講演情報
[28-O-J008-03]セントラルキッチンへの転換~準備から今後の課題~
茨城県 ○林 裕子 (社会医療法人若竹会 介護老人保健施設セントラル土浦)
【はじめに】
高齢社会を迎える中、給食人材の慢性的な不足が深刻な問題となっている。また、物価高による食材料費や水光熱費の高騰など、給食に関する問題が多く現場では日々の食事の提供や給食経営に頭を悩ませている。
そのような状況を鑑み、当法人は給食経営の改善を図るべく、法人セントラルキッチンの立ち上げを決断した。(法人グループ内の食事を一括製造し、「ニュークックチル」「カート方式による配送」で提供する法人セントラルキッチン(以下:CK)
今回はCKの構想から稼働に向けての準備、稼働から現在に至るまでの問題点や改善点、今後の課題について報告する。
【CK稼働までの準備】
2021年12月に法人内で委員会を立ち上げ、法人本部ではCKのハード面(土地・設計・設備・コスト等)の準備を開始。同時期に給食のコンサルティング会社と契約をし、CK立ち上げのコンサルティングを依頼した。法人管理栄養士は定期的に分科会を開催し、ソフト面(約束食事箋・食種・コメント・献立構成等)について細かく話し合いを重ねた。CKの運用に関しては、まずCKのノウハウを持つ給食委託会社へ運用を委託し、その後法人直営へ転換する構想となった。
【システムに関する準備】
CK稼働前は、各施設に管理栄養士が常駐し、給食部門は給食委託会社へ委託、施設内で完結していた。また、各施設で給食委託会社が異なっていたため、食種や栄養基準、指示・禁止コメントの統一はなされていなかった。
CKの運用をスムーズにするため、まずは病院で47食種あった一般食を19食種へ、40食種あった治療食を26食種へ大幅な削減を行った。必要最低限の食種へ絞るにあたり、担当医師への相談や報告を病院管理栄養士が担当した。
次に約束食事箋の改定を行い、CKの運用を委託する給食業者と食種ごとの栄養量のすり合わせを行った。定期的な分科会開催のほかに、オンライン会議で疑問点や改善点等の話し合いを重ねて決定した。
次にアレルギーや禁止・指示コメントの種類を削減する作業へ移り、CKで対応できるコメントを残す形で決定。給食システムの導入も同時進行で行った。当施設は、電子カルテで食事オーダーを入力し取り込みを行っていたが、CK稼働にあたり、CKとサテライトキッチン(法人グループ各施設の厨房(以下:SK))の連携が必要となったため、給食システムの切り替え作業も行った。
【配送~SKの準備】
CKで作られた食事はカート配送を取り入れることとなった。カート配送にすることで、SKでの形態加工や盛付作業がなくなる為、厨房スタッフ数の削減が実現できる。それに伴い、各SKではそれまで契約していた給食会社へ契約解除の通達も同時進行で行った。現場で就業する厨房パート職員への周知を行い、2名のスタッフが当施設の厨房に残る形となった。
厨房スタッフは日勤帯の勤務となる為、CKからの食事配送時間の調整も必要となった。各施設、配送カート台数が異なり、配送ルートの兼ね合いもあり、翌日昼分のカート配送時間が夜間20時以降となったため、食事の受け取りを厨房スタッフで行う事が困難となり、夜勤の介護スタッフへ依頼することとなった。そのためのマニュアルを作成し、受け取りがスムーズに出来るよう準備とシミュレーションを重ねた。
また、各施設の厨房はクックサーブ方式となっていたため、CKの運用に合わせ、再加熱ステーションとカートイン冷蔵庫やプレハブ型冷蔵庫の設置をする改修工事も必要となった。各施設で利用者様の食事提供を止めずに改修工事を行うための準備も行った。コンサルティング会社との設計打合せや、設備・電気関係の担当者との打合せを念入りに行い、CK稼働前までにSKの改修工事を完了することが出来た。
