講演情報
[14-O-J003-06]家でもおいしく食べたいじゃん~持ち帰り弁当で在宅を支援~
*堀内 沙織1、中嶌 千里1、渡辺 佳代1 (1. 山梨県 介護老人保健施設 峡西老人保健センター)
近年、高齢夫婦世帯の増加に伴い、高齢介護者も増えている。介護サービスを利用することでフォローはできるものの、栄養・形状に配慮した食事作り・摂取介助が負担となり、在宅復帰に躊躇するケースが見られるようになった。そのため費用コストを抑え、ご本人も介護者も安心安全に自宅で食事が摂れるよう、『持ち帰り弁当』のサービスを検討・提供。栄養課も在宅復帰支援の一翼を担っている。
【目的】摂食嚥下障害の利用者が自宅での食事に困り、低栄養や誤嚥性肺炎を惹起してしまうといった現状がある。また、栄養に配慮した嚥下食を自宅で調理し、摂取介助をしなければならないことも、介護者の負担・不安につながっている。自宅での低栄養・誤嚥のリスク低減と、介護者の負担軽減ができれば自宅で安心・安全に過ごすことができるのではないか、また、在宅復帰が進むのではないかと考えた。給食運営が直営の当施設という特性を生かし、『持ち帰り弁当』実現に向けた取り組みをここに報告する。
【方法】当施設において『持ち帰り弁当』が実現可能であるか、情報収集し、法人と協議する。決定次第、提供方法や内容の検討(容器や備品、価格設定、衛生管理等)を進める。並行して在宅支援に必要な栄養指導の資料を作成する。
【取り組み】
1.情報収集 : 在宅復帰した通所利用者を対象とした嚥下食の持ち帰りをメインに置き、情報収集を実施。保健所の他、関係機関・部署に問い合わせる。結果、嚥下食の持ち帰りは飲食店営業に該当すること、図面や必要書類を作成し、飲食店営業許可の取得や届出を行えば実現可能であることが確認できた。しかし、法人との交渉は思いのほか難航した。『安全第一』を最優先する法人とは、食中毒防止策について協議を何度も重ねることとなり、日数を費やすことになった。最終的には、在宅支援の一助になるとの見解で決裁され、営業許可の取得に向けて着手した。
2.資料作成 : 嚥下状態にあった食形態がわからない、市販品は何を選べばよいかわからない等の介護者の声から、個人にあった食形態や市販品が選択できるよう、説明を加えた食事形態表や嚥下調整食分類表を作成した。
3.提供方法や内容の検討 : スムーズに始められるよう実際の動きを想定し、電子レンジを使用した嚥下食の温め時間の検証や、メニュー表の作成、容器の検討や調理工程の確認等、事前の準備を行った。また、利用を促すためにチラシを作成した。
4.注文・提供方法について多職種会議開催 : 多職種の視点から、使い捨て容器、持ち運びバッグ等の備品を検討。また、食券・同意書の作成、送迎時の確認、時間管理等、注文から提供までの手順を実用重視し決定した。また、通所スタッフに対し衛生管理研修を実施した。
【結果】飲食店営業許可を保健所に申請。書類審査の他、実地調査を受け承認される。使い捨て容器、持ち運びバッグ等の必要な備品を揃えた。また、それぞれの家庭環境・介護者の力量に合わせた資料を作成し、栄養相談を実施。STによる摂食介助指導を実施。介護実習等により介護者の不安の軽減につながり、安全に摂食介助が行えた。
『持ち帰り弁当』は、(1)介護者の負担軽減 (2)状態にあった食事提供による誤嚥・低栄養のリスク回避 (3)誤嚥性肺炎による入院リスクの低減、(4)在宅復帰への後押しと在宅生活の延長、などさまざまな効果が期待できることを確認。施設側も継続的な利用の確保に繋がる。これまで高齢介護者のため、自宅に訪問し、調理実習を実施し市販品等を提案してきた。その中、入所・在宅の反復利用者のために検討を始めたが、今回、きっかけとなった通所利用者は、法人との交渉が長引く中、在宅で誤嚥性肺炎を発症。胃瘻となってしまった。しかし、今後の在宅支援には有用であると、プロジェクトは継続され、令和5年9月から開始となった。『持ち帰り弁当』はこれまで延べ7人が利用。このうち、5人は『持ち帰り弁当』により、在宅復帰が可能となった。家族による調理、市販品の活用、一部を市販品で付加、など方法はさまざまであり、本人・介護者・家族の状況を判断し、最適なものを提案している。『持ち帰り弁当』はその選択肢を広げ、介護者の負担・不安の軽減に役立っている。今後は、在宅生活で食事が課題となっている利用者と介護者の手助けを行い、在宅支援を広げていきたい。
【考察】山梨県においては、平成13年をピークに人口は減少に転じ、高齢化率は令和5年には31.3%と全国平均を上回っている。高齢者世帯・高齢者単独世帯も増加しており、高齢介護者も増えている。嚥下障害のある方が、低栄養や誤嚥性肺炎のリスクを低減しながら、最期まで安全に食事を楽しむため、嚥下食調整用食品や市販品なども多く出回るようになってきた。しかし高齢介護者にとって、嚥下状態に合った形態、一度に食べる適量、などを決めることは難儀であり、何より購入できる場所が少ないなど、食事が原因で在宅復帰を諦めてしまうこともあった。衛生管理についても、施設内での提供以上に食中毒防止への安全対策が必要となる。安心安全な食事の提供を継続するためには、調理員だけでなく、関わるスタッフにまで拡大した衛生管理研修を実施・継続することが重要となる。適切な本人の嚥下状態の把握、介護者の力量、インフォーマルを含めたサポート体制、リハビリ、地域の特色、などを総合的に判断し、トータルで適切な支援を提案できることが、専門性ある多職種が揃う老健の持ち味でもある。その意味でも、老健が『持ち帰り弁当』を提供する意義は大きいと思われる。制度改正により自立支援・重度化防止を効果的に進めていく上での、リハビリ・機能訓練、口腔、栄養の一体的取り組みが評価された。制度云々ではなく、一人でも多くの高齢者が、最期まで口から食べる楽しみを味わいながら、元気に健やかに在宅生活が継続できるよう、今後も創意工夫していきたい。
