講演情報
[76]上下肢の低筋力重複は単独の低筋力より同種造血幹細胞移植後の死亡リスクを高める
*杉山 由佳1、近藤 心1、泊 綾音1、鎌田 基夢1、斎藤 貴1、増田 有紀1、友成 健1、山田 めぐみ1、松浦 哲也1 (1. 徳島大学病院 リハビリテーション部)
キーワード:
同種造血幹細胞移植、筋力、5年全生存率
【はじめに,目的】
造血幹細胞移植患者では、移植前の握力や膝伸展筋力がそれぞれ移植後の全生存率に関連することが報告されているが、複数部位の低筋力を有する患者における全生存率への影響については明らかではない。本研究では、同種造血幹細胞移植患者を対象に、握力もしくは膝伸展筋力の一方が低筋力、あるいは両方とも低筋力であることが移植後5年全生存(OS)リスクを層別化できるか検討した。
【方法】
本研究は後方視的コホート研究である。徳島大学病院で2012年1月〜2025年11月に同種造血幹細胞移植を施行した患者を対象とした。筋力は握力と膝伸展筋力とし、移植前に2回測定後、最大値を採用した。膝伸展筋力は体重比で評価した。本研究における低筋力を規定するため、ROC曲線を用いて、OSを予測する最適なカットオフ値を男女別に算出した。患者をカットオフ値に基づき、握力と膝伸展筋力の両方とも非低筋力群(HH)、一方のみ低筋力群(LH)、両方とも低筋力群(LL)の3群に分類した。OSはカプラン・マイヤー法を用いて算出し、群間の生存率の差の評価にはログランク検定を使用した。低筋力の組み合わせがOSに及ぼす影響は、Cox比例ハザードモデルを用いて多変量解析を行った。共変量には年齢、性別、疾患状態、併存疾患(HCT-CI)を用いた。統計学的有意水準は5%とし、統計解析にはEZR ver1.70を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は徳島大学病院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号3108-4)。
【結果】
合計123名が解析対象者となった。ROC曲線の結果、OSを予測する握力のカットオフ値は、男性で35.4kg(感度:0.789、特異度:0.698、曲線下面積[AUC]0.734)、女性で 22.4kg(感度:0.75、特異度:0.424、AUC:0.573)だった。膝伸展筋力(体重比)のカットオフ値は、男性で51.2%(感度:0.556、特異度:0.775、AUC:0.642)、女性で42.8%(感度:0.7、特異度:0.727、AUC:0.691)だった。対象者はHH39名、LH50名、LL34名に分類され、OSはそれぞれ86.2%、48.7%、28.4%で有意差があった(p<0.001)。LHは HR=3.72、95%CI:1.38–10.00、p=0.009、LLはHR=6.86、95%CI:2.52–18.67、p<0.001と有意にリスクが上昇していた。
【考察】
本研究より、握力及び膝伸展筋力の両方が低筋力である患者は、一方のみが低筋力である患者よりも5年全生存率がさらに低いことがわかった。このことから、握力と膝伸展筋力を組み合わせた筋力評価は単独の筋力評価では捉えきれない予後不良リスクを把握し、移植前のリスク層別化に有用である可能性が示唆された。
造血幹細胞移植患者では、移植前の握力や膝伸展筋力がそれぞれ移植後の全生存率に関連することが報告されているが、複数部位の低筋力を有する患者における全生存率への影響については明らかではない。本研究では、同種造血幹細胞移植患者を対象に、握力もしくは膝伸展筋力の一方が低筋力、あるいは両方とも低筋力であることが移植後5年全生存(OS)リスクを層別化できるか検討した。
【方法】
本研究は後方視的コホート研究である。徳島大学病院で2012年1月〜2025年11月に同種造血幹細胞移植を施行した患者を対象とした。筋力は握力と膝伸展筋力とし、移植前に2回測定後、最大値を採用した。膝伸展筋力は体重比で評価した。本研究における低筋力を規定するため、ROC曲線を用いて、OSを予測する最適なカットオフ値を男女別に算出した。患者をカットオフ値に基づき、握力と膝伸展筋力の両方とも非低筋力群(HH)、一方のみ低筋力群(LH)、両方とも低筋力群(LL)の3群に分類した。OSはカプラン・マイヤー法を用いて算出し、群間の生存率の差の評価にはログランク検定を使用した。低筋力の組み合わせがOSに及ぼす影響は、Cox比例ハザードモデルを用いて多変量解析を行った。共変量には年齢、性別、疾患状態、併存疾患(HCT-CI)を用いた。統計学的有意水準は5%とし、統計解析にはEZR ver1.70を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は徳島大学病院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号3108-4)。
【結果】
合計123名が解析対象者となった。ROC曲線の結果、OSを予測する握力のカットオフ値は、男性で35.4kg(感度:0.789、特異度:0.698、曲線下面積[AUC]0.734)、女性で 22.4kg(感度:0.75、特異度:0.424、AUC:0.573)だった。膝伸展筋力(体重比)のカットオフ値は、男性で51.2%(感度:0.556、特異度:0.775、AUC:0.642)、女性で42.8%(感度:0.7、特異度:0.727、AUC:0.691)だった。対象者はHH39名、LH50名、LL34名に分類され、OSはそれぞれ86.2%、48.7%、28.4%で有意差があった(p<0.001)。LHは HR=3.72、95%CI:1.38–10.00、p=0.009、LLはHR=6.86、95%CI:2.52–18.67、p<0.001と有意にリスクが上昇していた。
【考察】
本研究より、握力及び膝伸展筋力の両方が低筋力である患者は、一方のみが低筋力である患者よりも5年全生存率がさらに低いことがわかった。このことから、握力と膝伸展筋力を組み合わせた筋力評価は単独の筋力評価では捉えきれない予後不良リスクを把握し、移植前のリスク層別化に有用である可能性が示唆された。
