講演情報
[14-O-J002-05]多職種で取り組む「新食形態」の導入
*夏虫 文輝1 (1. 岐阜県 高山赤十字介護老人保健施設はなさと)
当施設の食形態の一つ「超きざみ菜」はペースト菜に近い状態のもので、本来の利用者の摂食・嚥下機能に適した物ではなかった。「もう少し形がある食事でも食べられるのに…。」そんな現場の声を聞き、言語聴覚士、摂食・嚥下障害看護認定看護師介入のもと、利用者に適した食形態の導入を目指した。
【はじめに】
当施設の食形態は利用者の摂食・嚥下状態に合わせ、「並菜」「きざみ菜」「超きざみ菜」「ソフト食」の4つに分類し食事を提供している。今回はその中の「超きざみ菜」の問題について多職種で改善に向け取り組みを行ったのでここに報告する。
【目的】
地域の急性期病院(以下病院)との食形態の乖離を改善し、在宅復帰に向け、利用者の摂食・嚥下機能の維持向上につなげる。
【経緯】
当施設の超きざみ菜(嚥下調整食コード3)は、ペースト菜(嚥下調整食コード2-2)と形状が類似している。
病院の付帯施設として、退院後リハビリ継続目的で当施設を利用される方が多くみられるが、病院での食形態が超きざみ菜だった場合、当施設ではペースト菜と類似した食形態で提供することになる。
本来在宅復帰を目的としている介護老人保健施設(以下老健)にとって、利用者が摂取できるはずの食形態から、下げたもので提供するということは、在宅での利用者家族の負担が増えることにつながり、さらには、利用者の摂食・嚥下機能の低下をまねく恐れがある。
さらに、当施設のスタッフからも病院との食形態の違いに違和感を持っている方が多数みられ、長年の問題であることが分かった。
【取り組みの実際】
取り組み1,実際に管理栄養士が試作品を作り当施設のスタッフ、そして病院の摂食・嚥下障害看護認定看護師に確認してもらい、新しい超きざみ菜(以下新超きざみ菜)の形状、目的の方向性を共有した。
取り組み2,病院の言語聴覚士(以下ST)に現在の超きざみ菜の形状の把握をしてもらった。そして、新超きざみ菜の試作品A(食材の粒が小さめ)、試作品B(食材の粒が大きめ)の2種類作り選定してもらった。
超きざみ菜を食べてみえる利用者は咀嚼をせず、食事を丸飲みされる方もみえる。その為、どちらの試作品が丸飲みしても問題ないか、食材の粒の大きさ、口の中でうまくまとまるか、という点で選定をしてもらい、試作品Bを目標に進めてくことが決まった。
取り組み3,厨房スタッフに対し方向性の共有と新超きざみ菜の作り方の指導を行った。
厨房スタッフは給食委託会社の従業員の為、当施設の食形態の問題を知らなかった。その為当施設の方向性を説明し、新超きざみ菜の必要性を理解してもらった。
そして、管理栄養士が厨房の責任者と協力し、厨房スタッフへ作り方の指導を行った。
さらに、新超きざみ菜を作る為の練習期間を1ヶ月間設け、導入に向け取り組んでもらった。
【結果】
摂食・嚥下障害看護認定看護師の介入のもと、当施設で超きざみ菜を食べて見える方を対象に、新超きざみ菜を食べていただいた。
対象者の嚥下、ムセの有無、口腔内残渣等の状況を確認してもらい、問題なく摂取できることがわかり、現状の超きざみを新超きざみ菜へと改善することができた。
【考察】
「超きざみ菜」の形状が長年の問題とされていたが、今回改善に至った理由としては、新超きざみ菜の導入が厨房スタッフにとってハードルが低かったことにあると考えられる。
今までの改善の提案としては、既存の食形態に新しい食形態を追加するというものだった。この方法では作業工程が増え、厨房スタッフの負担が増すことになる。さらには、給食業界の人手不足の中スタッフを増やさなければならず、給食委託会社からも承認が得られなかった。
それと比べ新超きざみ菜は既存の食形態の作り方を改善するだけのものとなり、負担も少なく、人手も増やさなくても良いところが、大きな要因と考えられた。
さらに、摂食・嚥下障害看護認定看護師やST の介入により、利用者にとって一番大切な安全面を確保した取り組みが行えたことが改善につながったと考えられる。
【課題】
今回の食形態の改善は、利用者が在宅復帰する際の食事指導に生かすことが大切だと考えている。ペースト状の食事はミキサーでしか作ることができない。新超きざみ菜も作る際はミキサーを使用するが、食材を包丁で刻んだり、手でほぐすなどの応用可能な食材のサイズ感である。この食形態をもとに、利用者家族が在宅で調理に困らないような指導や、資料などを作成し、在宅復帰への手助けになることが今後の課題になると考えている。
【おわりに】
