講演情報
[14-P-L002-04]お金にならない仕事?~付帯業務と適正取得単位の調査
*竹村 育郎1 (1. 岐阜県 松波総合病院 介護老人保健施設)
リハ部門の管理職を務めるに当たって、適切な取得単位数についての把握が必須であったため、一定期間を設けて調査を行ったので報告をする。スタッフの業務時間のうち、利益を生まない業務(付帯業務)を2群に分け、内訳を分析した。その結果、避けられない付帯業務が一定数存在することが確認できた。この調査では付帯業務の定数が判明しただけではあるが、働き方を調整するための貴重なデータを取ることができた。
【目的】
当老人保健施設での管理職を務めるにあたって、取得単位(実績)についての調査・把握が必須であった。
リハビリ業務は出来高であり、利用者・患者様に対して、指定された行為を一定の時間を費やすこと(以下実単位と称す)によって診療報酬が発生する。それ以外の時間は「付帯業務」とされ、リハビリ業務以外の業務(各種書類、委員会活動、カンファレンス、レク参加等)が分類される。この付帯業務は、診療報酬に直結しないもので、それはつまり組織に対して直接的な利益のない業務内容である。
リハビリ業務に直結する「付帯業務」について、以下に記す。
病院勤務と比較すると、老人保健施設(以下老健)での単位取得の上限が異なる。
当施設は超強化型老健であるため、「充実したリハビリの要件」が課せられる。これは、少なくとも1日20分程度、週3回以上のリハビリテーションを実施していること、と明記されている。さらに入所から3ヶ月以内は短期の加算により、合計週180分まで算定が可能となっている。とはいえ、これは回復期リハビリテーション病棟における1~2日程度にしか相当しない時間である。
1回の介入が20分しか取れない中で、どのような検査測定を行い、治療訓練を行えるのか、また行うべきなのか。例えば血圧、脈拍、酸素飽和度、心音、呼吸音、呼吸数の測定、手部足部皮膚トラブル等確認などの検査測定を行う。例えば物理療法、運動療法、動作訓練を行う。これらを全項目、丁寧に行ったとして、20分で問題なくできるのだろうか。医療機関ではないため、医療的な検査測定は必要ないという意見もあるかもしれないが、我々の相手は高齢者であり、ほぼ全員が多重の既往歴を有している。したがって治療・運動・訓練前の検査は省略することはできない、もしくは簡易的なもので行わざるを得ない。そのうえでの治療・運動・訓練に、効果を発揮させるための十分な時間がとれるのか。
法令的には、時間を超過してはならない、との記載はないため、現状は一部の利用者様に対しては20分以上の治療・訓練の超過時間が発生している。
さて、その他の付帯業務の要因として、老健は生活の場であることが挙げられる。病院のように、治療や生命の維持に注力する場所では、患者は自身の身辺に気を配れない=余裕がない状態である。対して老健等施設では身の回りのことや自分の生き方について考える余裕が生まれ、それが欲求=訴えとなる。訴えの内容によっては、リハビリスタッフによる対応が最適である場合もあり、これが避けられない付帯業務となっている。
これらの付帯業務の種類や時間を分析し、管理職として適切な業務調整と指示出しをすることを目的とし、今回の調査を行う運びとなった。
【方法】
まずは付帯業務を分類し、その内容によって「直接的付帯業務」「間接的付帯業務」と便宜的に名付けた。
直接的付帯業務とは、「付帯業務において、特定の患者・利用者に接したり、またその身の回りの事を整えたりする業務」と定義した。
間接的付帯業務とは、「付帯業務において、患者・利用者に直接関係のない業務、もしくは、全ておよび不特定多数の患者・利用者が対象として当てはまる業務」と定義した。
その上でリハビリスタッフに対し、(1)付帯業務に関するアンケートと、(2)付帯業務内訳の申告を行ってもらった。(1)に関しては付帯業務の内訳や傾向を特定する目的で行い、(2)に関しては実際に付帯業務に携わる時間を知る目的で行った。各付帯業務の内訳や、使用したツール・用紙はポスターをご参照いただきたい。
【結果】
数値として可視化した結果、直接的付帯業務は1.5単位/日と判明した。これはつまり、1日に約1~2単位(すなわち20分~40分)は、リハビリ業務以外で特定の利用者のために費やす時間が存在することを示している。
また、間接的付帯業務の内訳で多くを占めたのは、カルテ記載・サマリー作成・リハ計画書作成などの文書作成業務であった。
【考察】
当機関でのリハビリ部門において、1日あたりの合計取得単位数(実単位数と付帯業務単位数の合計)は18~20単位が推奨されている。この数値に当てはめてスタッフの費やすべき時間を算出した。
(1)直接的付帯業務は1~2単位/日である。
(2)直接的付帯業務を除いた、1日の推奨取得単位は、16~18単位となる。
(3)間接的付帯業務は3単位/日程度が好ましいため、上記(2)から除いた数値は13~15単位となる。(4)上記(3)の数値が、実単位数として妥当であることが算出された。
つまり、当老健におけるリハビリ業務は、実単位業務以外に単位請求ができない付帯業務があり、それは4~5単位(80分~100分)に上ると推測される。ただし、人員配置、稼働率、その他要因によって数値は変化すると予想される。
【総括と問題点】
