講演情報

[14-O-D005-06]楽寿園認知症カフェ「楽カフェ」の楽は楽しいの楽

*峯 貴史1、山口 由美1、松本 晋一1、水尾 彰宏1、友廣 桃子1、百武 浩二1 (1. 佐賀県 介護老人保健施設ケアポート楽寿園)
PDFダウンロードPDFダウンロード
少子高齢化が進み認知症を有する高齢者も増加しているが私たちの住む地域も例外ではない。しかし地域で認知症の人が住みやすくなるにはまだまだ認知症への理解が少ない。そこで地域に対し認知症への理解を深めるために何かできないかと考え取り組んだ活動について報告する。コロナ禍もあり活動制限されたが、新型コロナ5類移行し今年度活動の再開を目指す。
【はじめに】
少子高齢化が進み認知症を有する高齢者も増加し2025年には5人に1人は認知症を有すると言われている。当施設がある佐賀県伊万里市も例外ではない。人口の33%を超える高齢化率で地区によっては40%を超えるところもあり今後さらに高齢化・認知症有病率が進むと考えられる。
そこで認知症専門棟がある当施設も地域に対し何かできないかと考えたのが認知症カフェだった。今回その取り組みとコロナ禍での活動について報告する。
【活動の経緯】
2012年より交流委員会として活動開始し家族交流会を通して認知症についての知識や接し方等の講座をしていたが、入所者家族だけではなく地域全体に認知症について知ってもらう機会を作りたいと考え、今後の活動内容について検討した。
【活動内容】
認知症サポーター養成講座や認知症カフェが地域への認知症を知ってもらうための良い機会になる事を知り、地域に住む認知症の人や家族と関わりをもちたいと市内にある認知症の人と家族の会へ参加を始めた。会合(介護のなやみかたろう会)参加、認知症カフェ見学参加、認知症カフェ内では当施設で取り組んでいたアロマセラピーやトランスファー等の出前講座を実施。他にも地域での老人クラブ、サロン等の見学や専門職による出前講座等も行った。
認知症カフェは講座と違い、双方向のコミュニケーションがとりやすく会話の中で疑問や不安をその場にいる皆さんと共有でき、参加者からのアドバイスを得やすいため認知症への理解を深めるにはとても良い場であると感じた。地域の方々へ認知症についての理解を深めてもらう認知症カフェを自施設を利用してつくることはできないか、と開催に向け動き出した。協力病院の認知症専門医に協力を依頼し、2019年12月に第1回ケアポート楽寿園認知症カフェ「楽カフェ」を開催。楽カフェという名前は『楽寿園の楽、楽しいの楽』から命名した。カフェ参加者は施設入所者通所利用者とその家族、コミュニティ、法人職員、講演していただいた医師と家族の計26名。
カフェ開催後のアンケートでは「アットホームな感じでよかった。」「広々としたスペースでの座談会良かったです。」「本人と一緒にということが特によかった。」といった嬉しいご意見を頂いた。また、「日頃の介護の悩みなどが話せるようになればいいと思う。」「通所と入所の家族のあり方を知りたい。」「運動なども少しでいいので教えて欲しい。」と今後も期待していただいていることを感じる意見を多数頂いた。
第1回の成功を受け、次年度第2回の開催に向け委員会では話し合うことになった。しかし、2020年に新型コロナウイルスが流行の兆しを見せ当施設でも警戒しながら社会の動向をみていたが、同年4月の緊急事態宣言を受け当施設でも面会禁止、外部との交流を控えるようになり交流委員会も活動停止せざるを得なくなってしまった。
【コロナ禍での活動】
面会禁止、外部との交流も控えることになり交流委員会も活動を停止したが楽カフェの火を消さぬよう当施設で毎月行っている誕生会とは別に入所者向けのカフェイベントを企画レクリエーション委員会と共に実施。母の日会や七夕茶会、クリスマスカフェといった季節を楽しめる催し物を実施。カフェらしく毎回手作りで看板を作成し、コーヒーや紅茶などの飲み物やケーキやお菓子を自分で選んでもらい職員も入所者と一緒に飲食しながら楽しんでいただく。時には一緒にデザートを手作りしみんなで楽しんでいる。企画や準備は大変だが、カフェの雰囲気がでるように職員が工夫を凝らした。
入所者の皆さんはご家族との面会がなくなり寂しそうにされていたがカフェイベントの時は大声で笑ったり、自分たちでつくったデザートに舌鼓を打ったり、また家族から写真を持ってきてもらい昔話をしてとても楽しそうにされていて、カフェ終了後は他者との交流が増えたという嬉しい出来事もあった。
【コロナ5類移行後の活動】
2023年5月に新型コロナウイルス感染症は5類感染症となり当施設も面会再開となったが、終息が見えない中これまで同様の活動は難しく入所者向けカフェイベントはそのまま継続。5類移行後の社会も落ち着いてきたため楽カフェ再開に向けて交流委員会も活動を再開。まずは階でのカフェイベントへ入所者家族に参加を呼び掛けた。同年12月のクリスマスカフェへ家族の参加があり、久しぶりの家族参加でのイベントであったため入所者も家族もとても喜ばれ「一緒にお茶を飲む機会があって嬉しかった。」とのお言葉を頂いた。
【今後の課題・展望】
現在、今年9月楽カフェ開催に向けて動いている。前回入所者家族や通所利用者家族へのカフェ開催のお知らせはチラシを作成し配布、地域住民へはチラシを回覧板で確認していただけるよう配布したがFacebookやインスタグラム等のSNSを活用までは出来ていなかった。現在はSNSを活用されている所も多く当施設でも可能な限りでの広報活動を行うことも準備中である。5類移行しているとはいえまだまだ新型コロナウイルス感染症はあり園内で多人数の飲食に対しての感染対策への課題がある。企画については前回のアンケートで要望があったものなどを企画中である。
当施設には認知症ケア専門士や認知症介護実践リーダー、キャラバンメイトといった認知症に関する資格を有する職員も多く在籍しているため、地域へ向け認知症サポーター養成講座といった認知症についての知識や接し方、専門職が在籍していることを活かし要介護者への介助方法や福祉用具等色んな情報提供、管理栄養士と備蓄食の試食会といったことも企画したい。
今後、定期的な認知症カフェ開催を行い地域の方々へ認知症についての理解を深めるような情報提供を続けて、認知症の人が安心して住み続けられる地域づくりを目標にこれからも取り組んでいきたい。