講演情報

[22-O-J4K1-05]もう一度あの味を

*伊東 龍輝、堀口 美咲 (茨城県 社会福祉法人 北養会 介護老人保健施設はなみずき)
PDFダウンロードPDFダウンロード
1,はじめに
今回は「カレーが食べたい」と言うご本人の思いを汲み取り食事面に着目した結果、意欲の向上により体重が44㎏から55㎏へ増加、最終的に胃瘻閉鎖にまで至った事例結果を報告する。

2,対象利用者紹介
69歳 男性 介護度:要介護4
病歴…潰瘍性大腸炎、鬱病、前立腺癌、食欲不振、胃瘻造設

3,入所時のADL状況
移動…U字歩行器見守り 移乗…支持物使用し自立 体重…44㎏ BMI…15.3
食事…経管栄養・ムース食(病院では朝夕に経管栄養と補助食品2個ずつ、昼はペースト粥とムース食を摂取されていた。ペースト粥は4分の1程度しか摂取されていなかった。)
退所時のADL状況
移動…T字杖自立 移乗…自立 体重…55㎏ BMI…18.8 食事…全粥、ソフト食、胃瘻閉鎖

4,入所までの経緯
潰瘍性大腸炎のため入院となる。入院後食欲不振となり胃瘻造設。自宅退院難しく年齢も若いため、経口からの食事や歩行は続けたい(続けてほしい)とご本人やご家族からの強い思いにより、リハビリを希望され当施設に入所される。

5,考察
入所当初、経口摂取量が安定せず、朝・夕と経管栄養も併用していた。又、食事中に手が止まり、表情も乏しく食事に対する意欲低下がみられた。しかし、携帯電話で、カレーの画像を見ている姿があり、話を伺うと「カレーが食べたい」と話された。このタイミングで食事のアプローチを行うことで、食事量増加⇒食事の意欲向上に繋がるのではないか。又、運動を行うことで空腹になり食欲が増え、上記と同様の結果が得られると考えた。

6,課題
食事の意欲向上、栄養状態の改善 
→食事観察…嗜好調査、食事量の観察、定期的な体重測定、他職種とのカンファレンス、食事前の嚥下体操
活動量増加…エルゴメーター負荷3×5分

7,アプローチ
入所当初
経口摂取量の不安定・食事の意欲低下から食事観察を実施した。嚥下機能は年相応、ソフト食の摂取も可能な状態であった。しかし、意欲の低下や舌で潰せる硬さがいいとの訴えからムース食での対応となる。
1週間後
カレー風味のムース食が提供された際に、好反応な様子が伺えた。カレーライスを食べる前段階として医師、管理栄養士、看護師、リハ職等と現在の食事状況を報告した。食事摂取状態を確認した上で、ムース食に加えて全粥から試すことになった。全粥は1~3割程摂取された。又、介護職の取り組みとして食事前の飲み込む力を維持・向上させるために食事前に嚥下体操をした。
数週間後~2か月後
全粥を摂取された際に「味がない、何かかけるものがあればな。」と仰られる。管理栄養士と介護職とで連携し味付けに関する話し合いを行い、梅びしお、のりの佃煮、たい味噌などペースト状のものをお粥の上にのせ、毎食どの味付けなら摂取量が増加するのか記録を残しフロアで情報共有を行った。梅びしお、のりの佃煮は平均的に4割程の摂取量だったが、たい味噌は7~8割程摂取される様子がみられた。又、同時期にリハビリ職と相談し、介護職でも行える生活リハビリとしてエルゴメーターを負荷3で5分間試すことにした。また理学療法士は関節可動域訓練、ストレッチ、筋力増強訓練、歩行訓練を実施した。
3ヶ月後
ムース食、全粥共に全量摂取されることが続いたため、食事形態をソフト食に変更し提供した。その結果、全量摂取できるようになり、望むカレーが提供された際に「美味しいです。」と笑顔が見られ、入所当初とは考えられないほどの表情で、よく食べる姿がみられた。

8,結果
食事面では、カレーをきっかけに摂取意欲が向上し、カレー以外の献立でも全量摂取が継続して見られるようになり、食事形態もソフト食に変更となった。味付けの工夫を行った結果、好みの味付けでは、摂取量が特に増加し、食事に対する関心が高まった。またエルゴメーターを毎日行い習慣化されたことにより5分間から10分間まで時間が増え歩行状態も向上しふらつきなく安定した歩行が可能となった。体重も入所時と比べて11㎏増加した。食事に対する意欲の向上が栄養状態の改善に繋がり、身体機能の向上も確認された。更に退所時には胃瘻閉鎖となった。

9,まとめ
カレーの画像を見ていたというちょっとした行動から「カレーが食べたいのではないか」と考え、アプローチしたことで、食事に対する意欲や摂取量及び栄養状態の改善がみられた。又、それに伴い、活動量が増加し生活動作の安定にも繋がった。ご本人の望むものを第一に考えることで、できなくなったことが再びできるようになった。今後もちょっとした行動からご利用者の求めるものを汲み取り、医師、管理栄養士等、情報共有を図りながら、一人でも多くのご利用者に自信をもって在宅復帰できるよう支援していきたい。