【CKの稼働】
2024年8月より、セントラルキッチンわかたけが稼働となった。始めから全ての食数を配送することは困難であったため、段階的に食数を増やしていく方法をとり、まずは近隣のエリア3施設から配送が開始となった。
CKが稼働し、法人グループ内で約束食事箋を統一したことにより、利用者様の法人グループ内での移動の際、どの施設でも同じ食種・形態で提供できるようになった。また、ニュークックチルの特徴である再加熱により、煮物は味が染み込み美味しくなったとの意見も聞かれるようになった。
しかし、デメリットもあった。8月の猛暑で、冷却機能の装備が無いカートは、保冷車から出されるとすぐに温度上昇してしまうため、いかに早く厨房まで運び、カートイン冷蔵庫へ入れられるかが課題となった。トラックの到着から配送完了までの時間を測定し試行錯誤を繰り返し、庫内温度が10℃以下で配送できるようになった。
その矢先に厨房のエアコンがダウンしてしまうトラブルや、再加熱カートにエラーが出て加熱が出来ないトラブルが頻発し、その都度メーカーへ連絡し点検や調整を行い、なんとか通常運転できるようになっていった。
自然災害への備えも重要であり、ゲリラ豪雨や雷による停電を想定し、停電になった際の復旧方法などのマニュアルを作成し、厨房スタッフだけでなく施設の全スタッフへの周知も行った。現在までに食事が提供できないトラブルは発生していないが、今後の災害やトラブルに備え、施設の災害対策委員会にて備蓄食の提供までのシミュレーションを行っていく予定である。
【今後の課題】
CKの稼働から約1年が経過し、利用者様や職員から食事に対する意見が多く聞かれるようになっている。米飯の乾燥が目立つため、CKで試作した米飯をSKで再加熱し、乾燥を防ぐ方法を検討中である。
今後はCKを直営化する方針であるが、現場の人員確保が一番の課題となる。そしてCKの運用には人員の教育が重要であるため、栄養科の連携をさらに密に行い、体制づくりを進めていきたいと考える。
高齢社会を迎える中、給食人材の慢性的な不足が深刻な問題となっている。また、物価高による食材料費や水光熱費の高騰など、給食に関する問題が多く現場では日々の食事の提供や給食経営に頭を悩ませている。
そのような状況を鑑み、当法人は給食経営の改善を図るべく、法人セントラルキッチンの立ち上げを決断した。(法人グループ内の食事を一括製造し、「ニュークックチル」「カート方式による配送」で提供する法人セントラルキッチン(以下:CK)
今回はCKの構想から稼働に向けての準備、稼働から現在に至るまでの問題点や改善点、今後の課題について報告する。
【CK稼働までの準備】
2021年12月に法人内で委員会を立ち上げ、法人本部ではCKのハード面(土地・設計・設備・コスト等)の準備を開始。同時期に給食のコンサルティング会社と契約をし、CK立ち上げのコンサルティングを依頼した。法人管理栄養士は定期的に分科会を開催し、ソフト面(約束食事箋・食種・コメント・献立構成等)について細かく話し合いを重ねた。CKの運用に関しては、まずCKのノウハウを持つ給食委託会社へ運用を委託し、その後法人直営へ転換する構想となった。
【システムに関する準備】
CK稼働前は、各施設に管理栄養士が常駐し、給食部門は給食委託会社へ委託、施設内で完結していた。また、各施設で給食委託会社が異なっていたため、食種や栄養基準、指示・禁止コメントの統一はなされていなかった。
CKの運用をスムーズにするため、まずは病院で47食種あった一般食を19食種へ、40食種あった治療食を26食種へ大幅な削減を行った。必要最低限の食種へ絞るにあたり、担当医師への相談や報告を病院管理栄養士が担当した。
次に約束食事箋の改定を行い、CKの運用を委託する給食業者と食種ごとの栄養量のすり合わせを行った。定期的な分科会開催のほかに、オンライン会議で疑問点や改善点等の話し合いを重ねて決定した。
