講演情報
[15-O-E001-06]早く施設に慣れて頂くために取り組んだこと
*河野 優花1、寺尾 絵里香1、臼井 美賀代1、中尾 芳奈1 (1. 兵庫県 介護老人保健施設ハイムゾンネ宝寿苑)
新規利用者が施設で過ごしやすい環境を、少しでも早く提供するにはどうすれば良いか、また受け持ちとしての関わりが増える方法は無いかと考えた。新規利用者に1ヶ月間平日に3分間のコミュニケーション(日常会話・嗜好・要望・生活歴・内面等)を実施、内容を記録し実施後職員にアンケートを行った。アンケート内容から利用者が早期に施設に慣れることができ、職員と利用者の信頼関係を深めることができたので報告する。
<はじめに>
当苑では看介護、リハビリと受け持ち制を実施している。職員達は、新規利用者や受け持ち利用者との密な関わりができていないと感じていた。業務に追われ、新規利用者とゆっくり話が出来ない状態が続いていた。そこで早く施設に慣れてもらう為に新規利用者に、看・介護・リハビリ職で1ヶ月間3分間のコミュニケーションを行い、内容をカルテに記入し、情報を共有することにした。活動後、職員にアンケートを取り、職員の気持ちや利用者の表情に変化が見られたのでここに報告する。
<方法>
・看護、介護、リハビリ職員が、3分間にセットしたキッチンタイマーを用いて、新規利用者1人に対し3分のコミュニケーションを毎日(平日のみ)1ヶ月間行う。
・対象者はR6年1月~5月まで、初めて当苑を利用する新規利用者、男性14名、女性11名 計25名
(要介護1:4名 要介護2:2名 要介護3:2名 要介護4:11名 要介護5:6名)
・日常会話・嗜好・要望・生活歴等を聞き出した情報は専用の用紙に、その日のうちに記載する。
・新規利用者の増加に伴い職員の負担を軽減させる為、相談員・施設ケアマネージャー・栄養士も加える。
・活動後に職員50名に対し意識調査アンケートを実施した。
<アンケート内容>
4個の設問(1.利用者の笑顔が増えた2.問題点又は新しい一面を発見できた3.業務が円滑になった4.担当者としての自覚が増した)を設定「(1)そう思う (2)少し思う (3)そう思わない」の3つから1つを選び比較した。また活動に対する意見( 職員が良かった事・困った事・利用者に良かった事など)を記入。
<アンケート結果>
設問の中で、「問1.利用者の笑顔が増えた」が(1)22% (2)56% (3)22%「問2.問題点又は新しい一面を発見できた」が(1)50% (2)40% (3)10%「問3.業務が円滑になった」が(1)12% (2)46% (3)42%「問4.担当者としての自覚が増した」が(1)42% (2)52% (3)6%となった。
(職員が良かった事)
・信頼関係ができ介助しやすくなった。
・知らない情報を共有出来て良かった。
・利用者の不安を取り除き、安心してもらえ笑顔が増えた。
・利用者を知ることで、日々の関わりに活かせるようになった。
・利用者と会話する苦手意識が減った。
・会話の回数が多くなるほど、円滑に話ができるようになった。
・利用者の新しい一面を知ることができ、コミュニケーションがとりやすくなった。
・コミュニケーションが難しそうな利用者の声を聞くことで、色々なことを知ることができた。
・利用者の喜ばれることは何かを考えるようになった。
(困った事)
・最初タイマーを持ち、利用者に話しかけるのは違和感があった。
・時間的余裕が無い、記録に残す時間が無かった。
・話題が少ない人や、興味が限定している人に対しては、話題に困った。
・認知症の利用者は毎回同じ話になった。
・他の利用者が見ているところで会話をすることに気を遣った。
・利用者が話し出すと止まらなくなり、切り上げるタイミングが難しかった。
・苦手な利用者に、3分間話しかけるのは辛かった。
・会話が途中で途切れてしまい、何を話そうか困った。
<利用者に良かったと感じた事>
