講演情報
[14-O-P206-06]外国人介護職員入職後に感じた職員・利用者の変化2019年から現在までの取り組みと新たに見えた介護とは
*金久保 彩子1 (1. 北海道 グリーンコート三愛)
2019年より在留資格「介護」のベトナム人介護職員を受け入れし、現在は特定技能実習生(ベトナム)を受け入れしている。2022年全国老健大会にて「外国人介護職員入職後に感じた職員・利用者の変化」を演題発表し、2年間経過、在留資格「介護」の外国人職員の成長と現状や施設での新たな取り組みについて報告する。
【はじめに】
2022年全国老健大会にて発表した「外国人介護職員入職後に感じた職員・利用者の変化」について、その後2年間の経過と新たな取り組みを報告するとともに、外国人介護職員受け入れ事業を通じた介護観の変化についても考察する。
【経過と振り返り】
1. 外国人介護職員受け入れ体制の整備2019年から外国人介護福祉士の受け入れに向け、段階的に体制整備を進めてきた。具体的には、以下の取り組みを実施した。
>有償体験の実施: 介護業務への理解を深め、適性を評価するために、外国人介護職員候補者向けに有償体験制度を設けた。
>実習指導方法の見直し: 指導内容を明確化し指導者のスキルアップ、ルビ・イラストを用いた実習評価表の改定を行い、質の高い実習指導を提供できる体制を構築した。
>入職後の評価表改定: 外国人介護職員の習得状況や達成状況を客観的に評価することやインセンティブを意識した、介護版クリニカルラダー評価表を改定しモチベーション向上を図った。
>現職員の不安感抽出: 外国人介護職員受け入れに対する不安や懸念事項を抽出し、解消に向けた聞き取りと講習会を行った。
>職場環境の整備: 外国人介護職員が安心して働けるよう、掲示物や研修資料、業務マニュアルを曖昧な表現方法を改め再編した。(後に多言語対応を行う)
2. 課題と改善外国人介護職員受け入れ事業を進める中で、以下の課題が浮き彫りになった。
>指導者側の感覚的な指導表現: “見て覚える”指導内容が抜けきらず、明確に伝わらなかったり、実践している介助に対し統一した説明が欠けていた。
>日本語能力不足: 日本語能力が十分でない外国人介護職員は、利用者とのコミュニケーションや介護記録の作成などに支障をきたす場合があった。
>重度介護者の介助に難航:体格の違いから全介助者や過体重の利用者の介助技術習得に困難をきたしていた。
これらの課題を克服するために、以下の取り組みを実施した。
感覚的表現と根拠のある介助指導: 指導者間で指導状況の情報共有を密に行い介助に対し言語化を意識させることで、指導の質を向上させた。
介護技術・日本語能力向上支援: 2名介助の推奨や実践的な技術講習を増やし、外国人ミーティングでアセスメントの共有や不明言語の解決を図った。
【その後の経過】
2023年には行事活動や認知症対応講義等、一線で活躍している外国人介護職員がいる一方で5名の外国人介護福祉士がライフイベントや首都近郊への転職を理由として退職し、地方部としての課題が浮き彫りとなった。2024年度には新たに特定技能介護職員5名を雇用し、体制の一新を図った。
1. 介護版クリニカルラダーレベル0-A~Cの作成まず、介護版クリニカルラダーレベル0の準備段階として、ABCと区分けした基礎的介護業務と日本語教育のラダー表(以下特定技能用ラダー評価表)を新たに作成した。
2. 指導体制の構築指導者としてラダーレベル2~3相当の外国人介護福祉士を配置し、介護業務と日本語教育を3ヶ月のプログラムとして実施した。
3. 個別指導とスキルアップ入職した5名は初任者研修受講者であるも、介護技術の実践には課題があったため、特定技能用ラダー評価表を用いて習得状況や達成状況を共有し、個々の得手不得手を可視化することで、一定の介護スキルの底上げを図った。
4. 利用者アセスメント教育日本語能力不足による利用者アセスメントへの教育が難しい場面も見られたため、LIFEのうち自立支援促進に関する評価・支援計画書と科学的介護推進に関する評価の入力項目のうち、当事業所の介護過程で使用しているアセスメントツールを一部改変し教育ツールとして用いた。(この詳細は、本大会で演題発表を行う予定である)
【考察】
2022年発表時点では、主に在留資格「介護」という、ある一定の介護・日本語スキルを持っている外国人介護職員に向け取り組みを行ってきたが、そこから2年が経過し、現在は特定技能介護の外国人介護職員を対象とした教育に変化してきた。
2019年より教育プログラムを始め、職員や利用者の受入れに向けた準備を行ってきた成果として、今年度の特定技能介護職員の受入れには大きな支障もなく円滑に進めることが出来たと感じている。また、在留資格「介護」の外国人介護福祉士2名は、指導者としては未経験でありながらも、十分なスキルを持って指導者として業務に入ることが出来たのは、主観や偏りがない客観的な目線でいかにして、介助技術を言語化し伝えるかを検討と実践を繰り返し、教育プログラムを事業所内で根気強く浸透させてきた事が、大きな要因ではないかと推察する。
【今後の課題】
2019年から取り組んできた、外国人介護職員の受入れに関しては、事業所として目標達成の区切りは出来たものと評価する一方、今後は「受け入れる側」から「選ばれる側」という時勢の変化に対応していくことが喫緊の課題であると体感的に感じている。しかし、多様化する介護人材のニーズを把握しその解決を図るにはまだまだ歴史が浅く、その対応が手探り状態であることは否めない現状もある。
