講演情報

[14-O-P206-02]フィリピン人介護福祉士として私が学んだこと

*アナ グレン1、野崎 ジャマイマ1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設ケアポート白鳳)
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EPAとして10年働き私が学んだことを外国人介護福祉士の指導や支援の参考にしてほしいため報告する。日本人とフィリピン人とでは、文化や習慣の違いがある。フィリピン人の多くはプライドが高くわからないと伝えるのは勇気がいる。言葉の理解は難しくても歌の歌詞や踊りなら理解しやすい。一人になることは寂しくストレスを感じやすい。今は結婚して車の運転免許も取得し、ドライブに行くことが楽しみとなっている。
【はじめに】
 私はEPA(日本政府とフィリピンの経済連携協定)に基づいた介護福祉士候補者として約500人の応募者の中から選ばれ来日した。受け入れ施設や政府等から期待されて来日したため、長く日本で介護福祉士として働き続ける事を常に心に留めている。この10年は私の人生の中でも大きなチャレンジであったが、今では日本で介護福祉士として働くことにやりがいを感じている。後に続く外国人労働者もやりがいを持って働けるように、私がこの10年間で学んだことや困ったことについて報告する。
【目的】
 今後、増えていくと予想される外国人介護福祉士の指導や支援の参考にしてほしい。
【経緯】
2014年 1月 EPAとして選ばれ、フィリピンで日本語研修に参加
2014年 6月 来日し、横浜で日本語研修に参加
2014年12月 受け入れ施設である介護老人保健施設ケアポート白鳳に就職
2018年 3月 日本の介護福祉士国家試験に合格
2018年10月 フィリピン人男性と結婚
2019年 1月 夫が来日し一緒に生活する
2019年10月 普通自動車免許取得
2020年 4月 外国人支援室 室長に就任
 現在は入所フロアで常勤として介護業務をしながらEPA7名と特定技能1名の取りまとめをしている。
【内容】
1.利用者様とのコミュニケーション
 利用者様とのコミュニケーションは難聴があったり小さな声だったりと伝わらないことがある。そんな時は共通の話題、例えば地域にあるお店の話しをすると自分も利用したことがあるため詳細はわからなくても概要は理解できる。方言の習得は辞書もないため難しかったが、直接利用者様や同僚に聞くことで方言を学ぶことができた。私も郡上弁を喋れるようになると利用者様と親近感が持てたと実感する。言葉の理解は難しくても歌の歌詞や踊りなら理解しやすい。認知症の利用者様が不穏になっても一緒に歌を歌うことで穏やかに過ごすことができる。郡上踊りや白鳥踊りを利用者様と一緒に踊ると言葉の壁を越えて一体感を持つことができる。
2.日本語の読解と記録
 利用者様を介護する上でカルテを見て情報収集することが必要となる。手書きの文字よりもカルテに入力された文字は読み取りやすい。漢字のふりがなが表記してあるとさらに理解しやすい。記録は漢字や文法などこれで合っているのかと不安になることがあるが、同僚にチェックしてもらえると安心する。現在は電子カルテになっているので翻訳機能やチェック機能も使うことができ活用している。
3.職員とのコミュニケーション
 日本人とフィリピン人とでは、文化や習慣の違いがある。フィリピン人の多くはプライドが高く自己主張が強い。私は仕事を進める上で日本語能力以外に必要なことがあると分かった。それは「わからないことをわからないままにしない」という事である。「わかりましたか?」と尋ねられると「はい」と返事をしがちであり、「わかりません」と言うことは勇気が必要である。この解釈で合っているのかという不安もある。できれば説明を細分化して途中で確認をしてもらえるとありがたい。また現在はフィリピン人介護職員への指導もしているが、フィリピン人はプライドが高いため特有の難しさがある。日本人職員から改善してほしいことを伝えるように依頼された時にどのように伝えるのが良いのか、今後も検討を重ねていきたいと思っている。フィリピンには「フィリピノタイム」という言葉があり時間を全く気にしない一面もある。日本人では当たり前のこと、例えば遅刻をしない、勤務時間中に無断に職場を離れない、上司に適切でタイムリーな報告・連絡・相談をする、提出物の期限を守るなど、意識して守っていきたい。フィリピン人は宗教を重んじ、イベントや家族を大切にしている。出来たらプライベートで日本人の食事会などに参加できると良い。日本人同士の会話はスピードも速く略語も多いが、そばで聞いているだけでも日本語の勉強になる。
4.生活の支援
 私は結婚して夫をフィリピンから招いた。夫は日本語もわからず私以外の知り合いもいなかったが、私の職場の食事会に誘ってもらって少しずつ日本での輪が広がっている。知り合いが夫の職場を紹介してくれ仕事もしている。結婚する前、私は仕事が終わり一人でいることが寂しくストレスを感じていた。結婚して夫がそばにいることは安心感に繋がった。また郡上で生活する上で車の運転ができるようになりたいと考えた。雪の多い日の買い物が大変だったからである。上司や同僚が自動車教習所の予約の仕方を教えてくれて、車も安く譲ってもらうことができた。今では休みの日は夫や友人と日本各地をドライブすることが私の楽しみになっている。
【まとめ】
 介護福祉士として日本で働く上で、一番大切なことはコミュニケーションをとり信頼関係を築くことであると感じる。それは利用者様に対しても職員に対しても同様である。まだわからない日本語もあるけれど、わからないままにしないことで自分も成長できる。日本人職員から信頼されるためにたくさんコミュニケーションをとり、規則を守り、自分の生活を整えていきたい。仕事だけではなく生活の支援や楽しみがあることで、長く働きたいと思える。車のことや夫のことを支えてくれることがありがたい。今後も後に続く外国人労働者をサポートしながら、長く働き続けていきたいと考えている。