・以前より施設に早く慣れてくれていると感じた。
・テレビが好きで自室でテレビを見たいという利用者の自室にすぐテレビを設置する対応ができた。
・野球好きなどの話が聞かれたら、好きな野球チームの試合が負けた・勝った話で盛り上がった。
・ご飯の量を増やして欲しい・減らしてほしいと言われた時はすぐに対応できた。
・会話内容を娘様に報告すると、とても喜ばれた。
・みんなが声をかけてくれる、良くしてもらっていると言われた。
・外窓を見ているので、見やすくなるようにベッドをあげて話かけると、景色が変わると非常に喜ばれた。
・難聴のためコミュニケーションが筆談の利用者に対し、毎日筆談で話す機会を持ったことで、この施設が一番いいと言われた。
・コミュニケーションの少ない利用者が少しでも興味のもつ内容や反応を職員で共有できた。
<考察>
・特記事項や病気につながることを主に看護・介護記録として残していたが、日常会話や生活歴・内面・思い等は、あまり記録していなかった。それらを職員間で共有したことは、利用者を深く知ることができ、利用者の施設に対する安心や満足に繋がったと思われる。
・あえて少し長い会話時間を強制的にとることで、利用者をよく観察し、職員自身が会話する努力を行った。そのことが、職員自身の会話技術の向上にもつながったと思われる。
・努力しなければ会話を引き出せない利用者に対しては、治療やケアのみで終わることが多い。話す時間をとり、声掛けによる反応や表情を読みとって情報を共有することで、安心安楽なケアができたと思われる。
<まとめ>
・入所1か月間3分間のコミュニケーションを行うことで、遠慮がちな新規利用者の不安を軽減し、笑顔が増えたと感じた。利用者の新たな一面がみえ、日々の関わりに活かせ、信頼関係を深めることができた。94%の職員が、担当者としての自覚が増した。
・利用者との会話の内容などを家人に報告することができた。家族の知らない一面や家族への思いなども伝えることができ、家族の驚きや喜ばれる姿を見ることができた。
・コミュニケーションの少ない・取りづらい利用者に根気よく接することで、言葉が増えたこと、表情が良くなったことを経験し、関わりの大切さを知ることができた。
<おわりに>
利用者に安心・安楽に過ごしていただくために、今後もコミュニケーションを大事にしていきたい。
当苑では看介護、リハビリと受け持ち制を実施している。職員達は、新規利用者や受け持ち利用者との密な関わりができていないと感じていた。業務に追われ、新規利用者とゆっくり話が出来ない状態が続いていた。そこで早く施設に慣れてもらう為に新規利用者に、看・介護・リハビリ職で1ヶ月間3分間のコミュニケーションを行い、内容をカルテに記入し、情報を共有することにした。活動後、職員にアンケートを取り、職員の気持ちや利用者の表情に変化が見られたのでここに報告する。
<方法>
・看護、介護、リハビリ職員が、3分間にセットしたキッチンタイマーを用いて、新規利用者1人に対し3分のコミュニケーションを毎日(平日のみ)1ヶ月間行う。
・対象者はR6年1月~5月まで、初めて当苑を利用する新規利用者、男性14名、女性11名 計25名
(要介護1:4名 要介護2:2名 要介護3:2名 要介護4:11名 要介護5:6名)
・日常会話・嗜好・要望・生活歴等を聞き出した情報は専用の用紙に、その日のうちに記載する。
・新規利用者の増加に伴い職員の負担を軽減させる為、相談員・施設ケアマネージャー・栄養士も加える。
・活動後に職員50名に対し意識調査アンケートを実施した。
<アンケート内容>
4個の設問(1.利用者の笑顔が増えた2.問題点又は新しい一面を発見できた3.業務が円滑になった4.担当者としての自覚が増した)を設定「(1)そう思う (2)少し思う (3)そう思わない」の3つから1つを選び比較した。また活動に対する意見( 職員が良かった事・困った事・利用者に良かった事など)を記入。
<アンケート結果>
