講演情報
[14-O-D002-01]伝えられない思いを汲み取って
*若園 紀子1 (1. 岐阜県 老人保健施設西濃)
帰宅願望の強い方の状態把握の為職員間で情報共有した結果、BPSDの減少や一定の有効性が示唆されたので報告する。情報共有には申し送りや介護記録の他、不穏時に職員間で相談した。その結果、帰宅願望ではなく尿失禁の不快感よりBPSDを起こしていた事が分かった。自分の気持ちが表せず、周囲に理解されないという不安がBPSDを引き起こしていたと考えられた。
【はじめに】
私達の施設では認知症重度の入所者が多くみえる。不穏行動が少なくなる様に取り組む中で帰宅願望より不穏になると思っていた方が、情報共有する事で失禁の不快感から不穏になる事が分かった。対応した事で不穏行動が減少したのでここに報告する。
【事例紹介】
B・Tさん 女性 86歳 介護度3 長谷川式3点 DBD-13 16点 VI 7点
既往歴 アルツハイマー型認知症 ラクナ梗塞 糖尿病
入所時は帰宅願望が強くフロア内を徘徊し、出口がないと暴言を吐いたり暴れて職員を叩いていた。DrやNSに相談して向精神薬(クエチアピン)を夕食時服用する事になった。徘徊や不穏になりやすい時間や状態を把握の為に情報共有する事にした。
【方法】
1)朝・夕の申し送りでいつ・どんな状態か報告する。
2)普段と違った行動・状態の時は他の職員に相談する。
3)徘徊・不穏行動があれば介護記録に記録する。
【経過・結果】
内服の効果があり日中穏やかに過ごされる様になった。それでも時々夕食後「帰りたい」と徘徊される事があった。
3ヶ月後 他の入所者と仲良くなり、日中は落ち着いて過ごせるようになった。しかし申し送りで「寝かせたが起きてくる」や「夕食前に落ち着かず徘徊する」などの報告が連日聞かれる様になり、職員で話し合うと夕食前~就寝前に不穏になりやすいことが分かった。夕食前に向精神薬を内服する事になり、寝ぐずる事が無く目覚めもスッキリする様になった。
5ヶ月後 膝が痛くなり歩く事ができなくなった。「行ってくる」と車椅子より立ち上がる事が多く散歩するが納得されずイライラして職員を叩く事があった。パット内で失禁する事が多くなり、トイレで排尿が少なくなった。職員で話合うと「立ち上がりが多かった後で尿失禁していた」や「トイレでは排尿が無く戻ってきてすぐに立ち上がった為もう一度トイレに行くともう尿失禁していた」などの話があった。このことより失禁して不快感より立ち上がっているのではないかと考え、車椅子から立ち上がった時はトイレに行くようにした。段々と落ち着いて過ごされる様になり表情も穏やかになった。
【考察】
入所時は環境が変わり不安な為に帰宅願望が強かったが、5ヶ月目は尿失禁している不快感や職員に自分の気持ちが分かってもらえない不安から不穏行動に繋がっていた。認知症の入所者の心理・行動を予測する事でBPSDを減られたと考えられる。
【まとめ】
日頃入所者の言動には気を付けているが、認知症が進行するとしたい事や感じた事が言葉で表せなくなってくる。職員間で入所者の行動を情報共有する事で入所者の思いを汲み取ることが改めて大切だと実感した。ご本人には自分の気持ちを理解してもらえる安心感を持って頂くことが出来た。これからも情報共有し入所者の心に寄り添った介護が出来るようにしていきたい。
私達の施設では認知症重度の入所者が多くみえる。不穏行動が少なくなる様に取り組む中で帰宅願望より不穏になると思っていた方が、情報共有する事で失禁の不快感から不穏になる事が分かった。対応した事で不穏行動が減少したのでここに報告する。
【事例紹介】
B・Tさん 女性 86歳 介護度3 長谷川式3点 DBD-13 16点 VI 7点
既往歴 アルツハイマー型認知症 ラクナ梗塞 糖尿病
入所時は帰宅願望が強くフロア内を徘徊し、出口がないと暴言を吐いたり暴れて職員を叩いていた。DrやNSに相談して向精神薬(クエチアピン)を夕食時服用する事になった。徘徊や不穏になりやすい時間や状態を把握の為に情報共有する事にした。
【方法】
1)朝・夕の申し送りでいつ・どんな状態か報告する。
2)普段と違った行動・状態の時は他の職員に相談する。
3)徘徊・不穏行動があれば介護記録に記録する。
【経過・結果】
内服の効果があり日中穏やかに過ごされる様になった。それでも時々夕食後「帰りたい」と徘徊される事があった。
3ヶ月後 他の入所者と仲良くなり、日中は落ち着いて過ごせるようになった。しかし申し送りで「寝かせたが起きてくる」や「夕食前に落ち着かず徘徊する」などの報告が連日聞かれる様になり、職員で話し合うと夕食前~就寝前に不穏になりやすいことが分かった。夕食前に向精神薬を内服する事になり、寝ぐずる事が無く目覚めもスッキリする様になった。
5ヶ月後 膝が痛くなり歩く事ができなくなった。「行ってくる」と車椅子より立ち上がる事が多く散歩するが納得されずイライラして職員を叩く事があった。パット内で失禁する事が多くなり、トイレで排尿が少なくなった。職員で話合うと「立ち上がりが多かった後で尿失禁していた」や「トイレでは排尿が無く戻ってきてすぐに立ち上がった為もう一度トイレに行くともう尿失禁していた」などの話があった。このことより失禁して不快感より立ち上がっているのではないかと考え、車椅子から立ち上がった時はトイレに行くようにした。段々と落ち着いて過ごされる様になり表情も穏やかになった。
【考察】
入所時は環境が変わり不安な為に帰宅願望が強かったが、5ヶ月目は尿失禁している不快感や職員に自分の気持ちが分かってもらえない不安から不穏行動に繋がっていた。認知症の入所者の心理・行動を予測する事でBPSDを減られたと考えられる。
【まとめ】
日頃入所者の言動には気を付けているが、認知症が進行するとしたい事や感じた事が言葉で表せなくなってくる。職員間で入所者の行動を情報共有する事で入所者の思いを汲み取ることが改めて大切だと実感した。ご本人には自分の気持ちを理解してもらえる安心感を持って頂くことが出来た。これからも情報共有し入所者の心に寄り添った介護が出来るようにしていきたい。