講演情報

[P5-10]訪問理学療法による調理動作再獲得の一例
―セルフモニタリングと自己効力感に着目して―

*斉田 直人1、樋口 明伸2、井戸 寛人1、遠藤 春菜1、二瓶 太志3 (1. ライフサポートねりま リハビリテーション部 理学療法士、2. ねりま健育会病院 リハビリテーション部 理学療法士、3. ねりま健育会病院 リハビリテーション部 作業療法士)
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キーワード:

訪問リハビリ、自己効力感、自主訓練

【はじめに,目的】 脳卒中後の維持期リハビリテーションにおいて,家庭内役割の再獲得は重要な目標の一つである.訪問理学療法(以下,訪問PT)では,利用者のニーズに応じて作業療法的視点を含む包括的アプローチも求められる場合がある.訪問PTにて調理訓練を含む介入を行ったことで,調理動作の再獲得と活動量増加に至った症例の経過を報告し,地域における訪問PTの役割について考察する.
【症例紹介】 70歳代女性,要介護3.夫・長男と同居.診断名は左アテローム血栓性脳梗塞(発症日をX),右片麻痺.X+1ヶ月より回復期病棟へ入院し,X+6ヶ月で自宅退院.退院時評価はBRS右上肢Ⅱ・手指Ⅱ・下肢Ⅲ,BBS42点,握力0/16.0kg(右/左),CS30は12回,BI90点,MMSE26点.4点杖屋内歩行自立.
【介入内容と結果】X+7ヶ月より訪問PT開始.利用者自ら起立訓練等の自主訓練状況と1日の歩数を日誌に記録し,訪問PTにて毎回フィードバックを行うことで継続を支援した.退院直後の歩数は200〜800歩/日であったが,X+9ヶ月以降2,000歩を超え,X+11ヶ月以降は3,000歩台が安定して可能になった.歩数の増加に伴い主訴も「洗濯物や料理がしたい」「味噌汁を作りたい」と具体的な役割への意欲へ変化した.X+11ヶ月より夕食配膳動作訓練を導入,X+14ヶ月より調理訓練を開始した.まな板への輪ゴムを用いた食材固定等の環境調整を行い,味噌汁・野菜炒め・カレーと段階的に活動の幅を広げた.X+17ヶ月には余暇時間に自ら家族へカレーを作り提供することができ,「作って待ってたのよ」と笑顔で語った.最終評価(X+18ヶ月)ではBBS46点,握力0/14.7kg(右/左),SC-30は12回,BI90点,MMSE28点となった.
【考察】セルフモニタリングによる自主訓練の継続と,歩数という客観的な活動量の向上が自己効力感の向上に有効であったと考える.この変化や要望を適時捉え,訪問PTの枠にとらわれず調理訓練へと展開したことが役割再獲得に繋がった.理学療法の専門性の観点から,調理という実用的な動作の中でどのように身体(体幹や下肢・上肢)を使えば安定するかを直接指導できる反面,巧緻動作や、注意力、手順の組み立て(遂行)、満足度といった「生活行為」としての作業療法士の専門領域の評価と介入技術が求められる場面も少なくない.調理手順の工夫や高次脳機能障害の支援、自助具等の環境調整が必要な場合は、作業療法士との連携を検討することが望ましいが,訪問PTには,身体機能評価のみならず,利用者の意欲変化に合わせた柔軟な目標更新と,ADL・IADL全般に対応する包括的な実践力が必要であると考えられる.
【倫理的配慮】 本症例と家族に対し個人情報とプライバシーの保護に配慮し,本発表の趣旨と内容に関して説明を行い,口頭と紙面にて同意を得た.

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