講演情報

[14-P-L002-05]再入所の利用希望の観点を探る~在宅復帰後の運動機能の変化は関係するのか~

*浅川 義堂1、島袋  盛一1、平光 亮介1、小島 美穂子1、馬渕 愛子1、河合  璃保1 (1. 岐阜県 医療法人社団 友愛会 介護老人保健施設 山県グリーンポート)
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介護老人保健施設の再入所を検討している症例に対し、在宅復帰後の運動機能の変化は再利用希望の観点に関係するのか調査した。退所時と在宅生活3か月経過時点の身体機能を評価。評価結果を利用者本人・キーパーソンに伝えアンケート調査を実施し、初回入所時の利用希望と比較した。在宅復帰後に身体機能の向上を認知してもらうが、再入所の利用希望の観点には課題が残った。
【はじめに】
多岐にわたる疾患を抱える要介護者は、介護老人保健施設への入退所を繰り返す事例が少なくない。厚労省のデータによれば2025年(令和7年)には施設利用者数は179万人と推移され、2040年(令和22年)には238万人と示唆されている。今後、増えると予測される施設利用者が在住する地域では入所待機の状態となり、過疎化が進行する地域では施設利用者が少ない状況になる介護老人保健施設がでてくるとの報告もされている。
当施設は「岐阜県過疎地域持続的発展方針」の中で「一部の地域が過疎地域の指定を受けている市町村」に含まれている。先行研究の様に施設利用者の少ない傾向に向かうことが予測され、再入所者したい要介護者の掬い上げが課題になると考えている。
本発表の目的は今回の症例を通して再入所の利用希望の観点を掘り下げることで、同様に近い身体機能・環境因子の症例が再入所を決定するための参考要件になることとした。
【対象・方法】
症例は、パーキンソン病・小児ポリオを背景に要介護度3を認定、キーパーソンと共に在宅生活を行っていた。今回が初めての介護老人保健施設入所であり、入所を決めるにあたり重視したい点を本人・キーパーソンは悩んでいた。入所時に入所を決めた決定因子調べるためにアンケート調査を実施。次に在宅復帰3か月後に理学療法評価を行いその結果を本人・キーパーソンに説明し、再度アンケート調査を実施した。
アンケート内容は、「介護サービスの利用理由」、「利用の決定人」、「当施設を選定した理由」「再入所時に重視する点」を大項目、その中の小項目を選択する方法で実施した。回答者本人・キーパーソンのMMSE(Mini Mental State Examination)は30点であり認知症の診断はなく、アンケート内容の質問の理解に支障がないものとした。
【個人情報の取り扱いと利益相反】
本発表はヘルシンキ宣言に基づき,対象者に症例報告の趣旨を説明し同意を得た。今回の演題に開示すべきCOIはない。
【結果】
退所時と在宅復帰3ヶ月経過時点での理学療法評価を比較した結果は、非麻痺側において大腿周経+2.5cm、下腿周経+2cm、Push up筋力+6.0kgf(計測にはモービィーMT-110を使用)、3回の立ち上がり速度-10.08秒短縮となり身体機能の向上が認められた。
アンケート結果は、入所時に「リハビリテーションがある」、「リハビリテーションの充実と効果を感じる」を選択。在宅復帰3ヶ月経過後は、「リハビリテーションがある」のみを選択。「リハビリテーションの充実と効果を感じる」は選択されなかった。本人・キーパーソンともに「もう一度利用する時に重視したい点」で選択したのは「具体的な介護の内容」、「介護職員の技能の習熟度」、「介護職員の人柄」、「本人と家族とのコミュニケーション支援」であった。
【考察】
今回、在宅復帰後に運動機能が向上した変化が再入所の利用希望の観点に関係することはなかった。入所時と退所3ヶ月経過後共に「当施設を選定した理由」で「リハビリテーションがある」が選択された要因は、単に介護老人保健施設でリハビリテーションが受けられる環境であることが考えられる。退所3ヶ月経過後に「もう一度利用する時に重視したい点」で「リハビリテーションの充実と効果を感じる」が選択されなかったのは、リハビリテーションの満足度が満たされなかったと考える反面、リハビリテーションには満足しているため重視したい点を他のサービス内容に変換した可能性も考えられる。
運動機能の向上がそのまま再入所の利用希望の観点に直結する期待値を込めたが、同様の項目を選択されなかったことでリハビリテーションサービスの性質を視覚化することが非常に難しい課題であると感じた。
今回は入所利用時のアンケートで「リハビリテーション」を含んだ項目を選択されたため、運動機能の変化に注目し再入所の利用希望の観点との関係性を調査した。再入所の利用希望の観点は様々である。今後も症例を重ね、より多面的に再入所の利用希望の観点を探っていき、施設利用者の見込みが少ない地域でも再入所を希望する要介護者を掬い上げ、再入所を繰り返しながらも自分自身が望む在宅生活を長く行える支援が重要と考える。