講演情報

[22-O-K002-03]安全と美味しいを両立する「らくらく食」「特らく食」

*米田 千草、渡邉 祐里 (三重県 医療法人緑の風 介護老人保健施設いこいの森)
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【はじめに】
当施設は1997年に開設した入所者定員100名(短期入所含む)、通所リハビリ100名の施設で、開設以来29年施設内の食事を厨房職員が手作りで提供している。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会(以下学会分類2021とする)のコード4・3に相当する独自の嚥下調整食である歯茎でつぶせる硬さの「らくらく食」に加え、さらに咀嚼・嚥下機能が低下した方向けに、舌でつぶせる硬さの「特らく食」を提供している。施設独自の親しみやすい名前をつけることで、利用者や職員との共通言語とし、食事への愛着を持っていただくことも狙いである。
本報告では、STはじめ多職種と共に作り上げてきた独自の「らくらく食」および「特らく食」の取り組みについて、安全と美味しさを両立する具体的な調理工夫を紹介するとともに個別対応への取り組みについても報告する。

【取り組み(1)】
常食を喫食している利用者と同様に「目で見ても美味しく、食べる喜びを感じられる食事」を提供するための調理工夫

<「厚め・大きめ」に切ることで、見た目と安全を両立>
薄く切るとペラペラして噛み難く、上顎に張り付いてしまう危険があるため、適度に厚く切り、舌や歯茎で食材をしっかり捉えやすくより柔らかさを感じられるようにしている。見た目も常菜に近い状態になるように、当施設ではそれぞれ食材によって仕込み方法を変えている。
・人参、大根等の根菜類:厚さ1cmにカットする。
・ナス:大きめにカットし、皮に切込みを多く入れて柔らかさをだす。
・白菜:大きめにカットする。「特らく食」は柔らかい葉の部分のみを使用する。
・玉ねぎ:繊維を断ち切るように1cm幅にカットする。
・きゅうり: 皮を剥き、厚さ1cmの半月切りにする。

<圧力鍋や酵素を使い、「彩り」と「食べやすさ」キープ>
・食品加工用酵素を使用する。
・根菜類、葉物類は圧力鍋にかけて柔らかくする。
・肉類は圧力鍋にかけたり、酵素に漬け込む。
・きゅうり、ネギ等の葉物は 熱湯に酵素を入れて茹でる。
・酵素を活用することで鮮やかな色を保ったまま、繊維を崩し歯茎や舌で簡単につぶせる硬さまで柔らかく仕上げることができる。

<コード3に相当する取り組み 「とろみ餡」と「既製品」の組み合わせ>
・魚類はパサつきを抑えるため、皮なしの脂身の多い部位を選定。「とろみ餡」をかけることで、まとまりよく安全に咀嚼しやすくなる。
・圧力鍋では完全に軟化させるのが難しいきのこ類、ゴボウ、ピーマンは、やわらか食材(既製品)を代用することで、見た目と風味を損なわないまま『舌でつぶせる硬さ』を実現している。
・芋類は潰してマッシュ状にすることで食べやすくなる。

【取り組み(2)】
喫食量が低下している利用者に対しては聞き取りを行い、個別に食べていただけそうなものを提供している。
<個別対応食>
郷土の味が恋しい・・・鶏雑煮
白粥は嫌だ・・・おじや
麺類なら食べられそう・・・にゅう麺や素麺
汁物がないと食が進まない・・・すまし汁

【まとめ】
学会分類2021のコード4・3に相当する当施設独自の「らくらく食」および「特らく食」を安定して提供するため、厨房職員同士での調理手順の共有を大切にしている。食材のカット方法、酵素の適切な使用量や圧力鍋の加圧時間など、美味しく安全に仕上がる条件を厨房全体で揃えることで、どの職員が調理を担当しても、常に一定の「安全な硬さ」と「手作りならではのクオリティ」を維持した食事提供ができるよう工夫している。
当施設の理念である『お一人お一人の利用者を大切に。そして、その方の立場に立ったベストの医療とオーダーメイドの介護を提供します。』をもとに「利用者の立場に立ったオーダーメイドの食事」を守り続けるためには、厨房のマンパワーに配慮した現実的な効率化と、手作りならではの「ひと手間」の融合が不可欠である。
今後も、美味しい食事に加えて嚥下機能等にも配慮した食事や調理の作業工程の効率化等の課題に対しても取り組んでいきたいと考え、厨房職員が一丸となり、食べる喜びを支える安心・安全な食事作りに邁進していきたい。