講演情報

[56]集中治療後に呼吸サルコペニアを呈した一症例に対する吸気筋トレーニングの効果

*十河 郁弥1、宮崎 慎二郎1、長井 梓苑1、林野 収成1、北山 奈緒美1 (1. KKR高松病院 リハビリテーションセンター)

キーワード:

集中治療、呼吸サルコペニア、吸気筋トレーニング

【はじめに】
 骨格筋量および筋力低下を特徴とするサルコペニアは疾患の回復遅延や入院期間の延長、退院後の生活自立度の低下につながる。なかでも呼吸筋力の低下を伴う呼吸サルコペニアは,呼吸困難や運動耐容能低下を引き起こし,ADLや予後の悪化につながる可能性がある。人工呼吸器管理を伴う集中治療では,薬剤性の筋障害など複雑な要因が関連し横隔膜萎縮が誘発され呼吸サルコペニアにつながる可能性がある。しかし,呼吸サルコペニアに対する理学療法の介入効果の報告は少なく,その臨床的意義は明らかではない。今回,急性心筋梗塞後に心肺停止を来し集中治療後の身体機能低下に加え、呼吸サルコペニアを呈した症例に対し,理学療法を実施したため報告する。
【方法】
 本症例は67歳の男性である。第1病日に心肺停止後、前医に救急搬送された。ECMOとImpellaの補助循環を使用しながらのCAGにて#6の急性心筋梗塞と診断され、PCIを施行された。第15病日にECMO、第20病日にImpella、第22病日に人工呼吸器から離脱となった。理学療法も実施していたが、労作時の息切れなどが強く自宅復帰が困難な状態であったため、第43病日に当院に回復期リハビリテーション目的に転院となった。転院後、吸気筋力は45cmH2O(対予測値:58.5%)、四肢骨格筋量は6.2kg/m²と呼吸サルコペニアを認めた。その他、握力は30.8kg、10m歩行速度は1.0m/sec、SPPBは10点であった。連続歩行距離は60mで呼吸困難や全身の疲労を認め(修正Borg Scale:6)、休息が必要であった。評価結果から下肢筋力トレーニングや有酸素運動、吸気筋トレーニングを14日間、運動負荷を漸増しながら実施した。また、管理栄養士とも連携し、栄養サポートも併用した。
【説明と同意】
 今回の発表に際し、本人に目的・方法・自己決定権の尊重・プライバシーの保護について十分に説明を行い、同意を得た。
【結果】
 第57病日の再評価の結果、吸気筋力は59cmH2O(対予測値:76.7%)、握力は36.4kg、10m歩行速度は1.1m/sec SPPBは11点へと改善を認めた。連続歩行距離は100mまで延長し呼吸困難や全身の疲労(修正Borg Scale:3)の改善も認めたことから第62病日に自宅退院が可能となった。
【考察】
 集中治療を要する重症患者では身体機能やADLが低下することが明らかとなっている。さらに、本症例において呼吸サルコペニアを合併することで、エルゴリフレックスが助長され、労作時の呼吸困難などが強く、身体機能やADLがより低下していたと考える。そこで、下肢筋力トレーニングと有酸素運動に加え、呼吸サルコペニアに対する吸気筋トレーニングや栄養サポートを実施することで吸気筋力が改善し、労作時の呼吸困難の改善につながったと考える。