次にアレルギーや禁止・指示コメントの種類を削減する作業へ移り、CKで対応できるコメントを残す形で決定。給食システムの導入も同時進行で行った。当施設は、電子カルテで食事オーダーを入力し取り込みを行っていたが、CK稼働にあたり、CKとサテライトキッチン(法人グループ各施設の厨房(以下:SK))の連携が必要となったため、給食システムの切り替え作業も行った。
【配送~SKの準備】
CKで作られた食事はカート配送を取り入れることとなった。カート配送にすることで、SKでの形態加工や盛付作業がなくなる為、厨房スタッフ数の削減が実現できる。それに伴い、各SKではそれまで契約していた給食会社へ契約解除の通達も同時進行で行った。現場で就業する厨房パート職員への周知を行い、2名のスタッフが当施設の厨房に残る形となった。
厨房スタッフは日勤帯の勤務となる為、CKからの食事配送時間の調整も必要となった。各施設、配送カート台数が異なり、配送ルートの兼ね合いもあり、翌日昼分のカート配送時間が夜間20時以降となったため、食事の受け取りを厨房スタッフで行う事が困難となり、夜勤の介護スタッフへ依頼することとなった。そのためのマニュアルを作成し、受け取りがスムーズに出来るよう準備とシミュレーションを重ねた。
また、各施設の厨房はクックサーブ方式となっていたため、CKの運用に合わせ、再加熱ステーションとカートイン冷蔵庫やプレハブ型冷蔵庫の設置をする改修工事も必要となった。各施設で利用者様の食事提供を止めずに改修工事を行うための準備も行った。コンサルティング会社との設計打合せや、設備・電気関係の担当者との打合せを念入りに行い、CK稼働前までにSKの改修工事を完了することが出来た。
【CKの稼働】
2024年8月より、セントラルキッチンわかたけが稼働となった。始めから全ての食数を配送することは困難であったため、段階的に食数を増やしていく方法をとり、まずは近隣のエリア3施設から配送が開始となった。
CKが稼働し、法人グループ内で約束食事箋を統一したことにより、利用者様の法人グループ内での移動の際、どの施設でも同じ食種・形態で提供できるようになった。また、ニュークックチルの特徴である再加熱により、煮物は味が染み込み美味しくなったとの意見も聞かれるようになった。
しかし、デメリットもあった。8月の猛暑で、冷却機能の装備が無いカートは、保冷車から出されるとすぐに温度上昇してしまうため、いかに早く厨房まで運び、カートイン冷蔵庫へ入れられるかが課題となった。トラックの到着から配送完了までの時間を測定し試行錯誤を繰り返し、庫内温度が10℃以下で配送できるようになった。
その矢先に厨房のエアコンがダウンしてしまうトラブルや、再加熱カートにエラーが出て加熱が出来ないトラブルが頻発し、その都度メーカーへ連絡し点検や調整を行い、なんとか通常運転できるようになっていった。
自然災害への備えも重要であり、ゲリラ豪雨や雷による停電を想定し、停電になった際の復旧方法などのマニュアルを作成し、厨房スタッフだけでなく施設の全スタッフへの周知も行った。現在までに食事が提供できないトラブルは発生していないが、今後の災害やトラブルに備え、施設の災害対策委員会にて備蓄食の提供までのシミュレーションを行っていく予定である。
【今後の課題】
CKの稼働から約1年が経過し、利用者様や職員から食事に対する意見が多く聞かれるようになっている。米飯の乾燥が目立つため、CKで試作した米飯をSKで再加熱し、乾燥を防ぐ方法を検討中である。
今後はCKを直営化する方針であるが、現場の人員確保が一番の課題となる。そしてCKの運用には人員の教育が重要であるため、栄養科の連携をさらに密に行い、体制づくりを進めていきたいと考える。

