講演情報

[22-O-K002-02]委託運営から直営化へ 持続可能な厨房運営をめざして移行から現在まで、改善を重ねた1年余りの取り組み

*竹田津 麻美 (大分県 介護老人保健施設小野鶴養生院)
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【はじめに】
当施設は老人保健施設小野鶴養生院(100床)であり、施設内厨房において、隣接するグループホーム(18床)および有料老人ホーム(28床)の食事も一括して提供している。現在の提供食数は朝・夕食が120食程度、昼食は通所リハビリテーションの利用者を含め140食程度であり、多様な形態の利用者へ安定した食事を供給する体制が求められている。当施設では長年直営で厨房管理を行ってきたが、人員確保の困難化を背景に令和5年4月より2年間委託運営へ切り替えた経緯がある。しかし委託費用の増大や品質管理面の問題が表面化したほか、昨今の給食事業を取り巻く環境も厳しさを増したことから、令和7年4月より再び直営運営へ移行することを決断した。完調品メーカーの充実やニュークックチルをはじめとする設備の活用など、直営運営を支える手段が多様化していることから、これらを活用し作業効率の向上や調理工程の見直しを図ることで、限られた人員でも安定した給食提供が可能と判断した。直営化にあたっては手作り調理への移行を最終目標としつつ、持続可能な厨房運営に向けた取り組みと今後の展望について報告する。
【直営化移行への取り組み】
再直営化にあたっては、将来にわたって安定した給食提供が継続できるよう、設備・人材・運営体制の三つの柱を整備した。設備面では、温冷配膳車・ブラストチラー・お茶サーバー等を導入するとともに、スチームコンベクションオーブン(以下スチコン)調理を見据えた設備整備を行った。人材面では、直営時代の経験者と未経験者を含む調理スタッフを新たに配置し、さらに、立ち上げ経験のある方に参画いただき、栄養士とともに業務の流れや役割分担を整理・明確化した。運営面では、誰が現場に入っても分かりやすいよう作業工程の可視化を意識した体制を整備した。献立作成では移行初期は完調品を中心とした献立構成を採用し、主菜・副菜をセレクト可能な完調品メーカーを2社体制で活用することで献立の多様性を確保しながら、汁物は全て手作りとし、果物の提供も継続した。あわせて取引先業者の選定や発注体制の整理を進めながら、令和7年4月より直営運営を開始した。
【業務改善の実際】
移行当初は厨房運営の安定を最優先とし、完調品を中心とした献立で作業が円滑に回る体制の構築に注力した。当施設の献立構成は、朝食が主食・副食1品・ふりかけ類・汁物、昼食が主食・主菜・副菜1品・果物・汁物、夕食が主食・主菜・副菜1品・漬物・汁物を基本としている。これらを限られた人員で安定的に提供するため、調理担当者も調理を行いながら盛付けも並行して担当し、特定の業務への役割固定化を避けることで業務負担の偏りを軽減するとともに、人材の定着につながる職場環境の整備に取り組んだ。令和7年6月からはスチコンを活用した手作り調理を導入、スチコン調理の推進にあたっては、コンロ使用の減少による厨房環境の改善も狙いの一つとして、調理員への意識付けを行った。令和8年1月には昼食の手作り献立が1~2品へ拡大した。令和8年4月にはスチコンを追加導入するとともに、厨房レイアウトを変更して調理ゾーンと盛付けゾーンを明確に分離し、衛生管理と作業動線の両面を改善した。令和8年5月からは夕食にも手作りメニューを導入し、手作り献立の比率はさらに高まった。
【運営状況の検証】
直営化後は、標準化調理の拡大と並行して運営状況の検証を行った。近年の食材費高騰により、手作り調理の拡大はコスト増につながりやすい状況であったが、調理工程や食材選定を見直すことで、手作り調理を取り入れながらも食材費の抑制を図ることができた。その結果、手作りでの主菜・副菜の月あたりのべ提供回数は、令和7年4、5月の0回から令和8年5月には60回へ増加し、手作り調理の定着と拡大につながった。また、作業工程の標準化を進めたことで、労働時間あたりの食数は4.9食/時間から9.1食/時間へ増加し、作業効率は約87%向上した(1.9倍)。さらに、他施設での導入実績のあったソフト食(完全調理品)をR8年5月より導入したことで、栄養補助食品の削減と作業効率の更なる向上につながっている。また、作業にゆとりが生まれたことで、現在は行事食の充実など食事の質の向上にも取り組みながら、誰が調理しても一定の品質を保てる標準化調理の構築を進めている。
【今後の課題と展望】
標準化調理をさらに展開していくことが、手作り調理への移行に向けた取り組みの推進につながるものと考えている。今後も、クックチル・クックサーブを活用した献立の幅を広げながら、現場状況に応じて運営体制や調理工程の改善を重ね、より効率的で安定した直営運営体制へと発展させていく。あわせて、定期的な人員配置の効率化や業務分担の見直しを進めるとともに、外部研修や他施設との情報共有を通じて、調理スタッフの知識・技術の向上につなげていく。
【まとめ】
委託運営から再び直営へと移行した当施設では、継続的な改善を積み重ねながら運営体制の構築を進めており、設備の活用と調理工程の見直しにより業務効率は着実に向上している。スチコンを軸とした標準化調理を拡大することで、手作り調理への移行も無理なく進めることができ、コスト面・品質管理面においても成果が表れている。今後も改善を重ねながら、厨房運営体制のさらなる充実を図っていく。