講演情報

[75]当院における選択的脊髄後根切断術への理学療法士の関わり

*林 祥宏1、小田 翔太1、下川 貴大1、細田 里南1、寺西 裕器1,2 (1. 高知大学医学部附属病院リハビリテーション部、2. 高知大学整形外科)

キーワード:

選択的脊髄後根切除術、脳性麻痺、痙縮

【はじめに】脳性麻痺児に対する選択的脊髄後根切断術(Selective Dorsal Rhizotomy:SDR)は、一般に下肢痙縮および下肢機能の改善を図る外科的治療であり、脊髄反射弓の求心路である神経根を細糸に分け、異常反応を示す神経根細糸を選択的に切離する手術である。当院では2024年から四国唯一のSDR実施施設として手術を施行しており、その治療中における理学療法士の関わりおよび治療経過について代表的な症例を通して報告する。【SDRにおける理学療法士の役割】術前は痙縮の程度や機能障害の評価を行い、得られた結果を医師と共有する。また術中では、理学療法士が股関節内転筋群、膝関節伸展・屈曲筋群、足関節底屈・背屈筋群を触知して筋緊張を確認し、神経根細糸への電気刺激時によって生じる異常筋収縮を評価している。各筋の針筋電図の波形と触診所見を統合して、執刀医が切離する神経根細糸を決定する。術後プロトコルは3日間のベッド上安静の後、段階的な離床が許可され、転院まで(約2週間)の間に、術前の患児のレベルに応じて機能改善に向けて運動療法を実施している。【症例紹介】粗大運動能力分類システム(Gross Motor Functional Classification System:GMFCS)Ⅰの学童期の脳性麻痺女児であり、日常生活に困難さは感じていないが、下腿三頭筋に痙縮を認め、筋緊張亢進による筋短縮が危惧されるためSDRを施行することとなった。術前Modified Ashworth Scale(MAS)は腓腹筋1+、ヒラメ筋1であり、足関節背屈可動域(膝伸展位)は-5°であった。【結果】症例のL2~S2後根の平均切断率は13.0%であった。術後MASは腓腹筋0、ひらめ筋0と改善を認め、足関節背屈可動域(膝伸展位)は0°であった。術後6日目には独歩可能であり、踵接地も見られた。術後6ヶ月時点でも安定して歩行可能であり、本人や家族の高い満足度が得られた。【結論】本症例では、術後早期から歩行の再獲得が可能であった。SDR症例の特徴として、痙縮を利用した動作や歩行のみ経験しており、術後に生じる感覚の再学習には時間を要することが多く、動作や歩行の再獲得までに中長期的な介入が必要となる場合が多い。本症例は断裂率が低く、GMFCS:Ⅰで運動能力が高かったこと、筋緊張が足関節に限局していたことが早期の歩行獲得に繋がったと考える。SDRでは、術中の筋電図波形の結果でどの神経根細糸を切離するか悩むことは少なくない。患児のレベルに応じて切離する神経根細糸の決定に触診で関わることは理学療法士の極めて重要な役割である。【倫理的配慮,説明と同意】本人、家族へ本報告の趣旨及び個人情報の取扱いについて十分に説明し、書面で同意を得た。