講演情報

[28-O-J008-05]美味しいステーキを味わっていただくために真空低温調理を活用して

神奈川県 田栗 華 (介護老人保健施設 都筑シニアセンター)
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【はじめに】
食事は私たちが生きていくうえで欠かせないものであり、楽しみの一つでもある。毎日ミールラウンドを行っており、利用者から「ステーキが食べたい」「普段の献立とは違うものが食べたい」という意見が挙がった。しかし、高齢者にはステーキは硬く不向きである。
普段の献立では食べられないステーキをどうにか工夫して提供したいと考え、真空低温調理で柔らかく仕上げれば提供できるのではないかと思い試作を行った。何度も試作を重ね、柔らかく仕上げることができ、ステーキイベントを開催し利用者に喜んでいただくことができたため報告する。
【目的】
普段の献立では食べられないステーキを食事イベントとして提供することで利用者の五感を刺激し、生活の質を向上させ喜びや活気、笑顔溢れる毎日を送っていただくことを目的とした。
【対象者】
常食を召し上がっている利用者。入所:77名(3日間実施)、通所:59名(2日間実施)
【方法】
使用する牛肉はアメリカ産肩ロースとミスジ。100gあたり¥280の物を使用。火の通り具合を同じにするため厚さは3cmに統一する。
低温調理機はBONIQ(ボニーク)使用。真空パック機はアイリスオーヤマの物を使用。
低温調理を行う上で衛生管理に留意し、低温調理加熱時間基準表の設定温度と時間を守り安全に提供する。
<試作1回目>牛肉に塩コショウをしてバターで焼いてから58℃・5時間真空低温調理⇒火が通りすぎてしまい硬くなってしまった。
<試作2回目>牛肉のスジ切りをし、塩コショウをしてバターで焼いてから58℃・4時間真空低温調理⇒1回目よりは柔らかく食べやすいがややパサつきあり。
<試作3回目>牛肉のスジ切りをし、塩コショウをして焼かずに58℃・4時間真空低温調理⇒柔らかく食べやすい。パサつきもなし。施設長や介護部長から提供の許可が下りた。
試作3回目の方法で前日調理し、当日は55℃・30分再加熱。利用者の目の前でホットプレート使用し、バターで焼き目を付けて(220℃・5分程度)からカットして提供した。
<献立>ご飯、ステーキ(肩ロース・ミスジ)、ミニハンバーグ、コールスローサラダ、フライドポテト、コンソメスープ。ステーキのトッピングで大根おろし、ガーリックチップ、わさび、塩を用意した。
大根おろしをトッピングに加えた理由は肉に水分を与えることで更に食べやすくするためである。また、パンに比べてご飯は水分量が多く飲み込みやすい。また窒息のリスクも軽減できるため主食をパンではなくご飯にした。
【結果】
入所参加者77名に対し事後アンケートを実施。アンケート内容は、(1)硬さはどうだったか、(2)ステーキのイメージと比較してどうだったか、(3)自由記述に分けて実施。
(1)に対し、「硬い」が19%、「やわらかい」が15%、「丁度良い」が66%
(2)に対しては「イメージよりも柔らかかった」「硬いのかと思ったが食べたら柔らかかった」「柔らかく食べやすかった」等91%が好評な意見。9%は「硬かった」、「肉が薄くてステーキのイメージとは違う」「少しだけ硬いところがあった」等の意見だった。
(3)に対しては「とっても美味しかった。焼いてすぐのものが食べられる事はないから嬉しい。また食べたい」「焼いているのが見えるのが楽しかった。香りもするから美味しさがより増える」「肉が柔らかくて沢山食べられた」「歯が悪いが食べやすくしてもらったので食べられた」「大根おろし、わさび、にんにくチップのトッピングも良かった。大満足!」「食事のイベントがあれば、また参加したい」「シェフがいて美味しそう。ライブ感が良い」等好評な意見が多く挙がった。
ステーキは硬く高齢者には不向きと思われているが、真空低温調理をすることで柔らかく仕上げることが出来た。普段は居室にて食事を召し上がっている方もフロアに出てきてイベントを楽しんでいる様子もみられた。誤嚥や窒息等なく安全にイベントを終えることができた。
【考察】
アンケート結果より、高齢者でも柔らかく食べやすいステーキの提供が出来たと考えられる。自由記述の内容からも、普段の献立では食べられないステーキをホットプレートで焼いて利用者の目の前で仕上げることによってライブ感を味わっていただけた。また、シェフはコック帽をかぶり食事を運ぶ職員はカフェエプロンにベレー帽を着用することで普段とは異なる特別感を演出できた。ステーキを焼く光景やバターの香りを感じ、五感で楽しんで頂くことが出来たと考えられる。
【終わりに】
食事とは生命維持や健康増進を図るだけでなく、楽しみや喜びを感じて頂くものである。利用者の「美味しい物、好きな物が食べたい」という思いに応えられるよう今後も食事イベントを行うとともに、日々の食事にも目を向けミールラウンドにて利用者の意見を聞き、利用者に食事を楽しんで頂けるよう施設全体で取り組んでいきたい。