講演情報
[57]高齢心不全患者における歩行開始の遅延に影響する因子の検討
*戒能 惟斗1、喜多谷 周平1、久保 輝明1、井上 純一1、梶原 亘弘1 (1. 三豊総合病院企業団 リハビリテーション部)
キーワード:
高齢心不全患者、歩行開始遅延、早期離床
【目的】
高齢心不全患者は治療に伴う安静や活動制限によりADL低下を認めやすい.そのため早期心臓リハビリテーション(以下心リハ)が重要であり,令和8年診療報酬改定においても早期離床が強調されている.我々の先行調査では,高齢心不全患者において歩行開始までの期間が転帰先に影響する独立因子であり,3日以内の歩行開始が良好な転帰先と関連することが示唆された.しかし,歩行開始の遅延を規定する因子の報告は渉猟した範囲では限られている.そこで,本研究では高齢心不全患者の歩行開始の遅延に影響する因子を検討することとした.
【方法】
2022年1月から2023年1月に入院前ADLが自立し,自宅から心不全で入院した75歳以上の高齢心不全患者94例のうち,除外基準を満たした77例を対象とした.歩行開始まで4日以上を要した歩行遅延群42例と3日以内に歩行開始した早期歩行群35例の2群に分類した.調査項目は患者背景(年齢,性別,認知症・併存疾患,入院前Barthel Index,NYHA,NT-proBNP,HFrEF),心リハ経過(PT介入までの期間,座位・立位開始までの期間,ICU入室,バルン・点滴挿入・酸素投与などルート類,せん妄,栄養障害リスク,週末リハビリ処方)とし,後方視的に調査した.統計解析はR Ver4.5.1を用い,単変量解析および多重ロジスティック回帰分析を行い,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者における個人情報の保護など十分に留意し,匿名化した上で実施した.
【結果】
単変量解析では,歩行遅延群でNT-proBNPは有意に高値であり,PT介入開始までの期間,座位・立位開始までの期間が遅く,ICU入室,バルン・点滴挿入・酸素投与などルート類,栄養障害リスクを有する割合が有意に高かった(P<0.05).多重ロジスティック回帰分析(目的変数:歩行遅延の有無,説明変数:ICU入室の有無,栄養障害の有無,年齢,認知症の有無)では,ICU入室の有無(オッズ比8.575,95%CI:2.63~33.05,P=0.001),栄養障害リスクの有無(オッズ比3.635,95%CI:1.25~11.21,P=0.02)が歩行開始遅延と独立して関連する因子として抽出された.
【考察】
高齢心不全患者において,ICU入室および栄養障害リスクは歩行開始遅延と独立して関連していた.ICU入室は重症度に応じた全身管理に加え,ルート類留置など歩行開始を妨げる治療上の制約に関与している可能性が示唆された.また,栄養障害リスクは低栄養やフレイルを介して離床の進行を阻害すると考えられる.そのため,高齢心不全患者の歩行開始遅延を防ぐ為には,ICU入室患者および栄養障害リスクを有する患者を早期に抽出し,早期離床および栄養障害管理を含めた多職種による介入を行うことが重要と考えられた.
高齢心不全患者は治療に伴う安静や活動制限によりADL低下を認めやすい.そのため早期心臓リハビリテーション(以下心リハ)が重要であり,令和8年診療報酬改定においても早期離床が強調されている.我々の先行調査では,高齢心不全患者において歩行開始までの期間が転帰先に影響する独立因子であり,3日以内の歩行開始が良好な転帰先と関連することが示唆された.しかし,歩行開始の遅延を規定する因子の報告は渉猟した範囲では限られている.そこで,本研究では高齢心不全患者の歩行開始の遅延に影響する因子を検討することとした.
【方法】
2022年1月から2023年1月に入院前ADLが自立し,自宅から心不全で入院した75歳以上の高齢心不全患者94例のうち,除外基準を満たした77例を対象とした.歩行開始まで4日以上を要した歩行遅延群42例と3日以内に歩行開始した早期歩行群35例の2群に分類した.調査項目は患者背景(年齢,性別,認知症・併存疾患,入院前Barthel Index,NYHA,NT-proBNP,HFrEF),心リハ経過(PT介入までの期間,座位・立位開始までの期間,ICU入室,バルン・点滴挿入・酸素投与などルート類,せん妄,栄養障害リスク,週末リハビリ処方)とし,後方視的に調査した.統計解析はR Ver4.5.1を用い,単変量解析および多重ロジスティック回帰分析を行い,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者における個人情報の保護など十分に留意し,匿名化した上で実施した.
【結果】
単変量解析では,歩行遅延群でNT-proBNPは有意に高値であり,PT介入開始までの期間,座位・立位開始までの期間が遅く,ICU入室,バルン・点滴挿入・酸素投与などルート類,栄養障害リスクを有する割合が有意に高かった(P<0.05).多重ロジスティック回帰分析(目的変数:歩行遅延の有無,説明変数:ICU入室の有無,栄養障害の有無,年齢,認知症の有無)では,ICU入室の有無(オッズ比8.575,95%CI:2.63~33.05,P=0.001),栄養障害リスクの有無(オッズ比3.635,95%CI:1.25~11.21,P=0.02)が歩行開始遅延と独立して関連する因子として抽出された.
【考察】
高齢心不全患者において,ICU入室および栄養障害リスクは歩行開始遅延と独立して関連していた.ICU入室は重症度に応じた全身管理に加え,ルート類留置など歩行開始を妨げる治療上の制約に関与している可能性が示唆された.また,栄養障害リスクは低栄養やフレイルを介して離床の進行を阻害すると考えられる.そのため,高齢心不全患者の歩行開始遅延を防ぐ為には,ICU入室患者および栄養障害リスクを有する患者を早期に抽出し,早期離床および栄養障害管理を含めた多職種による介入を行うことが重要と考えられた.
