講演情報
[66]急性期高齢内科患者における退院時ADL評価の系統的バイアスに関する検討
―Katz IndexおよびBarthel Indexの階層構造に着目して―
*笠井 翔吾1,2 (1. 徳島県立中央病院 リハビリテーション技術科、2. 徳島県立海部病院 リハビリテーション技術科)
キーワード:
入院関連能力障害、病院後症候群、ADL評価
【はじめに】
高齢入院患者におけるADL評価は、入院関連能力障害(HAD)の判定や退院支援に用いられている。しかし、退院時ADL評価は病棟環境や治療上の活動制限の影響を受け、患者本来の能力を十分反映していない可能性がある。また、評価尺度によるADL低下の解釈の違いが指摘されるが、階層構造の観点からの検討は少ない。本研究の目的は、急性期高齢内科患者におけるADL下位項目の階層構造を経時的に分析し、退院時ADL評価に内在する系統的バイアスの可能性をKatz Index(KI)およびBarthel Index(BI)を用いて検討することとした。
【方法】
後方視的観察研究とした。対象は令和4年1月~12月に急性期病院内科病棟へ入院した65歳以上の高齢患者のうち、入院前(入院前2週間)、退院時、退院後1か月の3時点でKIおよびBIを評価できた者とした。HADは入院前から退院時にADL下位項目が1項目以上低下した場合と定義した。各ADL下位項目の通過率から項目難易度を算出し、Mokken Scale Analysisを用いて階層構造を検討した。階層構造の強さはScale H、項目難易度順位の時点間一致性はSpearman順位相関係数を用いて評価した。統計解析にはR version 4.4.1を用い、有意水準は5%とした。
【倫理的配慮】
本研究は所属施設倫理審査委員会の承認を得て実施した。対象者情報は匿名化し、個人情報保護に配慮した。
【結果】
対象84例のうちHAD群42例、非HAD群42例であった。非HAD群ではKI(Scale H=0.93)、BI(Scale H=0.95)とも高い階層性を示し、項目順位も一定であった。一方、HAD群におけるKIのScale Hは入院前0.52、退院時0.52、退院後1か月0.54であり、入院前-退院時の順位一致性は低値(ρ=0.19)であったが、入院前-退院後1か月では改善(ρ=0.70)した。BIのScale Hは入院前0.76、退院時0.77、退院後1か月0.66であり、順位一致性は入院前-退院時ρ=0.90、入院前-退院後1か月ρ=0.95と高値を示した。
【考察】
非HAD群では高い階層性と安定した項目難易度順位が認められた。一方、HAD群では退院時に項目難易度順位の変動を認め、特にKIでは入院前との順位相関が低下していた。退院後1か月では順位相関が改善したことから、退院時評価で観察されたADL構造の変化には病棟環境や治療上の活動制限の影響が含まれる可能性が示唆された。また、KIとBIで異なる結果を示したことから、評価尺度の違いがADL低下の解釈に影響する可能性が示唆された。以上より、退院時ADL評価には評価時期および評価尺度の影響が含まれる可能性があり、HADの解釈には評価環境や尺度特性を考慮する必要がある。
高齢入院患者におけるADL評価は、入院関連能力障害(HAD)の判定や退院支援に用いられている。しかし、退院時ADL評価は病棟環境や治療上の活動制限の影響を受け、患者本来の能力を十分反映していない可能性がある。また、評価尺度によるADL低下の解釈の違いが指摘されるが、階層構造の観点からの検討は少ない。本研究の目的は、急性期高齢内科患者におけるADL下位項目の階層構造を経時的に分析し、退院時ADL評価に内在する系統的バイアスの可能性をKatz Index(KI)およびBarthel Index(BI)を用いて検討することとした。
【方法】
後方視的観察研究とした。対象は令和4年1月~12月に急性期病院内科病棟へ入院した65歳以上の高齢患者のうち、入院前(入院前2週間)、退院時、退院後1か月の3時点でKIおよびBIを評価できた者とした。HADは入院前から退院時にADL下位項目が1項目以上低下した場合と定義した。各ADL下位項目の通過率から項目難易度を算出し、Mokken Scale Analysisを用いて階層構造を検討した。階層構造の強さはScale H、項目難易度順位の時点間一致性はSpearman順位相関係数を用いて評価した。統計解析にはR version 4.4.1を用い、有意水準は5%とした。
【倫理的配慮】
本研究は所属施設倫理審査委員会の承認を得て実施した。対象者情報は匿名化し、個人情報保護に配慮した。
【結果】
対象84例のうちHAD群42例、非HAD群42例であった。非HAD群ではKI(Scale H=0.93)、BI(Scale H=0.95)とも高い階層性を示し、項目順位も一定であった。一方、HAD群におけるKIのScale Hは入院前0.52、退院時0.52、退院後1か月0.54であり、入院前-退院時の順位一致性は低値(ρ=0.19)であったが、入院前-退院後1か月では改善(ρ=0.70)した。BIのScale Hは入院前0.76、退院時0.77、退院後1か月0.66であり、順位一致性は入院前-退院時ρ=0.90、入院前-退院後1か月ρ=0.95と高値を示した。
【考察】
非HAD群では高い階層性と安定した項目難易度順位が認められた。一方、HAD群では退院時に項目難易度順位の変動を認め、特にKIでは入院前との順位相関が低下していた。退院後1か月では順位相関が改善したことから、退院時評価で観察されたADL構造の変化には病棟環境や治療上の活動制限の影響が含まれる可能性が示唆された。また、KIとBIで異なる結果を示したことから、評価尺度の違いがADL低下の解釈に影響する可能性が示唆された。以上より、退院時ADL評価には評価時期および評価尺度の影響が含まれる可能性があり、HADの解釈には評価環境や尺度特性を考慮する必要がある。