当施設は病院の付帯施設であるため、双方のスタッフで問題解決に向けて取り組みやすい環境にある。この強みを最大に活用できるよう連携していき、利用者の摂食・嚥下、栄養状態の改善へつなげていくことが重要であると考えている。
当施設の食形態は利用者の摂食・嚥下状態に合わせ、「並菜」「きざみ菜」「超きざみ菜」「ソフト食」の4つに分類し食事を提供している。今回はその中の「超きざみ菜」の問題について多職種で改善に向け取り組みを行ったのでここに報告する。
【目的】
地域の急性期病院(以下病院)との食形態の乖離を改善し、在宅復帰に向け、利用者の摂食・嚥下機能の維持向上につなげる。
【経緯】
当施設の超きざみ菜(嚥下調整食コード3)は、ペースト菜(嚥下調整食コード2-2)と形状が類似している。
病院の付帯施設として、退院後リハビリ継続目的で当施設を利用される方が多くみられるが、病院での食形態が超きざみ菜だった場合、当施設ではペースト菜と類似した食形態で提供することになる。
本来在宅復帰を目的としている介護老人保健施設(以下老健)にとって、利用者が摂取できるはずの食形態から、下げたもので提供するということは、在宅での利用者家族の負担が増えることにつながり、さらには、利用者の摂食・嚥下機能の低下をまねく恐れがある。
さらに、当施設のスタッフからも病院との食形態の違いに違和感を持っている方が多数みられ、長年の問題であることが分かった。
【取り組みの実際】
取り組み1,実際に管理栄養士が試作品を作り当施設のスタッフ、そして病院の摂食・嚥下障害看護認定看護師に確認してもらい、新しい超きざみ菜(以下新超きざみ菜)の形状、目的の方向性を共有した。
取り組み2,病院の言語聴覚士(以下ST)に現在の超きざみ菜の形状の把握をしてもらった。そして、新超きざみ菜の試作品A(食材の粒が小さめ)、試作品B(食材の粒が大きめ)の2種類作り選定してもらった。
超きざみ菜を食べてみえる利用者は咀嚼をせず、食事を丸飲みされる方もみえる。その為、どちらの試作品が丸飲みしても問題ないか、食材の粒の大きさ、口の中でうまくまとまるか、という点で選定をしてもらい、試作品Bを目標に進めてくことが決まった。
取り組み3,厨房スタッフに対し方向性の共有と新超きざみ菜の作り方の指導を行った。
厨房スタッフは給食委託会社の従業員の為、当施設の食形態の問題を知らなかった。その為当施設の方向性を説明し、新超きざみ菜の必要性を理解してもらった。
そして、管理栄養士が厨房の責任者と協力し、厨房スタッフへ作り方の指導を行った。
さらに、新超きざみ菜を作る為の練習期間を1ヶ月間設け、導入に向け取り組んでもらった。
【結果】
摂食・嚥下障害看護認定看護師の介入のもと、当施設で超きざみ菜を食べて見える方を対象に、新超きざみ菜を食べていただいた。
対象者の嚥下、ムセの有無、口腔内残渣等の状況を確認してもらい、問題なく摂取できることがわかり、現状の超きざみを新超きざみ菜へと改善することができた。
【考察】
「超きざみ菜」の形状が長年の問題とされていたが、今回改善に至った理由としては、新超きざみ菜の導入が厨房スタッフにとってハードルが低かったことにあると考えられる。
今までの改善の提案としては、既存の食形態に新しい食形態を追加するというものだった。この方法では作業工程が増え、厨房スタッフの負担が増すことになる。さらには、給食業界の人手不足の中スタッフを増やさなければならず、給食委託会社からも承認が得られなかった。
それと比べ新超きざみ菜は既存の食形態の作り方を改善するだけのものとなり、負担も少なく、人手も増やさなくても良いところが、大きな要因と考えられた。
さらに、摂食・嚥下障害看護認定看護師やST の介入により、利用者にとって一番大切な安全面を確保した取り組みが行えたことが改善につながったと考えられる。
【課題】
今回の食形態の改善は、利用者が在宅復帰する際の食事指導に生かすことが大切だと考えている。ペースト状の食事はミキサーでしか作ることができない。新超きざみ菜も作る際はミキサーを使用するが、食材を包丁で刻んだり、手でほぐすなどの応用可能な食材のサイズ感である。この食形態をもとに、利用者家族が在宅で調理に困らないような指導や、資料などを作成し、在宅復帰への手助けになることが今後の課題になると考えている。
【おわりに】
当施設は病院の付帯施設であるため、双方のスタッフで問題解決に向けて取り組みやすい環境にある。この強みを最大に活用できるよう連携していき、利用者の摂食・嚥下、栄養状態の改善へつなげていくことが重要であると考えている。