5.1],D:5.5[0.5-14],p=0.02),CVC留置時間が長かった(R:118[71-156],D:71[46-128],p=0.03).R群では高輝度のCRTが多く(R:17[61%],D:8[15%],p<0.001),CRT面積が血管断面積に占める割合(thrombus-venous ratio, TV ratio)が大きかった(R:34%[23-49],D:14%[9-27],p=0.02).二群間でヘパリン療法に差はなかった.高輝度またはTV ratio≧30%のCRTは23/36(64%)が残存したのに対し,その他のCRTで残存したのは5/46(11%)だった.腹側のみのCRTは全て消失した.心臓手術後に頭部画像検査を実施した39例のうち,脳梗塞を2例,静脈洞血栓を1例認めた.CRTとの関連は不明だった.
【結論】前向き観察研究では1カ月の観察期間で34%にCRTが残存した.高輝度またはTV ratio≧30%のCRTは短期的には残存する可能性が高い.