講演情報

[15-O-E001-07]インカムでつなぐ職員の和情報共有は新時代へ

*三浦 進也1 (1. 鳥取県 介護老人保健施設なんぶ幸朋苑)
PDFダウンロードPDFダウンロード
なんぶ幸朋苑では令和5年3月よりインカムを導入した。新たなコミュニケーションツール、情報共有の方法として活用していく中で「業務効率向上」と「コミュニケーション促進」をチームの目標として進めた。その取り組んだ過程と結果、今後の課題を報告する。
1.はじめに
研究対象チームの課題として、コミュニケーション不足から意見が言えない、否定される、挑戦意欲の低さ等がある。
なんぶ老健では2023年3月よりインカム+ほのぼのトーク(専用アプリ)を導入したが有効活用ができていなかった。
「日本の組織では、(1)話しやすさ、(2)助け合い、(3)挑戦、(4)新規歓迎の4つの因子があるとき、心理的安全性が感じられる」と述べられている。
心理的安全性の(1)~(3)の因子に着目し、インカムを新たなコミュニケーションツールとして活用し、職員の会話機会が増えるための取り組みを行ったので報告する。
2.研究概要
○対象施設
・介護老人保健施設 寿チーム 
利用者27名(2ユニット)
多床室5、個室7 
・職員数 13名(新人3、特定技能1)
○方法、日程
(1)インカム使用時間調査
・期間:2023年8月25日~10月31日
・時間:7時~21時
1週間毎に使用状況を集約し職員に伝達
(2)まずは使ってみる
・使用するメリットをチーム職員に伝達
・定着までチームミーティングで使用を勧める。
(3)コミュニケーションの促進
●課題:コミュニケーション不足
●原因:動線が長い、職員不足、教育人数が多いことで職員1名の負担が増える。1人で考え行動する時間が増えると息抜きができない、誰かに頼らない状態になり信頼関係が築けない。それらによる情報伝達ミスもみられていた。
●取り組み:職員の共有話題作り
心理テストゲーム…職員同士が自然にコミュニケーションをとれ、楽しみながら同じことを共有できる。
職員が話す機会を意図して作り、他者の考えを聞き、自分の意見や考えが話せる場(練習)を作る。
(4)インカム課題アンケートの実施(12月)
(5)チーム内のインカム使用ルール決定
・アンケートを基に明確なルールを決める
・ルールを掲示し運用を開始
結果
(1)(2)調査結果
調査開始時は不慣れ、抵抗感もあり数名の職員のみが使用。数名の職員が使用しても十分な伝達ができずインカムの効果は得られていなかった。
インカム使用を促し、音声、文字どちらでもいいのでまず使ってもらい慣れてもらった。使用者が増えることで効果を実感できるようになり使用時間も比例して増えた。
(3)コミュニケーション
心理テストによる性格診断、血液型による性格診断を実施。掲示板に問題や結果を貼り出し出勤時や休憩時間に見てもらうことで、共通の会話時間が生まれた。チームの取り組みとして行うことで、職員に参加意識を持ってもらいながら、ゲーム感覚で話せ、息抜きにもなり楽しい雰囲気でお互いの事を話せる場となった。互いの事を話せるようになる事で、今まで遠慮して声を掛け難かった場面でも相手に気を遣いながらも声掛けができる関係性ができつつある。
(4)アンケート結果(集計)     
(5)インカム使用ルール 図4
ルールを決めることで遠慮せず使用できるようになり職員の不安の解消にも繋がった。効果は、報連相がすぐにでき、伝達忘れの減少。複数人に伝えられることで一人の職員の記憶に頼る必要がなくなった。無駄な移動や待つ時間の減少、業務の分散化ができた。新人も先輩職員のやりとりを聞けることで仕事の流れを把握でき、コミュニケーションも図りやすくなった。
考察
心理的安全性では「互いにアイデアを生み出す。ともに問題に取り組む。ともに目標やゴールに向かうという活動があってチームになる」と考えられている。
インカムを使用することは今までと違い複数人と会話ができ、チームで動いているという一体感と安心感が生まれた。
今回の取り組みで会話や協力意識が持てるようになり職員の精神的負担が軽減された。これにより「話せる、助け合える」雰囲気ができ、繋がりの「和」を感じられるようになったと考える。
新しい取り組みを、「やってみた」ことで得られた効果は成功体験となり、今後の挑戦意欲の向上に繋がっていくと考えられる。
まとめ
今後は効率化によりできた時間の活用、職員の教育ツールとしての活用をすすめる。心理的安全性を高めるための取り組みも更に展開し、日常的に使われる言葉の行動分析からチーム学習を繰り返し行う。チームとしての職員のパフォーマンスを向上させ質の高いケアに繋げていきたい。
【引用文献】
1)心理的安全性のつくりかた