講演情報

[48]健常成人男性における立位姿勢安定度評価指標 (IPS) の関連因子の検討― 坐位IPSおよび下肢・体幹機能との関連 (予備的検討 ) ―

*伊井 孝志1、出口 憲市2、森田 伸1 (1. 香川大学医学部付属病院 医療技術部 リハビリテーション部門、2. 徳島県鳴門病院 医療技術局)

キーワード:

立位バランス、坐位バランス、下肢筋力・筋量,体幹筋力・筋量

【はじめに,目的】高齢者の転倒は要介護状態を引き起こす要因の第3位であり,その予防が公衆衛生上の課題となっている.的確な転倒リスクの把握には,立位バランス能力の定量化が必要であり,近年,天井効果のない立位姿勢安定度評価指標 (立位IPS) が注目されている.しかし,立位保持からの重心移動に難渋する症例においては,評価が容易ではないという課題がある.先行研究において,坐位バランス能力は将来の立位バランスや歩行能力の予測因子であり,重心移動時に働く体幹の予測的姿勢調節 (APA) は立位,坐位における共通の中枢性プログラムに依存していることが報告されている.そのため,姿勢安定性が優位な坐位IPSが立位IPSと連動していれば,立位不安定な症例における代替評価や早期の転倒リスク予測に寄与できる可能性があるが,両指標の直接的な関連性は十分に明らかになっていない.そこで本研究では,立位IPSと坐位IPS及び各種身体機能因子との関連性を検証することを目的とした.【方法】既往のない健常成人男性13名(平均年齢21.7±2.2歳,BMI22.7±3.1kg/㎡)を対象とした.重心動揺計(アニマ社製GW-5000)を用いて立位および坐位IPSを算出した.身体機能因子として,等尺性膝伸展筋力,腹圧上昇を伴う体幹共同収縮力(体幹筋力),骨格筋量指数(SMI),下肢筋量,体幹筋量,位相角(PhA)を測定した.統計解析はShapiro-Wilk検定で正規性を確認後,全変数で正規性が認められたためPearsonの積率相関係数を用いた.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮】本研究は徳島県鳴門病院倫理委員会の承認を得て,説明同意を得た被検者を対象とした.【結果】立位IPSと坐位IPSとの間にのみ有意な正の相関を認めた(r=0.61,p=0.028).一方で,膝伸展筋力や体幹筋力,SMI,PhA,各部位の筋量など,他の身体機能因子との間には関連が認められなかった.【考察】従来のバランス評価は筋力や筋量との関連が多く報告されているが,本研究では坐位IPSと立位IPSとの間にのみ有意な正の相関が示された.足部感覚や下肢筋力が保たれた若年健常者では,四肢筋量や体幹筋力よりも高次な姿勢制御戦略が座位および立位のIPSに寄与している可能性が示唆された.本研究の限界として小標本による統計的検出力不足があるため,今後は高齢者をはじめとする対象者の層別化と症例数の蓄積が必要である.本評価法の検証を進めることで,立位保持困難症例に対しても坐位IPSを用いた動的バランス評価と転倒リスク予測が可能となり,早期からの効果的な転倒予防アプローチに寄与できる可能性が示唆された