講演情報

[14-O-P206-04]介護実習生を迎えて実習生を迎えることで現場に与える影響

*門田 裕加1、国広 早苗1、村上 典子1 (1. 広島県 医療法人緑風会介護老人保健施設なごみ)
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日本は急激に高齢化が進み、社会全体で介護を支えあうため介護の専門職の必要性が高まっている。しかし介護職は深刻な人材不足と言われ、さらには介護士を目指す人も少ない。そのような中、当施設は介護実習生の受け入れを行う事となった。初めての事で戸惑いもあったが、現場のスタッフへ与える影響も大きく仕事に対する意識の変化や今後取り組むべき課題も見えてきた為その結果を報告する。
【はじめに】日本は急激に高齢化が進んでいる。社会全体で介護を支えあう環境を構築するため介護の専門職の必要性が高まっている。令和5年9月時点の介護福祉士の登録者数は約194万人で介護職は深刻な人材不足と言われている。さらに2025年には人口の30%、2060年には40%が高齢者になると言われており、今まで以上に深刻な介護職不足が予想される。そのような中、当施設は介護養成校より実習生の受け入れを行う事となった。初めての事で戸惑いもあったが実習生を受け入れるにあたり現場のスタッフへ与える影響も大きく仕事に対する意識の変化や今後取り組むべき課題も見えてきたため、その結果を報告する。【施設紹介】介護老人保健施設なごみは広島県呉市にある定床36床の施設です。令和6年5月時点の利用者様は69才から104歳までと幅広く、平均年齢は88歳です。【実習受け入れ準備】実習指導者研修に参加 2名 実習窓口担当者・実習指導者を配置 実習指導マニュアルを作成 実習生へのしおりを作成 実習・研修に関する誓約書と実習受け持ち同意書を作成 介護過程の勉強会の実施 自分たちの介護の振り返りを行う【実習受け入れ期間】2023年9月4日~2023年10月6日(夜勤実習を含む)【実習終了後スタッフへ意識調査実施】スタッフ全員にアンケート実施倫理的配慮としてアンケートは無記名とし個人を特定することは無い事を文面・口頭にて説明し協力を得た。【経過】1、実習期間のスケジュールに合わせて、毎日その日の実習担当者を決め、実習生が誰に相談したらよいか明確となるようにした。 実習開始時はほとんど実習担当者とマンツーマンであったが、そのうち職員側も「わからないことはないか」等、積極的に実習生に関わるようになる。2、基本的に実習生の考えを尊重した援助計画立案を元に、先ずは実習生の計画で実施し上手くいかなかった場合などは、どこをどのようにしたらよいか考えられるように助言していった。一方的な見解ではなく実習生が自分の力で考えられる働きがけを心掛けていった。3、日々の利用者の様子に合わせ援助計画立案を変更できるようにする。具体的に援助を行う際の考慮すべき点は一緒に考えていった。利用者の状態は一定ではなく、その日の状況で計画変更をすることもあるが柔軟に対応できるようになってくる。4、実習開始前に目標と支援方法を確認し、実習終了時はその日の振り返りを行う。実習担当者以外の職員からの意見も多く聞かれるようになる。5、多職種間での意見交換を行う。医師から申し出があり講義をうけてもらう。6、中間カンファレンスと実習終了後の振り返りを行う。7、スタッフへのアンケート調査を実施 【アンケート結果】 全職員が実習生を受け入れた事は有益であったと回答その理由として、実習生に恥ずかしくない介護をしたいという気持ちが質の向上につながった。実習生を通して、利用者に対する言葉使いや態度がなれ合いになっている事に気が付き反省することもあった。半数の職員からは、実習生を受け入れる事で勉強会を行い、自分たちが習っていない介護過程や記録方法を学ぶことが出来、勉強になったとの意見が聞かれた。また、実習指導の担当者を決めた事で実習の内容が分からず、どのような事を学んでいるのか分からなかったとの意見が3割を占めた。自由記載欄には、ほとんどの職員が実習生がいる事で職場が明るい雰囲気となり、いつもと違い生き生きとしていたと回答している。【考察】 当施設では介護の実習を受けることが初めての経験であった。これまで介護の人材を育成することや、今後の人材確保、利用者への刺激などを考え、実習生の受け入れを希望しており、ようやく実現した。当初は、実習生に多くの経験や学びをしてもらいたいとの思いが強く、様々な勉強会を重ね事前準備を行っていった。しかし、実習が始まると基本に忠実な実習生の取り組みから自分たちの介護について考えさせられる面も多くみられた。職員側も「自分たちの働き方を見られている」と意識する事で、接遇の改善につながり、どのように指導すべきか考える事で、自身の介護方法や施設の業務内容を見直す機会となっていったと考える。介護実習では直接利用者と関わることで、介護を必要とする人の身体的・精神的状況に留意しながら、何が必要でなるかを考え個人にあった介護技術の習得を目指していく。 実習生を迎える事で現場には以下の影響があったと考察する。1、自己の介護技術の振り返りになった。2、学生を指導することで自分自身の勉強する機会となった。3、職員間で連携や介護ケアの再確認ができた。4、利用者へ対する接遇の改善につながった。5、実習計画表の掲示や指導内容を共有することで職員間の不安の軽減や実習生の特徴や個性の理解に応じた対応につながった。そして何より職場が明るくなり活気づいているように感じられた。【おわりに】 今回、初めて実習生を受け入れてみて限られた日数ではあるが、同じ介護を行う仲間として刺激し合う事が出来たように思う。指導は実習生の自発性や可能性、個性を考慮することが大切である。今後も実習環境を整え、実習生の不安や緊張を最小限とした効果的な実習ができるようにしていきたい。当法人を学びの場としてくれた実習生たちに心から感謝したい。