講演情報
[14-O-J002-01]食事療法により傾眠状態が改善したケースチームアプローチの重要性
*葛西 孝哉1、吉田 真知子1、佐藤 敦子1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設ハートケア松岡)
入所後、反応が鈍く日常生活上で問題化していた利用者様に対し、多職種で観察評価、意見交換を実施し傾眠状態が改善したため報告する。情報共有を行い適切な評価を実施。嚥下機能は正常、一口量の問題と評価。血液検査により低カリウムが判明した。その為、安全かつ栄養豊富なバナナを選定、付加した結果、覚醒時間が増加した。多職種連携により継続可能な方法を執ることができたと考える。
【はじめに】
高齢になるにつれて消化機能の低下や食欲不振が現れます。また食べられていても体内のバランスが崩れ下痢や嘔吐など体調を崩すこともあります。また無症候性脳梗塞、薬の副作用、認知症、不良姿勢など利用者様ごとに様相は異なり、様々な職種での見守りや対策が求められるようになってきました。今回は栄養療法により覚醒状態が改善したケースをご報告いたします。
【対象】
H様 90歳 要介護4 主病名:右上腕骨骨折 食形態:全粥・超刻み菜(嚥下調整食2-2)
【経過とケア内容】
R5年12月15日 当施設入所。前入所施設退所前にさつま芋の甘煮(常食)で窒息し吸引対応
〈入所時〉座位が崩れやすく、クッションを用いて座位保持を実施。傾眠傾向が見られ、声掛けに対して反応が鈍い。座位姿勢のまま眠ってしまうことがあり、日常生活上で問題となっていた。また下痢が見られ、下剤の減量を実施した。入所後すぐに窒息が見られ、注意が必要な状態であった。リスクが高い状態の為、嚥下機能の評価の為に内視鏡検査(VE)を実施。気管への侵入は見られず、嚥下反射も正常。義歯の利用もなく自歯のみで咀嚼も十分行うことができる。咽頭内残留物は全く見られず、舌の動作も良好。一口量が多いために窒息した可能性が高いと評価を受けた。
〈1か月後〉VEの結果を踏まえ、一口量を一定に保つようにスプーンをST、管理栄養士とともに選定。本人様が自己摂取しやすいよう介助食器で提供し、促しても自己摂取が難しい場合は介護士が統一した方法で食事介助を行った。窒息や誤嚥はその後1度も見られず、下痢は改善されたものの傾眠状態が進行し、覚醒が慢性的に悪い状態が続いていた。
〈2か月後〉看護師の提案で血液検査を実施。カリウムの値が低く、傾眠に関与している疑いが浮上。本人様の拒否なく継続摂取でき、かつ栄養価の高いバナナを管理栄養士が選定し、毎食提供した。ミールラウンドを管理栄養士・STで適宜行い、介護士とともに経過観察を行った。
【結果】
VE結果や血液検査の結果からチームでのアプローチを実施し、栄養療法の実施、その後のモニタリングを継続することができた。その後本人様は自己摂取は難しいものの傾眠状態は改善し日常生活上でも覚醒できる時間が大幅に増加した。
【まとめ・考察】
通常はリスクを恐れ入院時や前入所施設の食事形態及び介助方法を遵守しがちだが、今回の利用者様のように施設内で各職種がそれぞれ問題に気づくことで確実な評価やケア及び支援に繋がり、覚醒状態の改善や食事形態のアップ、栄養状態の改善など良い結果に繋がった。そのことにより、継続的に多職種が連携することの意義と重要性を実感することができた。今後も継続してチーム連携と情報共有を行うことで良いサービスを提供できるように努めたい。
高齢になるにつれて消化機能の低下や食欲不振が現れます。また食べられていても体内のバランスが崩れ下痢や嘔吐など体調を崩すこともあります。また無症候性脳梗塞、薬の副作用、認知症、不良姿勢など利用者様ごとに様相は異なり、様々な職種での見守りや対策が求められるようになってきました。今回は栄養療法により覚醒状態が改善したケースをご報告いたします。
【対象】
H様 90歳 要介護4 主病名:右上腕骨骨折 食形態:全粥・超刻み菜(嚥下調整食2-2)
【経過とケア内容】
R5年12月15日 当施設入所。前入所施設退所前にさつま芋の甘煮(常食)で窒息し吸引対応
〈入所時〉座位が崩れやすく、クッションを用いて座位保持を実施。傾眠傾向が見られ、声掛けに対して反応が鈍い。座位姿勢のまま眠ってしまうことがあり、日常生活上で問題となっていた。また下痢が見られ、下剤の減量を実施した。入所後すぐに窒息が見られ、注意が必要な状態であった。リスクが高い状態の為、嚥下機能の評価の為に内視鏡検査(VE)を実施。気管への侵入は見られず、嚥下反射も正常。義歯の利用もなく自歯のみで咀嚼も十分行うことができる。咽頭内残留物は全く見られず、舌の動作も良好。一口量が多いために窒息した可能性が高いと評価を受けた。
〈1か月後〉VEの結果を踏まえ、一口量を一定に保つようにスプーンをST、管理栄養士とともに選定。本人様が自己摂取しやすいよう介助食器で提供し、促しても自己摂取が難しい場合は介護士が統一した方法で食事介助を行った。窒息や誤嚥はその後1度も見られず、下痢は改善されたものの傾眠状態が進行し、覚醒が慢性的に悪い状態が続いていた。
〈2か月後〉看護師の提案で血液検査を実施。カリウムの値が低く、傾眠に関与している疑いが浮上。本人様の拒否なく継続摂取でき、かつ栄養価の高いバナナを管理栄養士が選定し、毎食提供した。ミールラウンドを管理栄養士・STで適宜行い、介護士とともに経過観察を行った。
【結果】
VE結果や血液検査の結果からチームでのアプローチを実施し、栄養療法の実施、その後のモニタリングを継続することができた。その後本人様は自己摂取は難しいものの傾眠状態は改善し日常生活上でも覚醒できる時間が大幅に増加した。
【まとめ・考察】
通常はリスクを恐れ入院時や前入所施設の食事形態及び介助方法を遵守しがちだが、今回の利用者様のように施設内で各職種がそれぞれ問題に気づくことで確実な評価やケア及び支援に繋がり、覚醒状態の改善や食事形態のアップ、栄養状態の改善など良い結果に繋がった。そのことにより、継続的に多職種が連携することの意義と重要性を実感することができた。今後も継続してチーム連携と情報共有を行うことで良いサービスを提供できるように努めたい。