講演情報

[2]大腿骨転子部骨折患者における術前CTを用いた股関節周囲筋評価と術後4ヶ月歩行能力との関連

*池脇 圭司1、川村 圭司1、江川 洋史2、宮城 亮2、澁谷 光敬3 (1. 徳島県立中央病院 リハビリテーション技術科、2. 徳島県立中央病院 整形外科、3. 徳島文理大学 保健福祉学部 理学療法学科)

キーワード:

大腿骨転子部骨折、歩行能力、筋質

【はじめに,目的】
大腿骨転子部骨折患者では術後の歩行能力回復が重要な転帰である.近年,サルコペニアの概念において筋量のみならず筋質の重要性が注目されているが,股関節周囲筋の筋量および筋質と術後歩行能力との関連については十分に検討されていない.本研究の目的は,術前CTを用いて評価した股関節周囲筋の筋量および筋質と術後4ヶ月歩行能力との関連を検討することとした.
【方法】
対象は2022年8月から2023年12月までに当院で大腿骨転子部骨折に対する手術を施行し,術後4ヶ月時点の歩行能力を追跡可能であった44例とした.受傷時CT画像を用いて対側大腿直筋,中殿筋および大殿筋の筋断面積(cross-sectional area:CSA)ならびにCT値を算出した.術後4ヶ月時点の屋外歩行能力を自立群と非自立群に分類し,患者背景および筋指標について群間比較を行った.また,相関分析およびロジスティック回帰分析を用いて関連因子を検討した.さらにROC解析により歩行自立予測能を評価した.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院倫理審査委員会の承認(承認番号:26-3)を得て実施した.対象者への説明および同意はオプトアウト方式にて実施し,個人情報保護に十分配慮した.
【結果】
群間比較では,年齢(p=0.037),術後30日時点の歩行能力(p=0.008),中殿筋CT値(p=0.002)および大殿筋CSA(p=0.021)に有意差を認めた.相関分析では,術後4ヶ月屋外歩行能力は中殿筋CT値(r=-0.540,p<0.01)および大殿筋CT値(r=-0.398,p=0.007)と有意な相関を示した.また,中殿筋CT値と大殿筋CT値との間には強い正の相関を認めた(r=0.776,p<0.01).ロジスティック回帰分析では,中殿筋CT値(OR=1.160,95%CI:1.036–1.299,p=0.010)および大殿筋CSA(OR=1.465,95%CI:1.114–1.927,p=0.006)が術後120日屋外歩行自立の独立関連因子として抽出された.ROC解析では,中殿筋CT値のAUCは0.778(95%CI:0.635–0.921,p=0.002)であり,カットオフ値は22.6HU(感度83.3%,特異度69.2%)であった.また,年齢,中殿筋CT値および大殿筋CSAを用いた予測モデルのAUCは0.857(95%CI:0.746–0.968,p<0.001)であった.
【考察】
大腿骨転子部骨折患者において,術前CTで評価した中殿筋CT値および大殿筋CSAは術後4ヶ月屋外歩行自立の独立関連因子であった.中殿筋では筋質,大殿筋では筋量が歩行能力に関連する可能性が示唆された.また,術前CTを用いた股関節周囲筋評価は歩行予後予測に有用である可能性が示された.