講演情報
[1]人工股関節全置換術後の階段一足一段昇降動作と術前股関節周囲筋の筋断面積および筋質との関連
*山本 晃平1、玉谷 高広1、武市 杏1、西本 篤史1、宮本 智彦1、野間 喜彦2 (1. 社会医療法人川島会 川島病院 リハビリテーション技術科、2. 社会医療法人川島会 川島病院 糖尿病内科)
キーワード:
人工股関節全置換術、階段一足一段昇降、大腰筋筋質
【はじめに,目的】
人工股関節全置換術(THA)後において,階段一足一段昇降動作は難易度が高く,日常生活動作の中でも患者満足度に影響する重要な動作である.術後も一足一段昇降が困難となる症例は少なくなく,その要因については十分に明らかにされていない.先行研究では,THA後の機能予測因子として下肢筋力や筋断面積の検討がされているが、筋内脂肪浸潤を反映する筋質に着目した報告は限られており,特に階段昇降動作と筋質との関連について検討した研究は少ない.本研究の目的は,術前CT画像を用いた股関節周囲筋の筋断面積(CSA)および筋質(CT値)と,術後3ヶ月時点における一足一段昇降動作との関連を明らかにすることである.
【方法】
対象は初回THAを施行した14例とした.術後3ヶ月において,手すりを使用せず一足一段で階段昇降が可能であった症例を可能群7例,不可能であった症例を不可群7例とし2群に分類した.術前CT画像を用いて,小殿筋,中殿筋,大殿筋および大腰筋のCSAおよびCT値を算出した.各指標は同一スライスにおいて手動で3回測定し,その平均値を代表値として用いた.さらに股関節屈曲筋力,外転筋力および膝伸展筋力をハンドヘルドダイナモメーターにて測定した.加えて,TUGおよび10m快適歩行時間を評価した.群間比較にはMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は川島病院倫理審査委員会の承認(承認番号:1112)を受け,ヘルシンキ宣言に基づき実施された.同意取得に関しては口頭および書面にて説明し同意を得た.
【結果】
両側股関節屈曲筋力,外転筋力,膝伸展筋力,ならびに殿筋群および大腰筋のCSAには,両群間で有意差を認めなかった.また,TUGおよび10m快適歩行時間にも有意差を認めなかった.一方,大腰筋CT値は両側ともに階段可能群で有意に高値を示した(p<0.05).殿筋群のCT値には有意差を認めなかった.
【考察】
THA後における一足一段昇降動作には,大腰筋の筋質が関与する可能性が示唆された.本研究では筋力,CSAおよび歩行能力に差を認めなかった一方,術前の大腰筋CT値において患側および健側の両側で有意差を認めた.階段昇降は平地歩行と異なり,下肢を段上へ引き上げる股関節屈曲運動と体幹・骨盤の安定性を同時に要求する課題である.大腰筋CT値の低下は,こうした動作時の筋機能低下を反映していると考えられ,筋力や筋量では捉えきれない質的要素が動作成否に影響した可能性がある.また,非術側大腰筋CT値にも差を認めたことから,階段昇降能力は片側機能のみでなく,両側筋の協調的な機能に依存する動作であることが示唆される.以上より,術前の大腰筋の筋質評価は,一足一段昇降動作を予測する上で指標となる可能性があり,理学療法介入を検討する上で一助になると考える.
人工股関節全置換術(THA)後において,階段一足一段昇降動作は難易度が高く,日常生活動作の中でも患者満足度に影響する重要な動作である.術後も一足一段昇降が困難となる症例は少なくなく,その要因については十分に明らかにされていない.先行研究では,THA後の機能予測因子として下肢筋力や筋断面積の検討がされているが、筋内脂肪浸潤を反映する筋質に着目した報告は限られており,特に階段昇降動作と筋質との関連について検討した研究は少ない.本研究の目的は,術前CT画像を用いた股関節周囲筋の筋断面積(CSA)および筋質(CT値)と,術後3ヶ月時点における一足一段昇降動作との関連を明らかにすることである.
【方法】
対象は初回THAを施行した14例とした.術後3ヶ月において,手すりを使用せず一足一段で階段昇降が可能であった症例を可能群7例,不可能であった症例を不可群7例とし2群に分類した.術前CT画像を用いて,小殿筋,中殿筋,大殿筋および大腰筋のCSAおよびCT値を算出した.各指標は同一スライスにおいて手動で3回測定し,その平均値を代表値として用いた.さらに股関節屈曲筋力,外転筋力および膝伸展筋力をハンドヘルドダイナモメーターにて測定した.加えて,TUGおよび10m快適歩行時間を評価した.群間比較にはMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は川島病院倫理審査委員会の承認(承認番号:1112)を受け,ヘルシンキ宣言に基づき実施された.同意取得に関しては口頭および書面にて説明し同意を得た.
【結果】
両側股関節屈曲筋力,外転筋力,膝伸展筋力,ならびに殿筋群および大腰筋のCSAには,両群間で有意差を認めなかった.また,TUGおよび10m快適歩行時間にも有意差を認めなかった.一方,大腰筋CT値は両側ともに階段可能群で有意に高値を示した(p<0.05).殿筋群のCT値には有意差を認めなかった.
【考察】
THA後における一足一段昇降動作には,大腰筋の筋質が関与する可能性が示唆された.本研究では筋力,CSAおよび歩行能力に差を認めなかった一方,術前の大腰筋CT値において患側および健側の両側で有意差を認めた.階段昇降は平地歩行と異なり,下肢を段上へ引き上げる股関節屈曲運動と体幹・骨盤の安定性を同時に要求する課題である.大腰筋CT値の低下は,こうした動作時の筋機能低下を反映していると考えられ,筋力や筋量では捉えきれない質的要素が動作成否に影響した可能性がある.また,非術側大腰筋CT値にも差を認めたことから,階段昇降能力は片側機能のみでなく,両側筋の協調的な機能に依存する動作であることが示唆される.以上より,術前の大腰筋の筋質評価は,一足一段昇降動作を予測する上で指標となる可能性があり,理学療法介入を検討する上で一助になると考える.
