講演情報

[35]地域在住高齢者を対象とした1回椅子立ち上がり指標(csRSI-mod)の考案と測定特性・安全性の検証

*大西 康平1、近藤 慶承1 (1. 徳島文理大学 保健福祉学部 理学療法学科)

キーワード:

高齢者、椅子立ち上がりテスト、信頼性

【はじめに,目的】
地域在住高齢者の介護予防では、下肢機能を簡便かつ低負担に評価する手法が望まれる。標準的な5回椅子立ち上がりテスト(5STS)は反復起立を要し、圧迫骨折のリスクや実施規定の遂行不備が問題となる。本研究では、慣性センサーEnodePro®(以下Enode)を用いて立ち上がり時のPeak Velocity(PV)とTime to Peak Velocity(TPV)を計測し、Reactive Strength Index modifiedを応用した新規指標csRSI-mod(=PV/TPV)を考案した。目的は本指標の妥当性・信頼性・安全性をGRRASに準拠して検証することである。
【方法】
対象は地域在住の65歳以上の健常高齢者41名(男性15、女性26名)。Enodeを用いた1回の椅子立ち上がりを同一セッション内で2試行(間2〜3分休憩)実施しcsRSI-modを算出、5STS、10m歩行、握力を測定し各測定後にBorg CR-10でRPEを記録した。妥当性は各指標との相関、検者内信頼性は2試行のICC(3,1)と95%CIで評価し、SEMとMDC95を算出、Bland-Altman分析で一致度を確認した。1回立ち上がりと5STSのRPEはWilcoxon検定で比較した(有意水準両側5%、SPSS ver.28)。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿い、徳島文理大学倫理審査委員会の承認(R8-12)の上、対象者に目的・内容・リスクを口頭と書面で説明し自由意思による署名同意を得た。
【結果】
対象は41名(男性15、女性26名、平均年齢79.4±5.7歳)。csRSI-modは5STS(r=−0.48)、10m歩行時間(r=−0.57)、握力(r=+0.53)と有意な相関を示した(すべてp<0.01)。検者内信頼性はICC(3,1)=0.93(95%CI 0.86–0.96)と高く、SEM0.30、MDC95 0.84であった。構成要素別ではPVが握力と強く相関し(r=+0.71)、TPVは握力と相関を認めなかった(r=−0.11)。RPEは1回立ち上がり(中央値1)が5STS(中央値3)より有意に低かった(p<0.001)。
【考察】
csRSI-modは5STS・10m歩行と中等度の相関を示し、下肢機能を反映する妥当性と既存指標で捉えきれない補完性が示唆された。PVは握力と相関して筋力を、TPVは握力と独立して力発揮の速さを反映し、両者は異なる側面を捉える。また、検者内信頼性はICC=0.93と高く、MDC95は経時的な効果判定に活用できる実用的な基準と考えられる。1回のRPEは5STSより有意に低く低負担性が示され、地域での実用性が期待される。本研究は横断的検討であり、健常高齢者を対象とし男女比に偏りがある点、反応性や検者間信頼性の検証が今後の課題となる。