講演情報
[73]大腿骨近位部骨折術後患者における術前循環器評価所見と術後早期歩行獲得および退院時ADLとの関連
*宮脇 直人1、瀬尾 清美1、近藤 梓1、遠藤 泰弘1、大西 純二2 (1. きたじま田岡病院 リハビリテーション科、2. きたじま田岡病院 整形外科)
キーワード:
循環器術前評価、大腿骨近位部骨折、早期歩行能力獲得
【はじめに,目的】
大腿骨近位部骨折術後患者では,早期歩行獲得やADL回復が重要な転帰である.術後7日時点の歩行能力は,その後の歩行回復を見通す指標となる.一方,高齢患者では循環器疾患を併存することが多いが,術前循環器評価所見と術後機能転帰との関連は十分に検討されていない.本研究は,術前循環器評価所見と術後7日以内の歩行器歩行到達および退院時ADLとの関連を検討した.
【方法】
単施設後方視的観察研究.2024年1月~2025年12月に当院で手術を受けた75歳以上の,術前循環器評価7項目が揃った111例を対象とした.BNP 92 pg/mL以上,入院時心電図所見に基づく循環器内科診察要,推定肺高血圧,AVF 2.5 m/s以上,IVC異常,LVEF低下,壁運動異常を探索的複合指標とし,0項目群と1項目以上群に分類した.術後7日以内の歩行器歩行到達を多変数ロジスティック回帰分析,退院時Barthel Index(BI)を重回帰分析で検討し,年齢,性別,HDS-R,入院前独歩を調整した.統計学的有意水準は5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,当院臨床研究倫理審査委員会の承認(承認番号:2026-08)を得て実施した.研究情報を当院ホームページに公開し,参加拒否の機会を保障し,匿名化し解析した.
【結果】
0項目群48例,1項目以上群63例,歩行器歩行到達67例,未到達44例であった.術前循環器関連所見は,歩行器歩行到達と独立した関連を認めなかった(調整オッズ比0.53,95%信頼区間0.19~1.46,p=0.222).HDS-R(オッズ比1.12,p<0.001)および入院前独歩(オッズ比3.72,p=0.008)は独立して関連した.退院時BIも術前循環器関連所見との関連を認めなかった(偏回帰係数-1.17,95%信頼区間-9.34~6.99,p=0.776).HDS-Rは退院時BI高値(偏回帰係数2.33,p<0.001),入院前独歩以外は低値(偏回帰係数-12.49,p=0.004)と独立して関連した.
【考察】
術前循環器関連所見は,認知機能および入院前移動能力の調整後,術後早期歩行および退院時ADLと独立した関連を示さなかった.当院では一部で,術前循環器評価に基づく輸液量調整の提案,頻脈に対する薬剤調整,術後共診が行われていた.こうした周術期管理が機能転帰への影響を軽減した可能性はあるが,介入効果を直接検証しておらず,仮説的解釈に留まる.術後7日以内の歩行器歩行到達には,循環器関連所見よりも認知機能および入院前移動能力が強く関連しており,術後早期の歩行計画に重要な評価項目と考えられる.理学療法士は循環器情報のみで歩行予後を判断せず,循環動態を含むフィジカルアセスメントを行い,医師等の多職種と連携しながら安全かつ早期離床・歩行を進める必要がある.
大腿骨近位部骨折術後患者では,早期歩行獲得やADL回復が重要な転帰である.術後7日時点の歩行能力は,その後の歩行回復を見通す指標となる.一方,高齢患者では循環器疾患を併存することが多いが,術前循環器評価所見と術後機能転帰との関連は十分に検討されていない.本研究は,術前循環器評価所見と術後7日以内の歩行器歩行到達および退院時ADLとの関連を検討した.
【方法】
単施設後方視的観察研究.2024年1月~2025年12月に当院で手術を受けた75歳以上の,術前循環器評価7項目が揃った111例を対象とした.BNP 92 pg/mL以上,入院時心電図所見に基づく循環器内科診察要,推定肺高血圧,AVF 2.5 m/s以上,IVC異常,LVEF低下,壁運動異常を探索的複合指標とし,0項目群と1項目以上群に分類した.術後7日以内の歩行器歩行到達を多変数ロジスティック回帰分析,退院時Barthel Index(BI)を重回帰分析で検討し,年齢,性別,HDS-R,入院前独歩を調整した.統計学的有意水準は5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,当院臨床研究倫理審査委員会の承認(承認番号:2026-08)を得て実施した.研究情報を当院ホームページに公開し,参加拒否の機会を保障し,匿名化し解析した.
【結果】
0項目群48例,1項目以上群63例,歩行器歩行到達67例,未到達44例であった.術前循環器関連所見は,歩行器歩行到達と独立した関連を認めなかった(調整オッズ比0.53,95%信頼区間0.19~1.46,p=0.222).HDS-R(オッズ比1.12,p<0.001)および入院前独歩(オッズ比3.72,p=0.008)は独立して関連した.退院時BIも術前循環器関連所見との関連を認めなかった(偏回帰係数-1.17,95%信頼区間-9.34~6.99,p=0.776).HDS-Rは退院時BI高値(偏回帰係数2.33,p<0.001),入院前独歩以外は低値(偏回帰係数-12.49,p=0.004)と独立して関連した.
【考察】
術前循環器関連所見は,認知機能および入院前移動能力の調整後,術後早期歩行および退院時ADLと独立した関連を示さなかった.当院では一部で,術前循環器評価に基づく輸液量調整の提案,頻脈に対する薬剤調整,術後共診が行われていた.こうした周術期管理が機能転帰への影響を軽減した可能性はあるが,介入効果を直接検証しておらず,仮説的解釈に留まる.術後7日以内の歩行器歩行到達には,循環器関連所見よりも認知機能および入院前移動能力が強く関連しており,術後早期の歩行計画に重要な評価項目と考えられる.理学療法士は循環器情報のみで歩行予後を判断せず,循環動態を含むフィジカルアセスメントを行い,医師等の多職種と連携しながら安全かつ早期離床・歩行を進める必要がある.
