講演情報
[22-O-J4K1-01]老健での看取りについて~管理栄養士の役割~
*名古 亜貴子、佐藤 直美、佐藤 壮、園田 祝美、瀧川 宗一郎 (神奈川県 AMG 介護老人保健施設ハートケア湘南・芦名)
【背景】 介護老人保健施設は在宅復帰支援を主軸とするが、近年では看取り対応を行う施設が増加している。当施設は在宅復帰超強化型であるが、一方で最期を施設で迎える方の割合は増加傾向にある。看取り期の利用者は疾患や身体状態に伴い食欲・嚥下機能が急速に変化するため、管理栄養士による適切な栄養ケアが求められる。しかし、介護老人保健施設における看取り期の栄養支援は、医療機関のような治療的栄養管理とは異なり、「延命」よりも「苦痛の緩和」「その人らしさの尊重」「家族の心理的支援」が中心となる。そのため、標準化された介入方法が少なく、最期まで可能な限り食べることを希望される利用者やご家族がほとんどであり、その内容も多岐に渡る。本報告では、当施設で看取りとなった利用者に対し、管理栄養士が行った栄養ケアの実践と当施設での看取り食提供の検討、その効果と課題を明らかにすることを目的とした。
【目的】 介護老人保健施設における看取り期の利用者に対し、管理栄養士が実施した栄養ケアの内容とその影響を検討し、看取りケアにおける管理栄養士の役割を明確化する。
【方法】 2023年4月~2026年3月に当施設で看取りとなった利用者60名のうち、家族の同意が得られ、かつ経口摂取を継続していた43名を対象とした。管理栄養士は、嚥下機能評価(口腔内変化、食事観察、咽の有無、耐久性等)、食事形態調整、好物・懐かしい味の提供(ご家族持参食品の形態加工)、水分補給方法の工夫、ご家族への説明、多職種カンファレンスでの情報共有を行った。記録から摂取する食品の分類と摂取量の推移、ご家族の心理的変化と持参する食品の傾向、職員ケアの統一性について分析した。
【結果】 対象者は、看取り期に入ると摂取量の低下が確認されるが、多様な好物の提供や食事形態変更、食事時間の調整等により「好物を食べさせてあげることができた」「本人から美味しいと声が聞くことができた」など食事を通して看取りケアに携わることができたとご家族・職員から報告された。また、身体状況変化に応じたご家族への説明により、「看取り期では無理に食べさせなくてよいと分かり安心した」「食べられる間に懐かしの味を味わうことができ良かった」「食べることができなくても香りに反応があった」といった心理的負担の軽減がみられた。多職種で栄養ケアの方針を共有することで、職員による食事介助の統一が図られた。一方で、主介護者の高齢化や遠方に住むご家族が思うように施設まで面会に来ることが出来ない・持参する食品の選定に課題が生じたケースもあったため、看取り期の食事について栄養給食委員会で協議を重ねた。当施設のミキサー食は、少量高カロリー設定で作成しているため、看取り期のニーズに当てはまらないことがある。そこで、のど越しの良さや口当たり、多くの方が好まれる適度な甘みとフルーティーさなどの嗜好面を考慮し、消化吸収面からもご本人の負担を減らした「ターミナル食」を構築した。
〈症例:A氏〉実際の食事内容を含む詳細検討
A氏(100代女性)2025年恥骨骨折後より身体状態の変化、ADL低下が著明。軟菜食(コード3相当)を摂取していたが、看取り期に入り覚醒状態の低下と耐久性の低下・頸部後屈が顕著となった。管理栄養士は食事観察を強化し、嚥下機能の低下に合わせて軟菜食からミキサー食(コード2-1)へ変更したが、嚥下反射の遅延に加え、口腔内残留も確認されるようになり、摂取時に苦痛表情も確認されることもあり、看取り期が一段階進んだと判断し、“負担の少ない食事=ターミナル食”へ段階的に移行した。ターミナル食は、全量摂取で750㎉程/日であるが、通常の食事時間以外に提供することも可能であるため、ご本人の体調に合わせた時間帯で提供できることもメリットの一つであり、食事内容も過去の看取り期の経験から摂取しやすい食品で献立構成をしているため多職種からも「これなら負担なく食べられる」との意見が聞かれた。
終末期には、多くの方が経口摂取困難になるが、家族から「自然な経過として受け入れられた」看取り後、「最期まで好みのものを楽しむことが出来良かった」との言葉が寄せられた。
【考察】 看取り期の栄養ケアは、栄養補給よりも対象者のQOL向上と家族支援が中心であるべきと考える。多職種連携により好物提供や食形態調整により、本人の負担を最小限にしながら「食べる楽しみ」を維持できた。また、家族への説明は心理的負担の軽減に寄与し、看取りを肯定的に受け止める一助となった。介護老人保健施設では多職種連携による情報共有が不可欠であり、管理栄養士が栄養ケア方針を明確に示すことにより対象者にとって最適な「最期に向けての食支援」を多職種チームで関わることが出来た。今後の課題として、看取り期の栄養ケアの標準化、グリーフケアを含む家族支援、職員教育の強化が挙げられる。