〇調査期間が短い(約1年半)。→今後も継続して調査していく。
〇全体的な業務体系を把握するためには、この数値だけでは有用性がない。そのため、残業時間等も併せて調査すべきである。
〇付帯業務は『免罪符』ではない。実単位取得ありきの付帯業務であり、診療報酬取得が最優先であることを忘れてはならない。
当老人保健施設での管理職を務めるにあたって、取得単位(実績)についての調査・把握が必須であった。
リハビリ業務は出来高であり、利用者・患者様に対して、指定された行為を一定の時間を費やすこと(以下実単位と称す)によって診療報酬が発生する。それ以外の時間は「付帯業務」とされ、リハビリ業務以外の業務(各種書類、委員会活動、カンファレンス、レク参加等)が分類される。この付帯業務は、診療報酬に直結しないもので、それはつまり組織に対して直接的な利益のない業務内容である。
リハビリ業務に直結する「付帯業務」について、以下に記す。
病院勤務と比較すると、老人保健施設(以下老健)での単位取得の上限が異なる。
当施設は超強化型老健であるため、「充実したリハビリの要件」が課せられる。これは、少なくとも1日20分程度、週3回以上のリハビリテーションを実施していること、と明記されている。さらに入所から3ヶ月以内は短期の加算により、合計週180分まで算定が可能となっている。とはいえ、これは回復期リハビリテーション病棟における1~2日程度にしか相当しない時間である。
1回の介入が20分しか取れない中で、どのような検査測定を行い、治療訓練を行えるのか、また行うべきなのか。例えば血圧、脈拍、酸素飽和度、心音、呼吸音、呼吸数の測定、手部足部皮膚トラブル等確認などの検査測定を行う。例えば物理療法、運動療法、動作訓練を行う。これらを全項目、丁寧に行ったとして、20分で問題なくできるのだろうか。医療機関ではないため、医療的な検査測定は必要ないという意見もあるかもしれないが、我々の相手は高齢者であり、ほぼ全員が多重の既往歴を有している。したがって治療・運動・訓練前の検査は省略することはできない、もしくは簡易的なもので行わざるを得ない。そのうえでの治療・運動・訓練に、効果を発揮させるための十分な時間がとれるのか。
法令的には、時間を超過してはならない、との記載はないため、現状は一部の利用者様に対しては20分以上の治療・訓練の超過時間が発生している。
さて、その他の付帯業務の要因として、老健は生活の場であることが挙げられる。病院のように、治療や生命の維持に注力する場所では、患者は自身の身辺に気を配れない=余裕がない状態である。対して老健等施設では身の回りのことや自分の生き方について考える余裕が生まれ、それが欲求=訴えとなる。訴えの内容によっては、リハビリスタッフによる対応が最適である場合もあり、これが避けられない付帯業務となっている。
これらの付帯業務の種類や時間を分析し、管理職として適切な業務調整と指示出しをすることを目的とし、今回の調査を行う運びとなった。
【方法】
まずは付帯業務を分類し、その内容によって「直接的付帯業務」「間接的付帯業務」と便宜的に名付けた。
直接的付帯業務とは、「付帯業務において、特定の患者・利用者に接したり、またその身の回りの事を整えたりする業務」と定義した。
間接的付帯業務とは、「付帯業務において、患者・利用者に直接関係のない業務、もしくは、全ておよび不特定多数の患者・利用者が対象として当てはまる業務」と定義した。
その上でリハビリスタッフに対し、(1)付帯業務に関するアンケートと、(2)付帯業務内訳の申告を行ってもらった。(1)に関しては付帯業務の内訳や傾向を特定する目的で行い、(2)に関しては実際に付帯業務に携わる時間を知る目的で行った。各付帯業務の内訳や、使用したツール・用紙はポスターをご参照いただきたい。
【結果】
数値として可視化した結果、直接的付帯業務は1.5単位/日と判明した。これはつまり、1日に約1~2単位(すなわち20分~40分)は、リハビリ業務以外で特定の利用者のために費やす時間が存在することを示している。
また、間接的付帯業務の内訳で多くを占めたのは、カルテ記載・サマリー作成・リハ計画書作成などの文書作成業務であった。
【考察】
当機関でのリハビリ部門において、1日あたりの合計取得単位数(実単位数と付帯業務単位数の合計)は18~20単位が推奨されている。この数値に当てはめてスタッフの費やすべき時間を算出した。
(1)直接的付帯業務は1~2単位/日である。
(2)直接的付帯業務を除いた、1日の推奨取得単位は、16~18単位となる。
(3)間接的付帯業務は3単位/日程度が好ましいため、上記(2)から除いた数値は13~15単位となる。(4)上記(3)の数値が、実単位数として妥当であることが算出された。
つまり、当老健におけるリハビリ業務は、実単位業務以外に単位請求ができない付帯業務があり、それは4~5単位(80分~100分)に上ると推測される。ただし、人員配置、稼働率、その他要因によって数値は変化すると予想される。
【総括と問題点】
〇調査期間が短い(約1年半)。→今後も継続して調査していく。
〇全体的な業務体系を把握するためには、この数値だけでは有用性がない。そのため、残業時間等も併せて調査すべきである。
〇付帯業務は『免罪符』ではない。実単位取得ありきの付帯業務であり、診療報酬取得が最優先であることを忘れてはならない。