セッション詳細

【オンデマンドシンポジウム20】自治体のデータヘルス計画におけるポリファーマシー対策の実践方法

座長:福田 吉治(帝京大学大学院公衆衛生学研究科)
わが国では急速に高齢化が進み、前期及び後期高齢者が多くなってきている。高齢者は加齢による生理的な変化や複数の併存疾患を治療するため、一人で罹患する疾病数は多くなり、そのため多剤服用(ポリファーマシー)に陥ってしまい、そのことによって安全性の問題が惹起する。多くの薬剤疫学の論文は、ポリファーマシー状態の患者はそういう状態でない患者と比較して「転倒頻度が高い」「大腿骨頸部骨折が多い」「排尿障害が多い」「認知機能の低下が著しい」「平均寿命が短い」などの結果を示し、ポリファーマシーは高齢者の健康面で深刻な影響を及ぼすことを明らかにしている。このように公衆衛生学上で大きな問題になり、厚生労働省が高齢者医薬品適正使用検討会などを設置し本格的に対策に乗り出した。そうした対策の一環として、2024 年7 月に「地域における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」をまとめた冊子を発行した。この冊子ではポリファーマシー対策を効果的に進めるために、地域の多様な主体(自治体、保険者、医師会、薬剤師会等)の連携が重要であるとし、行政の取り組み、医療従事者による多職種連携、また患者家族の理解の促進など、いくつかの有効な手法等を示している。こうした地域医療における積極な取り組みが政府によって推進されている背景があり、最近では優れた自治体の保健師がポリファーマシー対策に積極的に取り組んでいる。例えば、KDB を活用しながら地域の医薬品のデータを分析し地域のポリファーマシーの現状を把握する、転倒予防(フレイル予防)のためのポリファーマシー対策を策定するなど、地域の保健師が高齢者の健康管理に関する新しいプロジェクトと位置付け、医療従事者と連携しながらリーダーシップを発揮している。従来の保健師の業務では、処方薬剤に関連する領域にはほとんど関わらない場合が多かった。しかしながら、超高齢社会になりポリファーマシーが住民の健康管理の身近な問題となり、保健師の新しい重要な仕事になっている。そこで、今回のシンポジウムでは、全国でも先駆的な取り組みをしている千葉県木更津市及び宮城県大崎市の保健師によるポリファーマシー対策に関する事例を報告し、長く研究している研究者とのコラボレーションにより「自治体におけるポリファーマシー対策」について参加者と共に検討していきたい。

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[オンデマンドシンポジウム20-1]行政と薬剤師会の協働により構築した市民に身近なフレイル早期発見・相談体制の地域モデル

*中川 由紀代1、鎌田 由貴子1、舘内 公代1、武田 歌織2、千田 利彦3、髙橋 均3、小田嶋 一明3 (1. 大崎市民生部健康推進課、2. 大崎市民生部保険年金課、3. 大崎薬剤師会)

[オンデマンドシンポジウム20-2]薬剤師会と連携した木更津市のポリファーマシー対策

*高橋 由美子1 (1. 木更津市)

[オンデマンドシンポジウム20-3]地域における新しい標準的ポリファーマシー対策

*今井 博久1 (1. 帝京大学大学院公衆衛生学研究科)