講演情報

[64]上部消化器癌術後の運動耐容能は3年生存率に影響する
-退院前に目標とすべき体力指標の探索-

*近藤 心1、鎌田 基夢1、斎藤 貴1、泊 綾音1、杉山 由佳1、友成 健1、山田 めぐみ1、松浦 哲也1 (1. 徳島大学病院リハビリテーション部)

キーワード:

上部消化器癌、生存率、運動耐容能

【はじめに,目的】上部消化器癌に対する根治的切除術は標準的治療の一つであるが、長期予後には依然として改善の余地がある。これまで予後に関連する因子として腫瘍の進行度や術後合併症の影響が報告されてきたが、身体機能の影響は不明である。特に上部消化器癌根治術は侵襲が高く、術後の身体機能は術前評価よりも退院時点の患者状態を反映する可能性がある。そこで本研究では、上部消化器癌術後患者において、退院前の運動耐容能が術後3年生存率に及ぼす影響を検討し、予後予測に有用な運動耐容能のカットオフ値を探索することを目的とした。
【方法】
対象は2014年4月から2024年6月の間、当院で上部消化器癌に対して根治的手術目的に入院した患者275名とした。除外基準は運動耐容能評価の欠損例および死亡退院例とした。運動耐容能は退院前3日以内に6分間歩行テストにより評価し、歩行距離(6MWD)を指標とした。アウトカムは術後3年間の全死亡(3yOS)とした。退院前6MWDが3yOSに及ぼす影響について、年齢、性別、原発臓器、病理学的ステージ、術後感染性合併症を共変量としたCox比例ハザードモデルを用いて検討した。また、3yOSを予測する6MWDの最適なカットオフ値をROC曲線解析により算出した。さらに、算出されたカットオフ値に基づき高運動耐容能群と低運動耐容能群に分類し、再発の有無別にKaplan–Meier曲線およびログランク検定を用いて生存率を比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は徳島大学病院倫理委員会の承認 (承認番号:3108-4)を受け、ヘルシンキ宣言に基づき実施された。本研究は後方視的研究であり、書面による同意取得は行わずオプトアウト形式を採用している。
【結果】
除外基準適用後、201名を最終解析対象とした。年齢中央値は68.0歳、女性48名、原発臓器は食道163名、食道胃接合部16名、胃22名であった。観察期間中に48名の死亡、66名の再発を認めた。多変量解析の結果、退院前6MWDは3yOSに独立して関連し、6MWDが10m高いごとに死亡リスクは5%低下した(HR 0.95、95%CI 0.93–0.98、p<0.001)。ROC曲線解析により、3yOSを予測する6MWDの最適カットオフ値は478mであった。カットオフ値に基づく生存率比較では、再発なし群において高運動耐容能群は有意に良好な生存率を示した(100.0% vs 84.4%, p=0.001)。一方、再発あり群では統計学的有意差は認めなかったものの、高運動耐容能群で良好な傾向を示した(48.8% vs 29.8%, p=0.072)。
【考察】
上部消化器癌術後患者において、退院前の6MWDは術後3年生存率に独立して関連する因子であった。また、退院前6MWD 478mは術後理学療法を進める上で一つの目標値となる可能性が示された。