講演情報

[12]THA術後3か月時点の歩行速度改善例における身体機能および歩行パラメータの特徴

*岡 千尋1、小田 翔太1、細田 里南1、東根 風志1、池田 憲周1 (1. 高知大学医学部附属病院 リハビリテーション部)

キーワード:

人工股関節全置換術、歩行速度、歩容

【はじめに,目的】
 人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty:THA)を受ける患者の希望の多くは歩行機能の改善である。歩行能力の向上は日常生活動作や生活の質を左右する重要な目標であるが、術後早期の歩行速度改善には個人差が存在し、その背景となる身体機能および歩容変化との関連については十分に明らかになっていない。本研究の目的は、THA術後3か月時点で歩行速度が臨床的に改善した症例の身体機能および歩行パラメータの特徴を明らかにすることである。
【方法】
 対象は、変形性股関節症に対してTHAを施行し、術後3か月まで追跡調査が可能であった111例111股(65[42-85]歳、女性97例)である。術前および術後3か月で歩行速度を測定し、歩行速度の最小臨床的重要差(MCID:0.1m/s)を参考に改善群と非改善群に分類した。評価項目は、安静時痛、運動時痛、等尺性股関節外転筋力体重比、歩行パラメータとした。歩行パラメータはORPHE CORE MEDICALを用いて、快適歩行を行った際の、歩行周期の変動性、両側ストライド長・足部離地角度とした。得られた各評価項目について術前から術後3か月までの変化量を算出し、2群間で比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】
 ヘルシンキ宣言に基づき、対象者には研究内容を十分に説明し、同意を得て実施した。
【結果】
 術後3か月での歩行速度改善群は66例、非改善群は45例であった。各評価項目(中央値[四分位範囲]、改善/非改善群)の比較では、運動時痛:-49[-65--19]/-30[-57.0 – 0]㎜、患側股関節外転筋力体重比:2.25[0.13 – 6.15]/1.10[-1.80 – 6.80]kgf/kgであり有意差を認めた(P<0.05)。歩行パラメータは、歩行周期の変動性:-1.46[-2.68 – 0.78]/0.19[-5.18 – 2.10]%、ストライド゙長:患側17.30[10.68 – 32.52]/-0.01[-0.09 – 0.03]cm、健側18.20[9.31 – 29.96]/0.25[-7.35 – 6.62]cm、足部離地角度:患側9.86[2.87 – 18.70]/0.95[-3.47 – 4.21]°、健側4.42[-2.53 – 9.20]/1.38[-3.98 – 10.22]°であり、歩行改善群で有意に改善した(P<0.05)。年齢、安静時痛および健側股関節外転筋力体重比では有意差を認めなかった(P>0.05)。
【結論】
 術後3か月の歩行速度の改善量がMCIDを超えていた症例では、運動時痛の減少、患側股関節外転筋力体重比の改善、歩行周期の変動性の低下、ストライド長・足部離地角度の拡大を認めた。術後早期の歩行速度改善には、疼痛軽減や股関節外転筋機能の回復に加え、歩行の安定性向上や推進力を反映する歩容変化が関与していることが示唆された。