講演情報

[28-O-J008-04]「食べたい」を叶えることで広がる笑顔と生活の質向上~ハンバーガーが食べたい~

広島県 田中 美紀, 遠藤 彩香 (介護老人保健施設ベルローゼ)
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【はじめに】 当施設では、月に一度『おやつクラブ』を実施しているが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり内容が縮小していた。季節を感じることができ、簡単かつ安全にできるものという内容で、義務的に行われる様になっていた。「ハンバーガーが食べたい。」看取り期のご利用者の一言により、職員主導の活動から、利用者主体の活動へと変化が起きた認知症専門棟での『おやつクラブ』について報告する。【内容】 当施設は、40床の認知症専門棟フロアと50床の一般棟フロアに分かれている超強化型の施設であり、各フロア共、月に一度おやつクラブを実施している。季節を感じることができる内容で、一緒に作る楽しみや出来立てのおやつを食べることを目的としていた。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染懸念と、職員不足が相まって、職員が主導でメニューを決め、調理・盛り付けも行う形になっていった。特に認知症専門棟では、安全面にも考慮し、ご利用者は主に見学、一部の方のみ参加していた。出来立てのおやつが食べられるという点では好評だったが、ご利用者の思いや主体性は限定的なものであった。 そんな中、看取り期のご利用者の「ハンバーガーが食べたい」という言葉がきっかけとなり、おやつクラブの在り方を見直す機会となった。食べることが大好きな方だったが、食思も低下し、職員の介助にて何とか食事をしておられる状態だった。テレビから流れるハンバーガーのコマーシャルを見る度に、「食べたい」「美味しそう」と話す姿がみられていた。日に日に体力の低下も見受けられていく中、ご希望に応えることはできないか。食べる楽しみを思い出してもらうことはできないか。という熱い思いを胸に、おやつクラブの担当者が中心となり、ハンバーガーとポテト、飲み物をセットで提供することを企画、実施することに決まった。看取り期に差し掛かっており、糖尿病も患っておられた為、施設医師に相談、その後、栄養士とも相談を重ねた。嚥下に配慮したハンバーグとパンなどの食材を選定、容器にもこだわり、ハンバーガーショップ風の容器を手作りした。また、目の前での加熱調理やご利用者自身がハンバーグ、チーズ、レタスを挟む工程を行えるようにし、盛り付けも工夫した。ポテトはノンフライヤーを使用し、出来立てを食べてもらえるようにした。完成したハンバーガーセットを前に、懐かしんでおられる方、物珍しく食べておられる方など様々な反応がみられた。看取り期のご利用者は、出来上がったハンバーガーを手に笑顔を見せられ、ポテトまで完食された。普段では見られない意欲的で嬉しそうな姿に職員も感動し、大きな達成感を共有、おやつクラブの意義を見出すことが出来た。【利用者主体の活動内容へと発展】 この実践を機に、おやつクラブの目的は「利用者一人ひとりの思いを叶えること」へと変化していった。メニュー決めにあたってはご利用者の声を積極的に取り入れ、調理工程にも利用者が主体的に参加できるような工夫がされるようになっている。 また、おやつを作ることだけに拘らず、「カップ麺を食べたい」という声に応えた回では、食事のメインをカップ麺にし、数種類を用意して利用者が選択できるようにすることで、興味や会話が生まれ、普段食事量が少ないご利用者が完食する姿も見られた。干し柿作りでは、普段余り参加されない男性のご利用者が紐のつるし方を積極的に教えて下さったり、皮むき器ではなく包丁が良いと起用に皮を剥かれたりと、「こんなことも出来るんだ」と思いもよらぬ発見があることも、本人や職員にとって大きな喜びとなり、ご利用者の可能性を再確認する貴重な機会となっている。活動の積み重ねにより、ご利用者からも「次は○○が食べたい」といった声があがるようになってきている。今後の活動としては、夏祭りの一環として、上質な軟らかいお肉をご用意しての焼肉企画や、業者協力の元、お店と同じように目の前で鉄板を使用して、お好み焼きを焼いてもらって食べる企画等が進行している。【活動の効果と今後の展望】 コロナ渦で閉鎖的な環境になっていた施設での生活。行事やクラブ活動も縮小傾向となり、主体性を導き出すことが難しくなっていたが、おやつクラブの活動を通して、「その人らしさ」を再発見するきっかけとなった。ご利用者自身が選択や調理に関わることで主体性が引き出され、自然と会話や笑顔も増えている。職員も「出来ない」とすぐに諦めるのではなく、どうすれば「出来るのか」を検討し、実現していく姿勢が醸成されている。 この姿勢は、おやつクラブ以外の催しや外出行事等にも広がりをみせている。更に進んで、ご利用者一人ひとりの生活における細かなニーズにも多職種で対応し、在宅復帰に向けた個別ケアを実践していきたい。