講演情報

[28-O-J008-02]再加熱カート導入による給食業務の効率化と今後の課題ニュークックチル方式における実践報告と検討

熊本県 福丸 美咲, 平田 利美, 山田 和彦, 岡部 彩妃, 立津 梨恵 (介護老人保健施設 リバーサイド御薬園)
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はじめに
 介護老人保健施設リバーサイド御薬園(熊本県南部・1992年開設 入所定員80名、通所定員65名)では、施設の老朽化や利用者の高齢化・重度化・ニーズの多様化、人手不足などの課題を背景に、2024年度から施設全体の大規模リニューアルを実施しました。リニューアルの主な内容は、共用スペースや浴室の改修、最新の介護機器の導入、厨房機能の刷新など多岐にわたります。その中でも、利用者の生活に直結する「食」に関するサービス向上を目的とし、給食業務の効率化と質的向上を目指した取り組みとして、再加熱カートの導入とニュークックチル方式への転換、それ合わせた厨房のリニューアル、清掃用ロボットの導入を行いました。本発表では、リバーサイド御薬園におけるリニューアル全体の流れの中で特に給食業務の変革に着目し、導入経過と現時点での成果・課題を具体的に報告します。
導入の経緯と方法
 従来は厨房内で調理から盛付けまでを全て行うクックサーブ方式であったが、早朝勤務や残業の多発、業務負担の偏りが問題となっていた。その後、セントラルキッチンのおけるクックチル、真空調理の導入、一部再加熱キャビネットの整備等行ったが、課題は残ったままだった。そこで、厨房のリニューアルを行うとともに、小回りがきき、盛り付けトレイセッティング済みの状態でチルド保管・食直前の再加熱そのまま配膳可能な再加熱カートを導入し、セントラルキッチンから届くチルド食品を再加熱カートで加熱し提供するニュークックチル方式を採用した。新体制下ではセントラルキッチンである工場で嚥下状態に合わせた嚥下調整食(普通食を合わせて6形態)も含めて調理業務を最終工程まで行い、その後の盛付け・トレイセッティング、チルド保管、再加熱、配膳業務を現場で担当ごとに分担することとし、業務フロー全体を整理した。
導入効果の詳細
 ○ 早出業務の縮小: 5時30分始業(その後6時半に変更)・2名体制から、再加熱カート導入後は7時始業・1名体制で十分な業務量となり、1日あたりの延べ勤務時間が約2時間以上短縮された。
 ○ 残業ゼロ・定時退社の実現:ピーク業務の分散化と業務平準化により残業が発生しにくくなり、厨房スタッフの定時退社が定着した。
 ○ 人員配置の最適化:従来必要であった常勤換算1~2名分の人員が削減されるととともに、調理担当から盛付け・配膳担当への人員シフトが可能となった。
 ○ 盛付け・トレイセッティングの効率化:配膳時間を意識せず、前倒しでトレイセット作業ができるようになることで、ある時間に業務が集中することもなくなり、作業の慌ただしさが緩和された。
 ○ タイマー管理による運用:再加熱カートはチルド保管とタイマー設定による自動再加熱(かつ食堂への運搬)が行われるため、炊飯も含めた作業の計画性が高まった。
 ○ 厨房内事故・ヒューマンエラーの減少:業務分担の明確化とマニュアル化の推進により、食札間違い、誤配膳などのインシデントが減少した。
現時点での課題と今後の展望
 現場調理を必要とする卵料理等の蒸し物や揚げ物などが提供困難であり、献立や材料のバリエーションが限定される課題が残っている。また、器は再加熱方式に適した専用食器に限られるため、選択の幅が狭まり、見た目や提供方法に工夫が求められる。食の楽しみや満足度向上のためには、再加熱カート対応の新たな調理法や食器の選択の幅を含めた盛付けアイデアの創出が不可欠である。
 さらに、現場導入からまだ日が浅く、厨房オペレーションのさらなる最適化や、利用者の嗜好・状態に応じた個別対応など、継続的な改善が求められる。今後は、厨房スタッフ全員の意見を取り入れながら、献立・提供方法の幅を広げていく予定である。
 厨房業務の省力化合理化の中で起こるいろいろな課題の解決を目指して創意工夫に努めるとともに、最近の医療・介護施設の給食で注目かつ重点事項である栄養ケアマネジメントを満足するのは当然であるが、その上で(ある意味それ以上に)「ご飯とお風呂はできる限り利用者の満足するものを提供する」という施設開設時の思いを持った当施設の栄養士として、食事提供の原点である「利用者の皆さんに喜んで、楽しく、おいしい料理を食べていただく」ということを一番に念頭に置いて、質の高いサービスの提供を目指していきたい。
結論
 再加熱カートとニュークックチル方式の導入は、慢性的な人手不足や利用者の重度化が進む中、業務の平準化と効率化、職員の負担軽減に大きく寄与した。一方で、献立や材料の制限等現場調理抜きの難しさや食器バリエーションの制約といった新たな課題も生じており、今後も現場の創意工夫と継続的な改善を重ねながら、より良い給食サービスの構築に努めたい。