講演情報

[14-O-J003-03]残食量0を目指して食事に関する要因調査結果から

*平腰 朱梨1、山崎 琴音1、萩の脇 由夫2 (1. 岐阜県 介護老人保健施設それいゆ、2. 株式会社エームサービス)
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喫食率向上に向けて行った要因調査の結果、食嗜好性と残食率の間には相関関係は見られなかったが、残食率が多い日のみを抽出した場合、わずかに負の相関が認められた。また、所要時間と残食率の間には、わずかに負の相関が認められたため、好みの食材や調理方法で献立を作成することや、食事時間を十分に取ることが喫食率向上に繋がることが示唆された。今後、その他の知見も踏まえ、より良い食事提供に努めていきたい。
はじめに
今年度改定で「リハビリテーション・口腔・栄養の一体的取り組み」が重視される等、経口摂取率の向上は老健においても健康づくり上の課題であるが、施設の食事が全量摂取を前提とした栄養価計算に基づくことを鑑みると、喫食率の向上も同時に取り組むべき課題の一つである。まして、食事それ自体がQOLに直結する3大欲求のひとつであり、高齢者の心身の健康管理上、極めて重要な意味を持つと考えられるため、我々は食事提供に関する要因調査を行い、残食量0に向けた取り組みを開始している。よって、今回その一連のプロセスを、若干の考察を加えて以下に報告する。

調査の目的
喫食率の変化を表す残食量に影響すると思われる本体要因と環境要因の関連性を調べ、得られた知見を食事提供へ反映させることで、喫食率向上を通じて利用者の栄養状態の改善を図る。なお、今回は本体要因として、「提供された食事が食嗜好調査結果に沿っているかどうか」を、環境要因として、「気温・所要時間・マンパワー」を想定した。

調査期間と方法・内容
調査は令和5年6月5日~7月30日の間で、次の方法・内容で行った。1)昼食の残食総重量の実測値を喫食数で割ることで、1食あたりの平均残食率を算出。2)定期実施の食嗜好調査の結果から、施設利用者の食嗜好性を数値化。3)気温は気象庁HPから対象期間中の施設所在地のデータを引用。4)所要時間は、各療養棟の下膳終了時刻から配膳開始時刻を引くことで計測。5)マンパワーは、各療養棟で提供・介助・見守りに携わった職員数を実測。6)前述の1)と2)、また1)と3)・4)・5)の相関関係をExcelでそれぞれ解析することで、喫食率に影響する要因と傾向を分析した。

結果と考察
1)常食(1500kcal/日)を基準として算出すると、残食率が多い日のみの抽出での未摂取カロリーは平均178kcal/日、少ない日のみでは未摂取カロリーは37kcal/日であり、栄養価計算上想定されたカロリー摂取は不完全であることが示唆された。2)本体要因である食嗜好性と残食率の間には相関関係は見られなかったが、残食率が多い日のみを抽出した場合、わずかに負の相関が認められた。よって、好みの食材や調理方法で献立を作成することが喫食率向上に繋がることが示唆された。なお、嗜好調査の聴取基準そのものがデータ処理を想定した作りとなっていなかったことから、今年度からはデータ処理を前提とした嗜好調査票に改めた。3)気温やマンパワーと残食率の間には相関関係は見られなかった。4)所要時間と残食率の間には、わずかに負の相関が認められた。よって、食事に要する時間を十分に取ることが喫食率向上に繋がることが示唆された。

おわりに
残食量の減少は利用者側へのメリットのみでなく、施設側のコスト削減といった効果ももたらしてくれる。今回得られた結果に関しては昨年度中に食事委員会内で共有し、利用者が食事時間をゆっくりと過ごせるような雰囲気づくりの重要性を職員に意識づけると共に、新しい嗜好調査票の調査結果と残食量の関係についても、令和6年度食事委員会として改めて検証中であるが、今後もより質の高い栄養ケアマネジメントを通じた施設サービスの向上に努めていきたい。