セッション詳細

【シンポジウム70】グローバルレベルにおける保健医療サービス・カバレッジ指標の今後の展望と課題

2025年10月31日(金) 8:50 〜 10:20
第6会場 (908)
座長:大澤 絵里(国立保健医療科学院)
   五十嵐 久美子(国立保健医療科学院)
本シンポジウムは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の進捗状況をいかに適切に測定し、その結果を政策や実践へと反映させていくかという、グローバルヘルスにおいて重要な課題を考える場として企画された。
 UHCは、すべての人々が支払い可能な費用で、必要な質の高い保健医療サービスを受けられることを目指しており、SDGsの指標の一つでもある。保健医療分野における公平性と持続可能性を実現するための国際的な共通目標である。UHCの達成度を測定するサービス・カバレッジ指標は、現在、4つの分野(リプロダクティブおよび新生児、乳幼児の健康、感染症、非感染性疾患、サービスキャパシティ)の14指標にて構成され、それを用いて国ごとの到達状況はモニタリングされている。WHO/World Bank共同で、隔年で公表されているUHC Global Monitoring Reportでは、2015年以降、サービス・カバレッジ指標の改善停滞,破滅的な医療費自己負担に直面する人口割合の増加が報告されており、SDGsの目標年である2030年にその達成が困難と報告されている。
 14のサービス・カバレッジ指標は、UHCを各国比較しながらモニタリングするための貴重な手段であるが、一方で、その測定でカバーしきれていない分野や側面も少なくない。たとえば、現在、新たなUHC指標に含める議論がいくつかの分野で進んでいる。歯科・口腔保健、リハビリテーション、高齢者の健康などの分野である。また、サービスの質や、地域間や社会経済的背景による格差、あるいは保健システムのレジリエンスなどは、依然として測定が難しい側面である。
 本シンポジウムでは、ポストSDGsにおけるUHC指標開発をテーマの中心とし、グローバルにおけるUHC実現に向けて日本の貢献、既存のUHCの指標の意義と限界と今後の発展、UHC指標への統合の新たな指標の代表として歯科・口腔保健指標の国際的動向、持続可能性を考慮したUHCの実現の4つの発表をうけて、次世代のUHCモニタリングの方向性を展望する。UHCの理念を、より実効性ある形で実現するためには、測定と評価の枠組み自体が見直され、進化し続ける必要があり、本シンポジウムが、政策・研究・実践の視点からの議論の場になることを期待する。

[シンポジウム70-1]ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に向けた日本の貢献

*井筒 将斗 (厚生労働省大臣官房国際課)

[シンポジウム70-2]既存のUHCサービスカバレッジインデックスの傾向とその課題点の分析

*中西 康裕1、早坂 章2、野村 真利香3,4、大澤 絵里5 (1. 国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部,2. 横浜市立大学大学院 データサイエンス研究科,3. 独立行政法人国際協力機構(JICA) 人間開発部,4. 長崎大学大学院 グローバルヘルス研究科,5. 国立保健医療科学院 公衆衛生政策研究部)

[シンポジウム70-3]UHC指標と口腔保健指標との統合に関する国際的動向

*三浦 宏子 (北海道医療大学歯学部保健衛生学分野)

[シンポジウム70-4]気候変動対応とHTAで築く持続可能なUHC

*坂元 晴香 (聖路加国際大学)