セッション詳細

【オンデマンドシンポジウム16】島で生きる、島で支える—公衆衛生の実践知から編み出す離島の健康と医療の未来

座長:鈴木 貴明(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター)
ファシリテーター:鈴木 貴明(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター附属久高診療所)
         中山慎太郎(株式会社OUI)
日本の離島が抱える医療・公衆衛生の課題は、人口減少や高齢化、医療資源の偏在といった構造的問題だけではありません。外からは「不便」「困難」と映る環境も、内側から見ると「創意」「連帯」「包摂性」に満ちています。そこには、限られた条件のなかで人々が「生きる」「支える」を形にしてきた有機的なコミュニティ=“シマ”の知恵とレジリエンスがあります。これは、地域に根ざした公衆衛生活動の源泉であり、健康の社会的決定要因(SDH)を理解するうえでも不可欠な視点です。こうした現場知は、地域医療や保健体制を持続可能にする上での理論と実践の橋渡し役となり得ます。
本セッションでは、住民のライフコース全体を見据え、「この地でより良く生き、そして死ぬ」ための健康と医療の在り方を多角的に検討します。母子保健では、特に産科医療機関のない小規模離島で妊婦が直面する移動・待機・医療アクセスの課題と、その中でいかにウェルビーイングを確保できるかを考察します。外科・救急医療では、必要な手術や外傷・救急対応が地理的・資源的制約の中でも確保されるための体制構築に焦点を当て、世界的にも注目される安全で公平な外科的ケアの実現に向けた実践例を共有します。終末期医療では、島民の死生観や地域に根ざした看取りの文化を通じ、「Good Death(良い死)」を支える地域力を可視化し、倫理的・文化的側面も含めて検討します。さらに、慢性的な医師不足下での眼科ケアについては、スマートアイカメラ等のテクノロジーと専門性の融合による遠隔医療の可能性を提示します。
本シンポジウムは、島で活動する医療・保健従事者、企業、研究者が一堂に会し、医療アクセスの公平性や地域包括的な健康づくりといった公衆衛生の根幹的課題に、現場の声と科学的知見をもって挑みます。「ない」からこそ生まれる創造力とつながりを原動力に、離島から発信できる新しいモデルを共に描き、学術的・実践的双方から未来志向の議論を深めましょう。ぜひ本オンデマンドセッションにご参加ください。

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[オンデマンドシンポジウム16-1]小規模離島における母子、その家族の周産期ウェルビーイングとは

*鈴木 和音1 (1. 琉球大学大学院保健学研究科 国際地域保健学教室)

[オンデマンドシンポジウム16-2]地域における外科医療のあり方についての考察―Rural SurgeryとGlobal Surgery

*浅野 志麻1,2、今中 雄一2 (1. 沖縄県立宮古病院 外科、2. 京都大学大学院医学研究科ヘルスセキュリティセンター 健康危機管理システム学分野)

[オンデマンドシンポジウム16-3]離島で迎える人生の最期—屋久島における 「Good Death(良い死)」を考える

*杉下 智彦1 (1. 屋久島尾之間診療所)

[オンデマンドシンポジウム16-4]離島における眼科遠隔診療の可能性と公衆衛生的意義

*西村 裕樹1,2,3,4、戸澤 小春1,2、中山 慎太郎1,3、清水 映輔1,2,3 (1. 株式会社OUI、2. 医療法人慶眼会横浜けいあい眼科和田町院、3. 慶應義塾大学医学部眼科学教室、4. 帝京大学大学院公衆衛生学研究科)