セッション詳細

【シンポジウム3】公衆衛生に国境はない(Public Health without Border)

2025年10月29日(水) 8:50 〜 10:20
第2会場 (交流ホール:6階)
座長:中村 安秀(日本WHO協会)
   大西 眞由美(長崎大学生命医科学域(保健学系))
私たちは、1999年の第58回日本公衆衛生学会(大分)において、第1回自由集会「公衆衛生に国境はない」を開催した。「世界各地で同時代性に行われているさまざまなチャレンジから謙虚に学び、グローバルな視点を共有すること」を掲げ、「日本の地域保健で現在生じている問題のほとんどは、日本の特殊な課題ではなく、地球規模で考えればすでに多くの国で試行錯誤が行われている課題である」と洞察を行った。
うれしいことに、いま公衆衛生学分野においても、国境を越えた相互交流がすすんできた。かつて私たちが途上国(developing countries)と呼んでいた国で、深刻な貧困、識字率の低さなどの課題に向き合い奮闘してきたが、日本国内においても同様の課題が浮き彫りになってきた。いまは途上国とは呼ばず低中所得国(low-middle income countries)と呼ぶことが多いが、国の所得の多寡にかかわらず、同時代的に発生した課題に対して、地球規模でお互いに情報交換し、学びあう時代が到来したということができる。
 シンポジウムでは、當山紀子さん(大阪大学大学院医学系研究科)からは日本発の母子健康手帳が海外に広がり、海外から学ぶ時代に移りつつあること、桑山紀彦さん(地球のステージ)からは東日本大震災、ウクライナ、ガザなどの心理社会的支援がお互いに響きあっていること、岩本あづささん(国立健康危機管理研究機構)からは日本国内の在住外国人の保健医療の課題が国際保健医療協力と深くつながっていることをお話しいただく予定である。
相手国の人々の文化や宗教に配慮しながら最善の保健医療サービスを提供してきた国際保健医療の経験と知恵は、日本国内に在住する外国人コミュニティーはもとより、日本国内の公衆衛生の実践と研究にも援用できる。四半世紀前に、私たちが「わが国の公衆衛生をグローバルな視点から見直し、日本の公衆衛生の成果を国際保健の現場に応用し、国際保健で学んだ経験を日本の公衆衛生の発展に活かしていきたい」と宣言したことが現実の課題となっている。「公衆衛生のボーダレス」の時代において、地球規模で長年にわたって取り組んできた国際保健医療の成果と教訓を活かしつつ、日本の公衆衛生学が国境を超えて大きく門戸を開き、世界各地の実践、活動、研究と積極的に交流し発展する輝かしい未来に期待したい。

[シンポジウム3-1]移民の健康ーグローバルな公衆衛生課題

*岩本 あづさ (国立健康危機管理研究機構 国際医療協力局)

[シンポジウム3-2]今や国際協力の現場における「心のケア」の標準モデルとなった心理社会的支援とは

*桑山 紀彦1,2 (1. 海老名こころのクリニック,2. 認定NPO法人「地球のステージ」)

[シンポジウム3-3]インドネシアとパレスチナの母子健康手帳

*當山 紀子 (大阪大学大学院医学系研究科附属次のいのちを守る人材育成教育研究センター)