講演情報
[14]健常高齢者と重度変形性膝関節症患者の歩行立脚期における下肢関節動態の比較 ― 統計的パラメトリックマッピングによる検討 ―
*川上 翔平1,2、河村 顕治2、内田 茂博3、片岡 悠介1、村本 浩章1、須崎 裕司1、清水 亮介1、松浦 淳子1、岡 裕之1、野口 速斗1 (1. 回生病院 リハビリテーション部、2. 吉備国際大学大学院 保健科学研究科、3. 広島国際大学 総合リハビリテーション学部)
キーワード:
変形性膝関節症、歩行解析、Statistical Parametric Mapping
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(膝OA)患者の歩行特性は多くの先行研究で報告されているが,その多くはピーク値など歩行周期の一部を抽出した解析であり,立脚期全体にわたる連続的な力学的変化は十分に明らかにされていない.統計的パラメトリックマッピング(Statistical Parametric Mapping:SPM)は歩行周期の時系列データ全体を対象とした統計検定手法であり,有意差の生じる位相を直接特定できる利点を有する.本研究の目的は,SPMを用いて健常高齢者と重度膝OA患者の歩行立脚期における下肢関節角度およびモーメントの差異を明らかにすることである.
【方法】
対象は健常高齢者48名(男性16名,女性32名,60.7±7.5歳)48肢およびKellgren-Lawrence分類IVの膝OA患者381名(男性77名,女性304名,72.4±7.6歳)381肢とした.各対象者につき1肢を解析対象とした.VICON MXにて快適歩行を計測し,立脚期を0-100%に時間正規化した.解析変数は股・膝・足関節の矢状面角度・モーメントおよび膝関節前額面の内反角度・前額面モーメントの計8変数とし,SPM独立t検定(α=0.05)で群間比較した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号2015-6).対象者には研究の目的と方法を説明し書面にて同意を得た.
【結果】
歩行速度は健常群1.38±0.17 m/sに対し膝OA群0.78±0.21 m/sであった.SPM解析では8変数すべてに有意差を認めた.前額面では膝内反角度が立脚期全体(0-99%,p<0.001,d=1.78)で膝OA群が有意に増大し,膝前額面モーメントも32-76%で有意差を示した(p<0.001).矢状面では膝伸展モーメントが荷重応答期(5-46%)および立脚終期(75-96%)で有意に低下し(p<0.001),足関節底屈モーメントも3-45%および65-91%で膝OA群が有意に低値を示した.なお,歩行速度をマッチングした感度分析(各群23肢,速度差p=0.248)では5/8変数で有意差が維持され,特に膝内反角度は立脚期全体(0-99%)で維持された.一方,股屈曲角度,膝前額面モーメントおよび足関節角度の群間差は消失した.
【考察】
膝内反角度の差は立脚期全体にわたり認められ,速度マッチング後も維持されたことから,疾患固有の構造的アライメント異常を反映している可能性が示された.矢状面のモーメント低下は荷重応答期および立脚終期に集中しており,内反アライメントの是正,荷重応答期の衝撃吸収機能改善,立脚終期のpush-off機能向上が位相に応じた理学療法介入のポイントとなりうる.
変形性膝関節症(膝OA)患者の歩行特性は多くの先行研究で報告されているが,その多くはピーク値など歩行周期の一部を抽出した解析であり,立脚期全体にわたる連続的な力学的変化は十分に明らかにされていない.統計的パラメトリックマッピング(Statistical Parametric Mapping:SPM)は歩行周期の時系列データ全体を対象とした統計検定手法であり,有意差の生じる位相を直接特定できる利点を有する.本研究の目的は,SPMを用いて健常高齢者と重度膝OA患者の歩行立脚期における下肢関節角度およびモーメントの差異を明らかにすることである.
【方法】
対象は健常高齢者48名(男性16名,女性32名,60.7±7.5歳)48肢およびKellgren-Lawrence分類IVの膝OA患者381名(男性77名,女性304名,72.4±7.6歳)381肢とした.各対象者につき1肢を解析対象とした.VICON MXにて快適歩行を計測し,立脚期を0-100%に時間正規化した.解析変数は股・膝・足関節の矢状面角度・モーメントおよび膝関節前額面の内反角度・前額面モーメントの計8変数とし,SPM独立t検定(α=0.05)で群間比較した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号2015-6).対象者には研究の目的と方法を説明し書面にて同意を得た.
【結果】
歩行速度は健常群1.38±0.17 m/sに対し膝OA群0.78±0.21 m/sであった.SPM解析では8変数すべてに有意差を認めた.前額面では膝内反角度が立脚期全体(0-99%,p<0.001,d=1.78)で膝OA群が有意に増大し,膝前額面モーメントも32-76%で有意差を示した(p<0.001).矢状面では膝伸展モーメントが荷重応答期(5-46%)および立脚終期(75-96%)で有意に低下し(p<0.001),足関節底屈モーメントも3-45%および65-91%で膝OA群が有意に低値を示した.なお,歩行速度をマッチングした感度分析(各群23肢,速度差p=0.248)では5/8変数で有意差が維持され,特に膝内反角度は立脚期全体(0-99%)で維持された.一方,股屈曲角度,膝前額面モーメントおよび足関節角度の群間差は消失した.
【考察】
膝内反角度の差は立脚期全体にわたり認められ,速度マッチング後も維持されたことから,疾患固有の構造的アライメント異常を反映している可能性が示された.矢状面のモーメント低下は荷重応答期および立脚終期に集中しており,内反アライメントの是正,荷重応答期の衝撃吸収機能改善,立脚終期のpush-off機能向上が位相に応じた理学療法介入のポイントとなりうる.