設問の中で、「問1.利用者の笑顔が増えた」が(1)22% (2)56% (3)22%「問2.問題点又は新しい一面を発見できた」が(1)50% (2)40% (3)10%「問3.業務が円滑になった」が(1)12% (2)46% (3)42%「問4.担当者としての自覚が増した」が(1)42% (2)52% (3)6%となった。
(職員が良かった事)
・信頼関係ができ介助しやすくなった。
・知らない情報を共有出来て良かった。
・利用者の不安を取り除き、安心してもらえ笑顔が増えた。
・利用者を知ることで、日々の関わりに活かせるようになった。
・利用者と会話する苦手意識が減った。
・会話の回数が多くなるほど、円滑に話ができるようになった。
・利用者の新しい一面を知ることができ、コミュニケーションがとりやすくなった。
・コミュニケーションが難しそうな利用者の声を聞くことで、色々なことを知ることができた。
・利用者の喜ばれることは何かを考えるようになった。
(困った事)
・最初タイマーを持ち、利用者に話しかけるのは違和感があった。
・時間的余裕が無い、記録に残す時間が無かった。
・話題が少ない人や、興味が限定している人に対しては、話題に困った。
・認知症の利用者は毎回同じ話になった。
・他の利用者が見ているところで会話をすることに気を遣った。
・利用者が話し出すと止まらなくなり、切り上げるタイミングが難しかった。
・苦手な利用者に、3分間話しかけるのは辛かった。
・会話が途中で途切れてしまい、何を話そうか困った。
<利用者に良かったと感じた事>
・以前より施設に早く慣れてくれていると感じた。
・テレビが好きで自室でテレビを見たいという利用者の自室にすぐテレビを設置する対応ができた。
・野球好きなどの話が聞かれたら、好きな野球チームの試合が負けた・勝った話で盛り上がった。
・ご飯の量を増やして欲しい・減らしてほしいと言われた時はすぐに対応できた。
・会話内容を娘様に報告すると、とても喜ばれた。
・みんなが声をかけてくれる、良くしてもらっていると言われた。
・外窓を見ているので、見やすくなるようにベッドをあげて話かけると、景色が変わると非常に喜ばれた。
・難聴のためコミュニケーションが筆談の利用者に対し、毎日筆談で話す機会を持ったことで、この施設が一番いいと言われた。
・コミュニケーションの少ない利用者が少しでも興味のもつ内容や反応を職員で共有できた。
<考察>
・特記事項や病気につながることを主に看護・介護記録として残していたが、日常会話や生活歴・内面・思い等は、あまり記録していなかった。それらを職員間で共有したことは、利用者を深く知ることができ、利用者の施設に対する安心や満足に繋がったと思われる。
・あえて少し長い会話時間を強制的にとることで、利用者をよく観察し、職員自身が会話する努力を行った。そのことが、職員自身の会話技術の向上にもつながったと思われる。
・努力しなければ会話を引き出せない利用者に対しては、治療やケアのみで終わることが多い。話す時間をとり、声掛けによる反応や表情を読みとって情報を共有することで、安心安楽なケアができたと思われる。
<まとめ>
・入所1か月間3分間のコミュニケーションを行うことで、遠慮がちな新規利用者の不安を軽減し、笑顔が増えたと感じた。利用者の新たな一面がみえ、日々の関わりに活かせ、信頼関係を深めることができた。94%の職員が、担当者としての自覚が増した。
・利用者との会話の内容などを家人に報告することができた。家族の知らない一面や家族への思いなども伝えることができ、家族の驚きや喜ばれる姿を見ることができた。
・コミュニケーションの少ない・取りづらい利用者に根気よく接することで、言葉が増えたこと、表情が良くなったことを経験し、関わりの大切さを知ることができた。
<おわりに>
利用者に安心・安楽に過ごしていただくために、今後もコミュニケーションを大事にしていきたい。