セッション詳細

【シンポジウム37】日本における社会的処方の最前線-厚労省モデル事業と地域の挑戦

2025年10月30日(木) 16:20 〜 17:50
第3会場 (会議ホール:11階)
座長:野村 恭子(秋田大学大学院 衛生学・公衆衛生学講座)
近年、社会的孤立や孤独が心身の健康に深刻な影響を及ぼすことが、国内外の研究により明らかとなっている。こうした背景のもと、注目を集めているのが「社会的処方(social prescribing)」である。社会的処方とは、医療や福祉の専門職が、患者や住民の抱える社会的課題や孤立状況に着目し、地域の活動や支援資源へと“処方”することで、社会的つながりや参加を促し、生活の質や健康状態の向上を目指す取り組みである。イギリスをはじめとする欧米諸国では制度化が進んでおり、日本においても、地域包括ケアの推進や医療・介護の負担軽減といった観点から、その意義が広く認識されつつある。
本シンポジウムでは、日本における社会的処方の現状と課題を共有し、その今後の展望について多角的に議論する。まず、2021年度から2023年度にかけて実施された厚生労働省の「社会的処方モデル事業」の成果について、京都大学の近藤尚己氏より報告をいただく。本モデル事業では、全国複数地域において、医療と地域資源を結ぶ仕組みの構築、リンクワーカーの育成、ならびに効果評価が試行され、日本型社会的処方の可能性が探求された。
続いて、兵庫県養父市における実践例として、吉田由佳氏より、自治体が主体となった社会的処方の展開を紹介いただく。住民の主体性を活かしたネットワークづくりや、行政職員と地域団体との連携の工夫など、地方自治体における具体的な取り組みが発表される予定である。
さらに、公益財団法人体力医学研究所の甲斐裕子氏からは、横浜市における官民連携型の社会的処方の実践事例が報告される。多職種・多主体が連携し、市民の社会参加を支援する仕組みは、都市部における新たなモデルとして注目に値するものである。
本シンポジウムが、日本における社会的処方の普及・定着と制度的整備、さらには地域に根ざした持続可能な実践の推進に寄与することを期待する。会場の皆様とともに、社会的処方の未来を考える機会としたい。

[シンポジウム37-1]モデル事業から見えてきた、日本に「ほしい」社会的処方の仕組み

*近藤 尚己1,2 (1. 京都大学,2. 一般社団法人安寧社会共創イニシアチブ(AnCo))

[シンポジウム37-2]養父市における社会的処方の取り組み

*吉田 由佳 (養父市社会的処方推進課)

[シンポジウム37-3]横浜市における官民連携による社会的処方への挑戦

*甲斐 裕子 (公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所)