講演情報

[22-O-K002-01]要支援デイケア利用者の低栄養リスクと食事量の関連

*吉森 優、渡辺 塁、三関 涼、島﨑 諒、峯 琉之佑、鈴木 健悟 (茨城県 医療法人駿仁会 介護老人保健施設夢彩の舎)
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【背景】
高齢者の低栄養については、フレイルやサルコペニアの進行、身体機能低下、要介護状態の悪化等との関連性が知られている。近年では、高齢者の健康寿命延伸や介護予防の観点からも、低栄養の早期発見と適切な介入の重要性が指摘されている。特に要支援認定者は、日常生活動作が比較的自立しているため健康状態が良好と捉えられやすいが、その一方で栄養状態の変化や食生活上の問題が見過ごされる可能性がある。
また、低栄養の発生には加齢による身体機能の変化だけでなく、口腔機能の低下、慢性疾患、服薬状況等の身体的要因に加え、独居や高齢者世帯、社会的孤立といった社会的要因も関与することが報告されている。しかし、要支援認定者を対象とした、栄養リスクと食事量低下との関連や、その背景要因について検討した報告は十分ではない。
そこで本研究では、当施設デイケア利用者(要支援)を対象に簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional Assessment Short-Form : MNA-SF)を用いて栄養状態を評価し、低栄養リスクの実態を把握するとともに、食事量低下との関連およびその背景要因について検討した。
【方法】対象は当施設デイケアを利用する要支援認定者40名とした。栄養状態の評価にはMNA-SFを用い、評価結果から対象者を低リスク群と中・高リスク群に分類した。また、MNA-SF項目のうち食事量低下の有無について確認し、栄養リスクとの関連を検討した。統計処理には統計ソフトjs-STARを使用し、Fisherの直接確率法を用いて分析を行った。
さらに、食事量低下を認めた利用者については、診療録やケア記録、多職種からの情報を基に、その背景要因を調査した。背景要因については、嚥下機能や口腔環境、服薬状況等の身体的要因と、独居や高齢者世帯等の社会的要因の観点から分析を行った。
また、サルコペニアに該当している利用者の有無について、握力と家庭用身体組成計(Inbody Dial H20N)を用いた骨格筋量の測定を行った。得られた骨格筋量から骨格筋量指数(skeletal muscle mass index : SMI)を割り出し、AWGS2025サルコペニア診断基準に基づくカットオフ値に値するかの判定を行った。
【結果】対象者40名のうち、中・高リスク群は11名(27.5%)、低リスク群は29名(72.5%)と約3割が低栄養リスクを有していた。
食事量低下に該当した利用者は、中・高リスク群では11名中5名に認められた一方、低リスク群では29名中0名であった。統計学的検討の結果、食事量低下と栄養リスクとの間に有意な関連が認められた(p<0.05)。
また、食事量低下を認めた利用者の背景の調査では、義歯不適合等の口腔環境の問題に加え、多剤服用による食欲低下や口腔乾燥等が影響していると考えられる事例もみられた。
一方で、身体的要因だけでなく、独居や高齢者世帯などの生活環境上の問題も確認された。内容としては、当人・配偶者の身体機能低下により調理の負担や買い物機会の減少により食事内容が簡素化し、結果として摂取量や栄養バランスの低下に繋がっているケースも見られた。
また、今回の対象にはサルコペニアに該当する者はいなかった。
【考察】本研究では、要支援認定者であっても約3割が中・高リスク群に該当し、低栄養リスクを有していることが明らかとなった。比較的自立した生活を送っている利用者についても、栄養状態の低下が進行している利用者が一定数存在することが示された。
また、食事量低下は中・高リスク群にのみ認められ、栄養状態悪化と強く関連していることが示唆された。食事量の減少はエネルギーやたんぱく質摂取不足を引き起こし、体重減少や筋肉量低下に繋がることから、低栄養の重要なサインとして捉える必要がある。
食事量低下の背景としては、口腔環境不良や多剤服用等の身体的要因が認められた。先行研究において、西村らは低栄養と口腔・嚥下機能低下、食事摂取頻度の関連性を報告している。また、森田らは8種類以上の成分を服用している者は口腔機能が低下しやすいことを報告している。加齢に伴う咀嚼・嚥下機能の低下は食事の負担感を増大させ、摂取量低下を招く。また、多剤服用は食欲低下や味覚異常、口腔乾燥等を引き起こし、食事摂取に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、栄養状態の評価だけでなく、口腔機能評価や服薬状況の確認を併せて実施することが重要である。
さらに、本研究では独居や高齢者世帯といった社会的要因の関与も示唆された。高齢者の低栄養は生活環境や社会的支援体制とも密接に関係している。特に独居高齢者では孤食による食欲低下や食事準備能力の低下が問題となり易く、高齢者世帯では双方の身体機能低下が食生活に影響を与える可能性がある。今回の調査においては対象数が限られる為、あくまで個別性の域ではあるが関与が疑われるケースも散見された。これらの要因は栄養指導のみでは改善が難しく、介護支援専門員やリハビリテーション職、看護師、管理栄養士等多職種による支援が必要である。
また、今回食事量の低下を認め低栄養状態にありながらも、サルコペニアに該当するものはいない結果となった。定期的なデイケアの利用を通じて活動機会を得ることや、他者との交流機会を確保できていることでサルコペニアの予防に繋がっていると考える。
【今後の展望】今回得られたデータにおいて対象数が少なかった為に、関連性が認められなかった項目も存在した。先行研究においては、食事量の低下の要因として今回着目した口腔環境や嚥下機能、多剤服用との関連性を強く示唆する研究も多く存在する。本研究で得られたデータにおいては個別性を重要視し、栄養状態の評価や身体的・社会的要因についての調査の必要性を裏付ける一助となった。今後は要支援認定者に限らず、要介護認定者の傾向を調査していきながら、栄養面から身体機能の低下を予防していくシステムの構築に役立てていきたい。