講演情報
[50]ADL自立度が高い急性期慢性硬膜下血種の退院先に影響する因子の検討
*小山 達也1、大江 健斗1、中村 壮1、吉田 祐里1、小田 峻也1、梶原 亘弘1 (1. 三豊総合病院 リハビリテーション部)
キーワード:
慢性硬膜下血種、RCA Index、mRS
【はじめに,目的】
慢性硬膜下血腫(CSDH)は脳実質損傷を伴わない圧排性病変で、一般に予後良好とされる。しかし入院前自立例でも自宅退院困難例が存在し、一般認識との乖離が示唆される。本研究では入院前mRS0〜2のCSDH患者を対象に、諸因子と退院先との関連を検討し、急性期の転帰予測・退院支援に資することを目的とした。
【方法】
過去5年間(2021〜2025年)に当院でCSDHと診断された144例のうち、再発例、施設・他院入院例、両側血腫例、保存的治療例、入院前mRS3以上を除外し、欠損のない55例(自宅退院群45例、転院・施設退院群10例)を対象とした。収集項目は①背景(年齢、性別、家族構成)、②画像所見(病巣側、正中軸偏位、RCA Index、島槽)、③臨床的特徴(BMI、受傷機転、薬剤、介入時認知症)、④機能評価(介入時MMSE、歩行FIM、Barthel Index、帰結時神経症状)とした。R(version 4.6.0)を用いFisher検定、Mann-Whitney U検定で2群間を比較し、有意水準5%とした。RCA IndexはROC解析でカットオフ値を算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言及び個人情報保護方針に則り、診療録情報を匿名化した上で後方視的に収集した。
【結果】
2群間比較で、家族構成(独居/同居、p<0.01)、介入時認知症(p=0.03)、RCA Index(p<0.01)、島槽(p=0.04)、介入時MMSE(p=0.03)、終了時BI(p=0.02)に有意差を認めた。正中軸偏位、歩行FIM、内服薬に有意差なし。RCA IndexのAUCは0.83、カットオフ値0.129(95%CI: 0.68-0.98)であった。
【考察】
当院全症例(144例)の帰結時mRS3–6は43.1%で全国データ(28.4%)を上回ったが、急性期リハ終了時点の評価である点を踏まえると妥当な範囲と考えられた。入院前mRS0–2のADL良好群でも18.2%(10例)が急性期のみで自宅退院に至らず、CSDHが急性期に認知・運動機能の脆弱性を生じさせる可能性が考えられた。正中偏位に差を認めなかった一方、RCA Indexおよび島槽の差から、圧排効果よりも脳萎縮に代表される脳予備能が急性期転帰を規定する可能性が示唆された。脳萎縮は血腫の進展を許容する一方、術後の脳実質再膨張や機能回復を遅延させる二相性を有すると考えられる。介入時認知症やMMSEの有意差からも、脳萎縮・認知機能低下が術後ADL回復遅延や自宅退院困難の要因となる可能性が考えられた。ROC曲線よりカットオフ値0.129以上と規定し、これを上回る症例は急性期リハのみでは転帰が決着しない可能性が懸念される。早期から社会的背景も加味し、回復期リハを含めた長期的視点での退院支援を検討する必要がある。
慢性硬膜下血腫(CSDH)は脳実質損傷を伴わない圧排性病変で、一般に予後良好とされる。しかし入院前自立例でも自宅退院困難例が存在し、一般認識との乖離が示唆される。本研究では入院前mRS0〜2のCSDH患者を対象に、諸因子と退院先との関連を検討し、急性期の転帰予測・退院支援に資することを目的とした。
【方法】
過去5年間(2021〜2025年)に当院でCSDHと診断された144例のうち、再発例、施設・他院入院例、両側血腫例、保存的治療例、入院前mRS3以上を除外し、欠損のない55例(自宅退院群45例、転院・施設退院群10例)を対象とした。収集項目は①背景(年齢、性別、家族構成)、②画像所見(病巣側、正中軸偏位、RCA Index、島槽)、③臨床的特徴(BMI、受傷機転、薬剤、介入時認知症)、④機能評価(介入時MMSE、歩行FIM、Barthel Index、帰結時神経症状)とした。R(version 4.6.0)を用いFisher検定、Mann-Whitney U検定で2群間を比較し、有意水準5%とした。RCA IndexはROC解析でカットオフ値を算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言及び個人情報保護方針に則り、診療録情報を匿名化した上で後方視的に収集した。
【結果】
2群間比較で、家族構成(独居/同居、p<0.01)、介入時認知症(p=0.03)、RCA Index(p<0.01)、島槽(p=0.04)、介入時MMSE(p=0.03)、終了時BI(p=0.02)に有意差を認めた。正中軸偏位、歩行FIM、内服薬に有意差なし。RCA IndexのAUCは0.83、カットオフ値0.129(95%CI: 0.68-0.98)であった。
【考察】
当院全症例(144例)の帰結時mRS3–6は43.1%で全国データ(28.4%)を上回ったが、急性期リハ終了時点の評価である点を踏まえると妥当な範囲と考えられた。入院前mRS0–2のADL良好群でも18.2%(10例)が急性期のみで自宅退院に至らず、CSDHが急性期に認知・運動機能の脆弱性を生じさせる可能性が考えられた。正中偏位に差を認めなかった一方、RCA Indexおよび島槽の差から、圧排効果よりも脳萎縮に代表される脳予備能が急性期転帰を規定する可能性が示唆された。脳萎縮は血腫の進展を許容する一方、術後の脳実質再膨張や機能回復を遅延させる二相性を有すると考えられる。介入時認知症やMMSEの有意差からも、脳萎縮・認知機能低下が術後ADL回復遅延や自宅退院困難の要因となる可能性が考えられた。ROC曲線よりカットオフ値0.129以上と規定し、これを上回る症例は急性期リハのみでは転帰が決着しない可能性が懸念される。早期から社会的背景も加味し、回復期リハを含めた長期的視点での退院支援を検討する必要がある。