【方法】当施設において『持ち帰り弁当』が実現可能であるか、情報収集し、法人と協議する。決定次第、提供方法や内容の検討(容器や備品、価格設定、衛生管理等)を進める。並行して在宅支援に必要な栄養指導の資料を作成する。
【取り組み】
1.情報収集 : 在宅復帰した通所利用者を対象とした嚥下食の持ち帰りをメインに置き、情報収集を実施。保健所の他、関係機関・部署に問い合わせる。結果、嚥下食の持ち帰りは飲食店営業に該当すること、図面や必要書類を作成し、飲食店営業許可の取得や届出を行えば実現可能であることが確認できた。しかし、法人との交渉は思いのほか難航した。『安全第一』を最優先する法人とは、食中毒防止策について協議を何度も重ねることとなり、日数を費やすことになった。最終的には、在宅支援の一助になるとの見解で決裁され、営業許可の取得に向けて着手した。
2.資料作成 : 嚥下状態にあった食形態がわからない、市販品は何を選べばよいかわからない等の介護者の声から、個人にあった食形態や市販品が選択できるよう、説明を加えた食事形態表や嚥下調整食分類表を作成した。
3.提供方法や内容の検討 : スムーズに始められるよう実際の動きを想定し、電子レンジを使用した嚥下食の温め時間の検証や、メニュー表の作成、容器の検討や調理工程の確認等、事前の準備を行った。また、利用を促すためにチラシを作成した。
4.注文・提供方法について多職種会議開催 : 多職種の視点から、使い捨て容器、持ち運びバッグ等の備品を検討。また、食券・同意書の作成、送迎時の確認、時間管理等、注文から提供までの手順を実用重視し決定した。また、通所スタッフに対し衛生管理研修を実施した。
【結果】飲食店営業許可を保健所に申請。書類審査の他、実地調査を受け承認される。使い捨て容器、持ち運びバッグ等の必要な備品を揃えた。また、それぞれの家庭環境・介護者の力量に合わせた資料を作成し、栄養相談を実施。STによる摂食介助指導を実施。介護実習等により介護者の不安の軽減につながり、安全に摂食介助が行えた。
『持ち帰り弁当』は、(1)介護者の負担軽減 (2)状態にあった食事提供による誤嚥・低栄養のリスク回避 (3)誤嚥性肺炎による入院リスクの低減、(4)在宅復帰への後押しと在宅生活の延長、などさまざまな効果が期待できることを確認。施設側も継続的な利用の確保に繋がる。これまで高齢介護者のため、自宅に訪問し、調理実習を実施し市販品等を提案してきた。その中、入所・在宅の反復利用者のために検討を始めたが、今回、きっかけとなった通所利用者は、法人との交渉が長引く中、在宅で誤嚥性肺炎を発症。胃瘻となってしまった。しかし、今後の在宅支援には有用であると、プロジェクトは継続され、令和5年9月から開始となった。『持ち帰り弁当』はこれまで延べ7人が利用。このうち、5人は『持ち帰り弁当』により、在宅復帰が可能となった。家族による調理、市販品の活用、一部を市販品で付加、など方法はさまざまであり、本人・介護者・家族の状況を判断し、最適なものを提案している。『持ち帰り弁当』はその選択肢を広げ、介護者の負担・不安の軽減に役立っている。今後は、在宅生活で食事が課題となっている利用者と介護者の手助けを行い、在宅支援を広げていきたい。
【考察】山梨県においては、平成13年をピークに人口は減少に転じ、高齢化率は令和5年には31.3%と全国平均を上回っている。高齢者世帯・高齢者単独世帯も増加しており、高齢介護者も増えている。嚥下障害のある方が、低栄養や誤嚥性肺炎のリスクを低減しながら、最期まで安全に食事を楽しむため、嚥下食調整用食品や市販品なども多く出回るようになってきた。しかし高齢介護者にとって、嚥下状態に合った形態、一度に食べる適量、などを決めることは難儀であり、何より購入できる場所が少ないなど、食事が原因で在宅復帰を諦めてしまうこともあった。衛生管理についても、施設内での提供以上に食中毒防止への安全対策が必要となる。安心安全な食事の提供を継続するためには、調理員だけでなく、関わるスタッフにまで拡大した衛生管理研修を実施・継続することが重要となる。適切な本人の嚥下状態の把握、介護者の力量、インフォーマルを含めたサポート体制、リハビリ、地域の特色、などを総合的に判断し、トータルで適切な支援を提案できることが、専門性ある多職種が揃う老健の持ち味でもある。その意味でも、老健が『持ち帰り弁当』を提供する意義は大きいと思われる。制度改正により自立支援・重度化防止を効果的に進めていく上での、リハビリ・機能訓練、口腔、栄養の一体的取り組みが評価された。制度云々ではなく、一人でも多くの高齢者が、最期まで口から食べる楽しみを味わいながら、元気に健やかに在宅生活が継続できるよう、今後も創意工夫していきたい。