講演情報

[14-O-J003-02]グループホームとの連携と今後の課題~よりよい食支援に繋げるために~

*寺尾 香織1、大脇  万喜1、川崎 友義1 (1. 鹿児島県 介護老人保健施設愛と結の街)
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グループホームの入所者は年々高齢化、重度化し、摂食嚥下障害があり食支援が必要な方が増加している。食支援をグループホームのスタッフを中心に、管理栄養士や言語聴覚士など多職種で行えるよう施設内SNSを活用しての相談やアドバイス、摂食嚥下に関する勉強会などを実施した。施設内SNSを活用することで連携の機会が増え、食支援に繋がったと考えられたため報告した。
【はじめに】
 グループホーム愛と結の街(以下GH)の入所者は年々重度化、高齢化してきている。認知症や脳血管障害などの疾患があり摂食嚥下障害を呈している方が増加し、スタッフの食支援が必要な方が入所者の約6~7割を占めている現状がある。
 介護老人保健施設愛と結の街(以下老健)では、以前から言語聴覚士(以下ST)が訪問しGHでの摂食嚥下機能評価やアドバイスなどを行ってきた。しかし、コロナ禍での感染対策や老健内の業務の関係で定期的な評価、連携の機会が不十分となっていた。認知症による摂食嚥下機能障害は原因疾患により症状が異なり、進行がみられるため、日頃からケアを行っているGHスタッフを中心に、STだけでなく管理栄養士など多職種で連携を図りながらよりよい食支援が行えることを目標に活動を始めたため報告する。
【実施内容】
 (1)定期的な訪問の実施、(2)施設内SNS(Mattermost)でGHスタッフと老健の管理栄養士、理学療法士(以下PT)とSTのチャンネルを作成、(3)施設内SNSを利用し自主訓練方法などのアドバイス、(4)GHで提供している食事形態に関しての情報収集、(5)栄養科スタッフへ状況の共有、(6)管理栄養士からのアドバイスの共有、(7)摂食嚥下機能ついての勉強会、(8)KTバランスチャート導入の検討などを実施。
【結果】
 施設内SNSでのチャンネル作成前はGHからの直接的な評価依頼や相談は少なかったが、チャンネル作成後は約半年で入所者に関する相談7件、食事形態や調理に関する相談・報告4 件があった。訪問した際にも相談があり、以前より相談や情報共有の機会は増加した。また、情報共有の機会が増えたことで積極的に栄養科とも連携を取ることができ、GHスタッフへ調理方法についてのアドバイスの共有、食品の変更など支援内容の拡大に繋がった。
 食支援を行うための知識の共有として摂食嚥下の基本的な流れや嚥下調整食についての勉強会、新たな評価方法の導入の検討のためにスクリーニング検査やKTバランスチャートについての勉強会・説明会を実施した。勉強会を実施することで知識の共有、相談の機会を作ることができた。
【考察・まとめ】
 GHと老健互いの業務が多忙な中、施設内SNSを活用し、相談を行える環境作りを行ったことで業務の合間に評価の依頼や情報共有のみだけでなく、アドバイスや自主訓練の提供ができ連携の機会を増やすことに繋がったと考える。情報共有の機会が増えることで、実際の摂食嚥下機能評価の際も入所者の情報収集を行いやすく、その後のアドバイスに活用することができた。しかし、認知症による摂食嚥下障害は原因疾患によって食行動の変化や認知症の進行により摂食嚥下機能に変化がみられる。GHでの評価の際もSTの評価時と普段の摂食嚥下機能が異なることもあった。そこでST以外の職種でも評価を行うことができ、GHなどでも支援に活用できる評価方法についての検討を行った。
 KTバランスチャートは、心身の医学的視点、摂食嚥下の機能的視点、姿勢・活動的視点、摂食状況・食物形態・栄養的視点の4つの側面を13項目で評価し、レーダーチャートを作成できる。点数が低い項目の必要なケアの充実を図りステップアップできる方法を多職種で検討する手段に使用できるだけでなく、多職種でも全体像の把握や変化の共有、本人・家族への説明などの情報共有にも役立つとされている。このような評価方法を活用し認知症のある入所者の全体像把握や現状の共有に役立てることができれば、より充実した評価や支援が行えると考える。
 施設内SNSの使用の継続やKTバランスチャートなどの摂食嚥下機能の評価方法の導入、活用を行いながら、GHスタッフを中心に愛と結の街グループの強みである“多職種での支援”をより活かせるような環境作りを継続していきたい。また、現在、生活機能向上連携加算は老健PTを中心にGHと連携し算定している。今後、高齢化が進む中で摂食嚥下機能の低下がみられる入所者が増加し、更に支援が必要になると考えられる。そのため、今回のGHとの連携のように他の愛と結の街グループ内の関連施設でも生活機能向上連携加算も活用し、連携ができるように取り組んでいきたい。
【参考引用文献】
小林珠美:口から食べる幸せをサポートする包括的スキル KTバランスチャートの活用と支援第2版、医学書院