講演情報

[26]脳卒中片麻痺後にstiff-knee patternを呈し歩行速度・歩容改善に知覚入力型インソール®が有効であった一症例

*近藤 葉平1,2、長谷川 正哉2、川﨑 元敬3 (1. 四国こどもとおとなの医療センター リハビリテーション科、2. 県立広島大学大学院 総合学術研究科 保健福祉学専攻、3. 四国こどもとおとなの医療センター 疼痛医療センター科/リハビリテーションセンター)

キーワード:

stiff-knee pattern、ロッカー機能、知覚入力型インソール®

【はじめに】
脳卒中後の歩行障害において,大腿四頭筋の過反射や推進力低下を背景に,歩行周期を通じて膝関節が軽度屈曲位に固定されるstiff-knee pattern(以下SKP)を呈する症例は多い.SKPは足関節ロッカー機能の制限や歩行速度の低下を招く要因となる.今回,運動麻痺は軽度であるものの,SKPにより歩行能力が固定化していた症例に対し,足底の突起を知覚することで荷重位置の自己認識を促す知覚入力型インソール®(以下PSI)を用いたアプローチを実施した.PSIによる歩容の変容が歩行速度および介入終了後の維持効果に与える影響を検討したので報告する.
【方法】
症例は右視床出血により左片麻痺を呈した70代男性.初期評価(入院22病日)では,Fugl-Meyer Assessment(以下FMA)下肢項目23点,FMA感覚項目10点,麻痺側膝伸展筋力(μ-Tas MF-01)0.32kgf/Kg,非麻痺側膝伸展筋力0.61kgf/Kg,快適歩行速度0.56m/s,最大歩行速度0.58m/s,観察的歩容評価としてG.A.I.T24点.歩行はSKPを呈し,足底接地やpush offの不足が顕著であった.介入デザインは,PSIを用いた歩行練習3日間(1日40分)と,その後はPSIを用いない歩行練習4日間(介入終了後の維持確認)とした.PSIは可変式の突起を貼付し,個人の感覚特性に応じた刺激を柔軟に調整可能であるため本症例に対しては段階的に,①第1・5中足骨頭への貼付によるフォアフットロッカーの意識,②踵部への貼付によるヒールロッカーの意識の2段階で介入した.
【説明と同意】
ヘルシンキ宣言を遵守し,対象者には本発表の目的,倫理的配慮について書面にて説明し,同意を得た.
【結果】
最終評価(29病日)において,FMA下肢項目,FMA感覚項目,膝伸展筋力に変化は認められなかった.快適歩行速度0.69m/s,最大歩行速度0.83m/sと向上し,G.A.I.T8点へと減点(改善)した.歩容面では,初期接地では踵接地と膝伸展角度の向上,遊脚中期では膝屈曲によるトゥクリアランスの向上,前遊脚期ではプッシュオフの出現により歩幅の増大が確認された.
【考察】
本症例では,PSI介入期間中に歩容が改善し,介入終了後の期間においても歩行速度の向上が維持された.これはPSIを用いた介入による動作変容が短期的に維持された可能性を示唆している.段階的に意識部位を分けた介入では,症例にとって適切な情報量となり,足底感覚への注意の焦点化を促したと考えられる.その結果,足部のロッカー機能が適正化され,SKPの改善と推進力の向上に繋がったと推察される.感覚入力への適切な介入は,運動麻痺が軽度で歩行パターンが固定化している症例に対し,動作変容を促す有効な手段となり得ることが示された.