講演情報
[19]尺骨神経障害におけるF‑MUNEを用いた早期再支配の評価:上腕骨外顆骨折術後症例
*髙井 一志1、谷 栄了1 (1. 三豊総合病院企業団 リハビリテーション部)
キーワード:
F-MUNE、神経再支配、尺骨神経
(背景)絞扼性神経障害は、①Na⁺移動阻害による伝導遅延、②伝導ブロック、③軸索輸送途絶によるワーラー変性に大別される。強い圧迫では早期から軸索変性が生じることもある。軸索変性後の回復には神経再生が必要で、速度は1日約1 mm とされ、運動神経では側芽形成による再支配が加わる。F‑MUNE は反復 F 波を単一運動単位電位(SMUP)として捉え、SMUP 増大は再支配を示唆する。今回、右上腕骨外顆骨折後の尺骨神経障害で、経過中に F‑MUNE により再支配を示唆する所見を得た。(説明と同意)発表に際して説明の上、同意を得ている。 (症例提示)60歳代女性。転倒により右上腕骨外顆骨折を受傷し、3日後に ORIF を施行。術後より右尺側手指のしびれを自覚し、術後9日に NCS を実施した。( 神経伝導検査の経過)術後9日:CMAP 0.279 mV、SNAP 0.5 μV と著明に低下。手関節-上腕間 MCV は 15.2 m/s と高度低下し、尺骨神経肘部での伝導障害が示唆されたため翌日にスクリュー抜去を施行した。術後3か月:MCV 41.7 m/s、CMAP 1.25 mV と改善したが、SNAP は 0.8 μV と低値であった。術後4か月:CMAP 1.16 mV、SNAP 6.1 μV。F‑MUNE:SMUP は健側 28 μV/患側 72 μV、MUNE は健側 168/患側 16.5、ORF は健側 22%/患側 71%であった。(考察)術後3か月で SNAP が改善しなかった点は、感覚神経のSNAPの時間的分散がCMAPに比べて大きい点が考えられる。術後4か月での SMUP 高値、MUNE 低値、ORF 高値は、運動単位数減少と側芽形成による再支配の進行を示す典型的所見であり、阿部らの正常値と比較しても病的意義が明確であった。再支配が4か月で確認された点は、軸索発芽が早期に開始されていた可能性を示し、Brown(1978)の報告とも一致する。近年、電気刺激や運動負荷が神経再生・再ミエリン化を促進する報告があり、急性期からの F‑MUNE による再支配評価はリハビリ戦略の発展に寄与すると考えられる。(結語)本症例では、F‑MUNE により尺骨神経障害の再支配進行を客観的に捉えることができた。F-MUNEにおけるSMUP 増大・MUNE 低下・ORF 高値は側芽形成の進行を示唆した。F‑MUNE は末梢神経障害の経過評価において再支配の早期把握に有用である。