【結論】 介護老人保健施設における看取り期の栄養ケアは、利用者の尊厳を守り、家族の心理的支援を行う上で重要な役割を果たす。管理栄養士は多職種連携の中で、「最期までその方らしく食べる」を支える専門職として、看取りの質向上に寄与する。
【目的】 介護老人保健施設における看取り期の利用者に対し、管理栄養士が実施した栄養ケアの内容とその影響を検討し、看取りケアにおける管理栄養士の役割を明確化する。
【方法】 2023年4月~2026年3月に当施設で看取りとなった利用者60名のうち、家族の同意が得られ、かつ経口摂取を継続していた43名を対象とした。管理栄養士は、嚥下機能評価(口腔内変化、食事観察、咽の有無、耐久性等)、食事形態調整、好物・懐かしい味の提供(ご家族持参食品の形態加工)、水分補給方法の工夫、ご家族への説明、多職種カンファレンスでの情報共有を行った。記録から摂取する食品の分類と摂取量の推移、ご家族の心理的変化と持参する食品の傾向、職員ケアの統一性について分析した。
【結果】 対象者は、看取り期に入ると摂取量の低下が確認されるが、多様な好物の提供や食事形態変更、食事時間の調整等により「好物を食べさせてあげることができた」「本人から美味しいと声が聞くことができた」など食事を通して看取りケアに携わることができたとご家族・職員から報告された。また、身体状況変化に応じたご家族への説明により、「看取り期では無理に食べさせなくてよいと分かり安心した」「食べられる間に懐かしの味を味わうことができ良かった」「食べることができなくても香りに反応があった」といった心理的負担の軽減がみられた。多職種で栄養ケアの方針を共有することで、職員による食事介助の統一が図られた。一方で、主介護者の高齢化や遠方に住むご家族が思うように施設まで面会に来ることが出来ない・持参する食品の選定に課題が生じたケースもあったため、看取り期の食事について栄養給食委員会で協議を重ねた。当施設のミキサー食は、少量高カロリー設定で作成しているため、看取り期のニーズに当てはまらないことがある。そこで、のど越しの良さや口当たり、多くの方が好まれる適度な甘みとフルーティーさなどの嗜好面を考慮し、消化吸収面からもご本人の負担を減らした「ターミナル食」を構築した。
〈症例:A氏〉実際の食事内容を含む詳細検討
A氏(100代女性)2025年恥骨骨折後より身体状態の変化、ADL低下が著明。軟菜食(コード3相当)を摂取していたが、看取り期に入り覚醒状態の低下と耐久性の低下・頸部後屈が顕著となった。管理栄養士は食事観察を強化し、嚥下機能の低下に合わせて軟菜食からミキサー食(コード2-1)へ変更したが、嚥下反射の遅延に加え、口腔内残留も確認されるようになり、摂取時に苦痛表情も確認されることもあり、看取り期が一段階進んだと判断し、“負担の少ない食事=ターミナル食”へ段階的に移行した。ターミナル食は、全量摂取で750㎉程/日であるが、通常の食事時間以外に提供することも可能であるため、ご本人の体調に合わせた時間帯で提供できることもメリットの一つであり、食事内容も過去の看取り期の経験から摂取しやすい食品で献立構成をしているため多職種からも「これなら負担なく食べられる」との意見が聞かれた。
終末期には、多くの方が経口摂取困難になるが、家族から「自然な経過として受け入れられた」看取り後、「最期まで好みのものを楽しむことが出来良かった」との言葉が寄せられた。
【考察】 看取り期の栄養ケアは、栄養補給よりも対象者のQOL向上と家族支援が中心であるべきと考える。多職種連携により好物提供や食形態調整により、本人の負担を最小限にしながら「食べる楽しみ」を維持できた。また、家族への説明は心理的負担の軽減に寄与し、看取りを肯定的に受け止める一助となった。介護老人保健施設では多職種連携による情報共有が不可欠であり、管理栄養士が栄養ケア方針を明確に示すことにより対象者にとって最適な「最期に向けての食支援」を多職種チームで関わることが出来た。今後の課題として、看取り期の栄養ケアの標準化、グリーフケアを含む家族支援、職員教育の強化が挙げられる。
【結論】 介護老人保健施設における看取り期の栄養ケアは、利用者の尊厳を守り、家族の心理的支援を行う上で重要な役割を果たす。管理栄養士は多職種連携の中で、「最期までその方らしく食べる」を支える専門職として、看取りの質向上に寄与する。
