講演情報

[65]腰椎固定術後における自律神経バランス変化と動脈スティフネスとの関連

*田村 靖明1、三浦 哉2、出口 憲市3、橋本 祐司1、島田 祐希1、千川 隆志4 (1. 徳島県鳴門病院リハビリテーション技術科、2. 徳島大学大学院社会産業理工学研究部、3. 徳島県鳴門病院医療技術局、4. 徳島県鳴門病院整形外科脊椎脊髄センター)

キーワード:

自律神経、心拍変動、動脈スティフネス

【はじめに,目的】腰椎変性疾患は慢性疼痛,身体活動量低下に伴い動脈スティフネスの亢進が認められることがある.一方,腰椎固定術による動脈スティフネス改善には交感神経活動の緩和が関与すると報告されているが,自律神経機能がどのように関与するかは明らかにされていない.この機序が明らかになれば,腰椎固定術に対する周術期理学療法において身体機能のみならず循環機能にも着目した介入の必要性を示すことができる可能性がある.そこで本研究は、心拍変動 (HRV) 解析で得られた指標から主成分分析 (PCA) を用いて抽出した自律神経機能因子と動脈スティフネスの変化量 (Δ) との関連を検討した.【方法】腰椎変性疾患に対し腰椎固定術を施行した患者を対象とし,HRV解析は術前,術後1週および術後3週以降に取得した16例75時点のデータを用いて実施した.HRV指標としてRR間隔標準偏差(SDNN),隣接RR間隔差二乗平均平方根(RMSSD),低周波成分の自然対数変換値(lnLF),高周波成分の自然対数変換値(lnHF),LF/HF比の自然対数変換値(lnLF/HF),総パワーの自然対数変換値(lnTP)を測定しPCAを行った.動脈スティフネス指標は,上腕足首間脈波伝播速度 (baPWV),収縮期血圧/拡張期血圧 (SBP/DBP) および心拍数 (HR) を測定した.術前-術後1週および術前-術後3週以降のΔを算出し,各指標間の関連をSpearman順位相関係数にて検討した.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,徳島県鳴門病院倫理審査委員会の承認を得て実施した (受付番号1324).対象者には研究の趣旨および方法について説明し,書面による同意を取得した.【結果】主成分分析により2因子が抽出され,累積寄与率は91.6%であった.第1主成分 (PC1) はSDNN,RMSSD,lnLF,lnHFおよびlnTPの負荷量が高く,第2主成分 (PC2) はlnLF/HFの負荷量が高かった.術前-術後3週以降において,ΔPC2はΔbaPWV (rs = 0.72,p=0.02)およびΔSBP (rs=0.66,p=0.04) と有意な正の相関を認めた.一方,ΔPC1および術前-術後1週におけるΔPC2は,動脈スティフネス指標との有意な関連を認めなかった.【考察】PC1は総合自律神経活動量,PC2は交感・副交感神経バランスを反映する因子として解釈した.術前-術後3週以降でΔPC2とΔSBPおよびΔbaPWVとの関連を認めたことから,交感・副交感神経バランスの変化が術後の動脈スティフネス変化に関与する可能性が示唆された.術後急性期には手術侵襲や炎症反応などの影響が大きく,自律神経機能と動脈スティフネスとの関連が反映されにくかった可能性がある一方,回復期には状態の安定化に伴い両者の関連が顕在化したと考えられた.