講演情報

[14-O-D005-05]歌を唄うことにより情動が穏やかに変化した事例の報告

*河田 かおり1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設カワムラコート)
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認知症専門棟において歌が好きな利用者を4人部屋に集めて歌うことのきっかけを提案した。当初はお互いに交流の少ない者同士であったが、職員や看護実習生が一緒に歌ったりと関わりを続けた。
当初、利用者同士の関わりは見られない状態であったが次第にこの4人のコミュニケーションが始まり、自ら唄い、妄想や攻撃的な言葉使いの減少。穏やかに笑顔が見られるなど変化が見られたので報告した。
『はじめに』
 当施設には認知症専門棟が38床あり、新型コロナ感染症のクラスターをこれまでに3度乗り越えてきました。感染対策のため余暇活動を中止し、自室で過ごす日常生活を送ることとなり、利用者の楽しみの一つであるフロアでのテレビ鑑賞も中止したため、生活の刺激が減少し利用者同士の会話、職員との会話もコロナ渦以前のような活気がなくなりました。ある日、4人部屋の一室から複数人で唄う童謡が聞こえてきました。
「1人で唄ってみたらみんなが一緒に唄ってくれたの」と嬉しそうに話してくれた笑顔が印象に残っています。余暇活動の1つにならないだろうかと考え取り組んだ結果を報告します。
『目的』
 部屋単位でできる余暇活動を考える一環で、利用者同士で歌を唄うグループが出現したため活動が継続できるように多方向から関わりを持つ。
『方法』
 唱歌の歌詞本を読めるように設置する
 歌が聞こえてきたら職員も同席して一緒に唄う
 看護実習生の受け持ち利用者として選択して関わりをすすめる
 部屋移動が必要な時は発語を促したい利用者をそのグループに入れる
『結果』
 歌詞本を読み、唄い出すと一緒に唄っている姿が見られた。
演歌歌手の歌で「この歌、好きやけど難しいよね」など歌で繋がる会話が成り立つようになった。そこからコミュニケーションが広がり、今まで自分にしか興味が無かった人たちが同室者への気遣いをする声かけが見られた。
 4人部屋でのコミュニティが確立したためか、他室の利用者が入って来たり、異性の利用者が入って来ると反って盛り上がらない雰囲気になる光景が見られた。看護実習生がそのグループ向けにレクリエーションを行うため歌詞カードを配り、季節に合った歌を唄う企画で季節を認識し、季節の食べ物・衣服・行事についての会話の発展が見られた。
『考察』
 殺伐とした感染対策下の環境の中で歌を唄うことにより同室者とのコミュニケーションが広がった事例で、きっかけから結果まで利用者が教えてくれたコミュニケーション術となった。余暇活動も場所や道具ばかりが必要ではないということも気付けた。小グループでの歌、塗り絵、折り紙、体操などで余暇活動を勧める環境を整えて行こうと思います。