地方都市の事業所として、この多様化社会と労働生産性人口減少が止められない現状で、施設運営への難題をどう解決していくかは今後の課題として取り組んでいきたいと思う。
2022年全国老健大会にて発表した「外国人介護職員入職後に感じた職員・利用者の変化」について、その後2年間の経過と新たな取り組みを報告するとともに、外国人介護職員受け入れ事業を通じた介護観の変化についても考察する。
【経過と振り返り】
1. 外国人介護職員受け入れ体制の整備2019年から外国人介護福祉士の受け入れに向け、段階的に体制整備を進めてきた。具体的には、以下の取り組みを実施した。
>有償体験の実施: 介護業務への理解を深め、適性を評価するために、外国人介護職員候補者向けに有償体験制度を設けた。
>実習指導方法の見直し: 指導内容を明確化し指導者のスキルアップ、ルビ・イラストを用いた実習評価表の改定を行い、質の高い実習指導を提供できる体制を構築した。
>入職後の評価表改定: 外国人介護職員の習得状況や達成状況を客観的に評価することやインセンティブを意識した、介護版クリニカルラダー評価表を改定しモチベーション向上を図った。
>現職員の不安感抽出: 外国人介護職員受け入れに対する不安や懸念事項を抽出し、解消に向けた聞き取りと講習会を行った。
>職場環境の整備: 外国人介護職員が安心して働けるよう、掲示物や研修資料、業務マニュアルを曖昧な表現方法を改め再編した。(後に多言語対応を行う)
2. 課題と改善外国人介護職員受け入れ事業を進める中で、以下の課題が浮き彫りになった。
>指導者側の感覚的な指導表現: “見て覚える”指導内容が抜けきらず、明確に伝わらなかったり、実践している介助に対し統一した説明が欠けていた。
>日本語能力不足: 日本語能力が十分でない外国人介護職員は、利用者とのコミュニケーションや介護記録の作成などに支障をきたす場合があった。
>重度介護者の介助に難航:体格の違いから全介助者や過体重の利用者の介助技術習得に困難をきたしていた。
これらの課題を克服するために、以下の取り組みを実施した。
感覚的表現と根拠のある介助指導: 指導者間で指導状況の情報共有を密に行い介助に対し言語化を意識させることで、指導の質を向上させた。
介護技術・日本語能力向上支援: 2名介助の推奨や実践的な技術講習を増やし、外国人ミーティングでアセスメントの共有や不明言語の解決を図った。
【その後の経過】
2023年には行事活動や認知症対応講義等、一線で活躍している外国人介護職員がいる一方で5名の外国人介護福祉士がライフイベントや首都近郊への転職を理由として退職し、地方部としての課題が浮き彫りとなった。2024年度には新たに特定技能介護職員5名を雇用し、体制の一新を図った。
1. 介護版クリニカルラダーレベル0-A~Cの作成まず、介護版クリニカルラダーレベル0の準備段階として、ABCと区分けした基礎的介護業務と日本語教育のラダー表(以下特定技能用ラダー評価表)を新たに作成した。
2. 指導体制の構築指導者としてラダーレベル2~3相当の外国人介護福祉士を配置し、介護業務と日本語教育を3ヶ月のプログラムとして実施した。
3. 個別指導とスキルアップ入職した5名は初任者研修受講者であるも、介護技術の実践には課題があったため、特定技能用ラダー評価表を用いて習得状況や達成状況を共有し、個々の得手不得手を可視化することで、一定の介護スキルの底上げを図った。
4. 利用者アセスメント教育日本語能力不足による利用者アセスメントへの教育が難しい場面も見られたため、LIFEのうち自立支援促進に関する評価・支援計画書と科学的介護推進に関する評価の入力項目のうち、当事業所の介護過程で使用しているアセスメントツールを一部改変し教育ツールとして用いた。(この詳細は、本大会で演題発表を行う予定である)
【考察】
2022年発表時点では、主に在留資格「介護」という、ある一定の介護・日本語スキルを持っている外国人介護職員に向け取り組みを行ってきたが、そこから2年が経過し、現在は特定技能介護の外国人介護職員を対象とした教育に変化してきた。
2019年より教育プログラムを始め、職員や利用者の受入れに向けた準備を行ってきた成果として、今年度の特定技能介護職員の受入れには大きな支障もなく円滑に進めることが出来たと感じている。また、在留資格「介護」の外国人介護福祉士2名は、指導者としては未経験でありながらも、十分なスキルを持って指導者として業務に入ることが出来たのは、主観や偏りがない客観的な目線でいかにして、介助技術を言語化し伝えるかを検討と実践を繰り返し、教育プログラムを事業所内で根気強く浸透させてきた事が、大きな要因ではないかと推察する。
【今後の課題】
2019年から取り組んできた、外国人介護職員の受入れに関しては、事業所として目標達成の区切りは出来たものと評価する一方、今後は「受け入れる側」から「選ばれる側」という時勢の変化に対応していくことが喫緊の課題であると体感的に感じている。しかし、多様化する介護人材のニーズを把握しその解決を図るにはまだまだ歴史が浅く、その対応が手探り状態であることは否めない現状もある。
地方都市の事業所として、この多様化社会と労働生産性人口減少が止められない現状で、施設運営への難題をどう解決していくかは今後の課題として取り組んでいきたいと思う。