講演情報

[14-O-D002-03]お風呂に入ってくれるようになった!!ユマニチュードケアを実践して

*大濱 祐三1、菊地原 光治1、中野 隆造1、鈴木 伸明1 (1. 愛知県 岡崎老人保健施設 スクエアガーデン)
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【目的】介護に難渋している入所者にユマニチュードケアを実践し、その変化を検証する。【方法】BPSDQ13、認知症介護肯定感尺度を用いて、取り組み前後の変化を確認する。【結果】Q13では易怒性・脱抑制・介護拒否(特に入浴))が、肯定感尺度では介護ができる自信の項目で改善がみられた。【考察】表情が穏やかになり、スタッフとの会話も増えることによって、前向きに介護に取り組めるようになった
【はじめに】
認知症高齢者の介護において、ユマニチュードケアの有用性が多数報告されている。当施設において、介助に難渋していた入所者にスタッフ一丸となってユマニチュードの技法を用いてアプローチした結果、劇的な変化を得られた症例を経験したので報告する。
【対象と方法】
症例)91歳、男性、要介護1、障害高齢者の日常生活自立度 A2、認知症高齢者の日常生活自立度 IIb、HDS-R 9点歩行:独歩だがふらつきあり。排泄:終日自立。
令和5年11月末に入所。脱抑制、易怒性、アパシー、傾眠、介護拒否がみられた。他入所者に「邪魔や、どけ」等の暴言や、着替えや入浴の拒否が強かった。特に腹痛の訴えがある際は「いらん」「面倒くさい」とスタッフの声掛けも拒絶することが多かった。
ユマニチュードの技法を用いたアプローチで介護を継続し、情報共有の場として毎日5分程度のユマニチュードミーティングを行った。
また、それと同時に、BPSDQ13と認知症介護肯定感尺度(1~16で評価)を用いて、取り組み前後の介護される側・する側の変化の確認も行った。
評価期間は2ヶ月とした。(令和6年5月~6月)
【結果】
BPSDQ13では易怒性・脱抑制・介護拒否が改善した。認知症介護肯定感尺度では介護する意味付け・介護ができる自信・介護で得られた喜びのすべての項目で改善がみられた。介護される側の側面では、スタッフとの会話も増え、表情が穏やかになり、以前のように他入所者への暴言もほとんどみられなくなった。
歩行がふらついていた際も、手引き歩行の拒否もなくなり「ありがとな」と自ら手を伸ばされるようになった。拒否の強かった入浴もしっかりとお話しを傾聴することで入浴される回数も増えた。
12月:1回、1月:0回、2月:1回、3月:2回、4月:1回と推移していた。取り組み開始以降、5月:4回、6月:4回と増え、さらに、入浴後はにこやかに帰っていかれるようになった。
介護する側の側面では、易怒性の為にコミュニケーションが極端に不足しており、こちらからしっかりとアプローチする重要性と入所者にみられた変化の気付きから、積極的な介入ができるようになった。
【考察】
今回、ユマニチュードケアの実践が施設全体として取り組めた要因として、以下の3つがあげられる。
1)過去のユマニチュードケアの勉強会資料をQRコードでアクセスできる動画として作成し、いつでも自己学習できるようにした。
2)4つの柱(見る、話す、触れる、立つ) 5つのステップ(出会いの準備、ケアの準備、知覚の連結、感情の連結、再会の約束)をまとめたポスターを各所に掲示し、ミニチュア版を名札の裏に入れリマインドできるようにした。
3)毎日5分程度のユマニチュードミーティングを実施し、情報共有を行った。そこで得られた情報を元に次のアプローチの提案を行うというサイクルを継続して行えた。
今後もこの取り組みを継続し、ユマニチュードケアが当施設のスタンダードなケアになるように努めたい。